現世
深い眠りから徐々に目が覚める。
何やらざわつく声。
「よかった」
よかった?何の事だろ。
そういえば眠りにつく前は
「今夜がヤマだ」
そんな言葉が何となく記憶にある。
次第に息苦しく、全身が痛くなる。
「はあ・・・」
半目開きの視界に形あるものが現れる。
頭は重く熱っぽい。
少しづつ記憶が蘇る。
段々状況が分かってきた。
突然倒れ、病院で意識が無くなった。
そこからは真っ暗になったままだった。
同じ場所で目が覚めたということは・・・。
段々音も聞こえてきた。
俺は死にかけたのか・・・。
魂が回復し、身体の神経が繋がる。
鼻には酸素マスク。
麻酔が切れてきたのか、あちこち痛みがある。
恐らく手術を施したのだろう。
記憶は戻るが身体は動かせない。
もうひと眠りするか。
今度は現実に近い明るい夢だ。
一か月後
多少痛みは残るが俺は退院した。
少しずつ元の生活に戻っていった。
「瀕死の状態からよく戻ったな」
退院時、医師からそう言われた。
生きたい意志が強く働いたのか。
そこまで強い思いにさせたのは・・・。
いや、暗闇のことは忘れよう。
もし、あこそに居たのなら鬼に感謝だが、二度と行きたい場所ではない。




