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山賊決戦編

 ▲ ▲ ▲


騎士「いやまさか実際にあってもらえるとは思いませんでした……『ムチムチバンデッド』さん……」 


山賊「いえいえ予定が空いていたもので、こちらこそわざわざ指定した店に来てもらいありがとうございます『カニカ☆マスター』さん」


騎士「……お互い酷いネームですねぇ」


山賊「オフで呼び合うのは想定してなかったものですからねぇ……」


山賊「この埼玉県東松山の名物のやきとりがなかなかイケるんですよ。基本は豚なのにやきとりと言ってるんですがね」


 △ △ △


女騎士「く、こんな屈辱を味あわせるとは!?」


女騎士「おのれぇ、このような恥辱に会うくらいなら、殺せ!」


女騎士「誇りのために、私は負けない!」


女騎士「……」


女騎士「あー、山賊出かけてるからヒマだなぁ……ソシャゲでもして時間潰すかぁ……」


 △ △ △


女騎士「おのれ……この私をどうするつもりだ!」 


 薄暗い部屋の中で、鎧の女は叫ぶ。流れるような金髪、色素の薄い肌。平素ならば凛々しさと勇敢に満ち溢れたその表情には、今は恐怖と動揺が浮かぶ。

 彼女は今、拘束されていた。自由を奪われ、目の前の男に生殺与奪を握られている。


女騎士「答えろ!」


山賊「くっくっく、元気なお嬢さんだな……これは躾がいがありそうだ……」


 彼女の自由を奪った男は、黒々とした髭を生やしていた。樽のような体型。目には残虐と嘲笑がある。


女騎士「どのような理不尽に会おうとも、私は屈さない!」


 誇り高き女騎士の、孤独な戦いは


 今日で、終わる。


 ▲ ▲ ▲


山賊「色々を手を尽くしても再生数が伸びない……? いやぁ自分もそういうのはあまり気にしてなくて……」


騎士「ムチムチバンデッドさんの動画すごい有名じゃないですか……あれ企画がシンプルに良いのと、やっぱり女騎士をすごい可愛く撮れてるからあんなに人気あるんだと思うんですよ」


山賊「はは、まあ素材が良かったんですよ。カニカ☆マスターさんの動画もなかなか迫力あったじゃないですか。あの体操服の人はあんな大爆発で怪我とかしなかったんですか?」


騎士「あれは問題ありません。なにもありません。」


山賊「いや女性なんだから丁寧に接さないと……」


騎士「大丈夫です。あれは殺しても死にません」


山賊「なんだか目が据わってませんか……?」


騎士「ええっと、そうだ、女騎士なんて珍しい人材、一体どこで知り合ったんですか? あんなのなかなかいないでしょ」


山賊「たまたま、ですかね。落ちてたんですよ」


騎士「へぇ、そういうもんですかねぇ。でもほんと彼女の良さをうまく見せてる。一体どうやってあんな風に表情を引き出してるんですか?」


山賊「時間、ですかね。後はコミュニケーションをよく取ることです」


騎士(この男……ビンゴだな)


騎士「彼女は今どうしてるんですか? 彼女に会ってみたいなあ」


山賊「彼女は今ちょっと遠い所にいるみたいで、会えませんよ」


騎士(監禁しといて良く言うぜ……)


 △ △ △


騎士団長「大盛り味噌ラーメンと餃子! あとニラレバね!」


騎士団長「さぁーて仕事前に腹ごしらえー」


騎士団長「ミソミソミーソ~」


騎士団長「……あー、彼氏欲しい」


騎士「あとカニ食べたい……」


 ▲ ▲ ▲


騎士「どうです、もう一軒行きませんか?」


山賊「いえちょっと家で待たせてる相手がいるもので……ではこの辺で」


騎士「そうですか、それじゃあまたどこかで呑みましょう、それじゃ」



騎士「団長、こいつは当たりですね。ムチムチバンデッドの特徴と聞き込みした撮影者の特徴は一致してます。ええ、ヒゲのタル体系、サングラスの中年です。車も秩父方面へ行きました。追跡しましょう」


団長「あ、生中一つ! あとカニ玉も!」


騎士「尾行するっていってんだろこの無能」




山賊「さて、そろそろ終わりということかな……」


 △ △ △


女騎士「な、なんだそれは…太くて……長い……こんなの、初めて……!」


山賊「くっくっく、おやおや見たのは初めてかな……? 京都産松茸だ……これだけの大物はそうそう出回らないぞ……焼いても土瓶蒸しでも最高だ……

だが、こいつを味わえる時間はもうない」 


女騎士「え、どういう」


山賊「終わりだよ。今まで俺の勝手に突き合わせて悪かったな。ありがとう、もう家にお帰り」


女騎士「え……もう寿司とか焼き肉とか食えないの?」


山賊「だめです」


女騎士「ええ……」


山賊「ところでこの壁に開いた穴なんだけどね」


女騎士「なにこれ?」


山賊「ダストシュート兼脱出用の緊急避難路だよ」ドン


女騎士「あああああああ!!」ゴロゴロゴロ


山賊「外に出るようになっている。さて、では本命のゲストを待つか……」


 △ △ △


騎士「うー、この季節は車内でも冷えるな……団長の予測通り秩父山中にアジト作ってやがったかあのヒゲダルマ……!」


騎士「あの男とは連絡が取れない……尾行に気づいたか、アジトに立てこもるとは防御に自信があるのか……?」


騎士「だがな、お前が何を企んでようと」


騎士「お前の所にあのカニカマ女が言ってる時点で、すでにお前の負けなんだよ、ヒゲダルマ」


 ▲ ▲ ▲


騎士団長「てぇえええりゃああああっっ!!」ガッキイイイイイイン


 △ △ △


女騎士「うぅ、足痛い……山道キツい……」


騎士「あ、あのブタ! 生きてやがったのか!?」


女騎士「え、あなたは……誰?」


騎士「同僚の顔忘れてんじゃねぇよ!」


 ▲ ▲ ▲


山賊「鉄筋のフレーム、積層コンクリートの防壁……一応は戦車が突撃してきても耐えられるようにアジトは設計しているんだがな……」


騎士団長「どーも! カニ食べに来ました! あとしゃぶしゃぶも食わせろ! ついでに部下も返せえ!」バキバキ


山賊「剣一本で全て破壊して侵入してくるとはな……!!」


 ▲ ▲ ▲


女騎士「団長が突入してる!? 殺されるわよ!」


騎士「だよなあ。団長のあだ名は『埼玉の核弾頭』『対群馬防衛兵器』『残念な呂布』『彩の国の破壊神』、団長がいなけりゃ今頃は我が埼玉の三分の二が群馬の侵攻でサファリパークになってた」


女騎士「助けないと……」


騎士「助ける? どっちをだよ? 俺が喧嘩弱いのはお前も知ってるだろ? 割って入れるわけねーだろ。そもそもお前誘拐されてたんだぞ、なんであのヒゲダルマの肩なんぞ持ってんだよ。カニやら肉食わされて傾いたのか?」


女騎士「そうじゃない、あのね、彼は……私を最初に捕まえた時、『間違えた』って、言ってたのよ」


騎士「……間違えた?」

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