あしあと-8月21日(7ページ目)
私は食べ物がなくなったのに気づき、スーパーへと出かけた。
スーパーの中はクーラーがきいていて寒いぐらいだった。
私は野菜を適当にカゴにいれ、次におにぎりコーナーへ行った。
おにぎりをカゴにいれていると、横から声をかけられた。
「南風さんじゃないか」
振り向くと、飯田がいた。
「俺は買い物頼まれてね。仕方なく来たんだよ」
仕方なく、を強調しながら言って、おにぎりを一つ手に取って言った。
「俺はやっぱ明太子味のおにぎりがいいな。そういや、おにぎりの中に卵焼きを入れるというのも聞いたことがある」
卵焼きを入れるのか……。
大きなおにぎりになりそうだ。
「おにぎりってさ、海苔が巻いていない物以外はだいたい三角形だろ?あれってな、同じ量のご飯で丸く作るより三角形のほうが大きく見えるらしい。後、海苔が巻きやすく、握りやすいってのもあるらしいな」
飯田が無駄な豆知識を教えてくれた。
いや、無駄とは言ってはいけないのだろうが、生きていて役に立ちそうではない知識だ。
おにぎりコーナーを後にし、適当に歩いているとカップラーメンが並んでいるところにきた。
久しぶりに麺類でも食べようと思い、カップラーメンに手を伸ばした。
ついでにきつねうどんも。
「油揚げといえば、キツネの好物とされてるんだよな」
きつねうどんを見ながら飯田が言い始めた。
というか、この人はなぜついてきているのだろうか。
自分の買い物は終わったのだろうか?
どうでもいい疑問が頭をよぎる。
「農耕上有益な動物で頭のよさそうなキツネを信仰し、お供え物をしていた時、お供え物の油揚げに口をつけたためキツネは油揚げが好きなんだ な、と思い込むようになったという説があるみたいだな」
そうなのか……。
実際にキツネに油揚げあげると死んでしまいそうだな。
人間の思い込みってあほみたいだ。
「変な顔するなよ」
飯田にそう言われて、表情に出ているのに気付いた。
「なにを考えてたんだ?」
私はあほみたいなことを考えていたなんて言えるわけでもなく、ただ首を横振った。
「あー、そういえば」
飯田が小さな声でそう言った。
「どこかの薬を研究してる施設がつぶれたんだってな。その施設、危ない薬を作っていたらしくてな、それが見つかった。研究長が逃走したらしくてまだ捕まってないらしい」
私はあまり関係なさそうな内容だったので、食材をカゴに入れながら頷いた。