あしあと-8月16日(4ページ目)
朝起きると、立ち上がれない程の激痛が足を走った。
眩暈と吐き気が伴い、頭の中が真っ白になる。
なんとか立ち上がろうとするけど痛すぎて力が入らない。
私は腕に力を入れ、キッチンまで這いずっていこうとした。
だが、上手くいかない。
痛みがお尻を通って腰まで来ている。
これはだいぶやばい。
なにかしらの食べ物と薬と水を枕元に置いておいたほうがいいと、今更ながら後悔した。
胸の辺りまで痛みが来ている頃にはなんとか冷蔵庫まで辿り着き、おにぎりを頬張った。
梅干しの酸っぱさが口の中に広がる。
おにぎりを食べ終わるとすぐさま、水を飲まずに薬を飲んだ。
後からちゃんとお茶も飲み、冷蔵庫の前で寝転がった。
悪い空気を出すように息を吐いた。
今のは危なかった。もう少しで動けなくなるところだった。
私は、一人がここまで恐ろしいことを初めて体験した。
野杉の存在は必要だ。
昨日の帰り、野杉は自分の携帯電話の番号をメモ用紙に書いて帰ってくれた。
何かあったら電話してくれたらできる限り駆けつける、と。
野杉の優しさに涙が出そうになった。
だが、こういう場合はもはや電話をする余裕がないのだ。
今更、恐怖が込み上げてきた。
やはりまだ死にたくないのだろうか。
私は死を怖がっていた。
身体が動けるようになると、私は冷蔵庫の中から食べ物と飲み物を取り出すと、薬を持って布団へ向かった。
この日、それからは布団から出ることはなかった。