あしあと-8月23日(9ページ目)
野杉が私の家に来ていた。
「電話がかかってきたのね?昨日。」
私は昨日のことを話していた。
もっとも、私は話せないので書いているのだが。
なぜか野杉は冷や汗をかいているように見えた。
「えーっと、それは女の人だった?」
なぜ女の人なのだろ?
私は首を横に振る。
「そう、男の人なのね。」
なぜか安堵したように見えた。
見えただけなのだろう。
私は男が言ったことを紙に書いた。
「うーん、これだけじゃ全然誰か分からないね。」
頷きながら夢を思い出した。
しかし、夢のことは話さなかった。
「あんまり気にしないほうがいいよ。でも、これは間違い電話ではないなぁ。」
私は正体のわからない男が怖かった。
しばらく沈黙が続いた後、野杉は明るい声でこういった。
「ねぇ、明後日いいところへ連れて行ってあげるわ。」
私は唐突なことに首を傾げた。
「いいところよ。私が好きなところなの。ちょっと電車使うけど。」
どこなのだろう?
「そうだ、楓ちゃんは服そんなないでしょ?明日買いに行こうよ。お金あるの?」
私は困惑しながら頷いた。
しばらく野杉と明日と明後日のことを話し、野杉は帰って行った。
少し行ったところまで見送りし、家へ向かうときのことだった。
後ろから足音が聞こえた。
私は振り返ったが、何もいなかった。
あんな夢を見たからだろうか。
前を向いて歩くと、また足音が聞こえた。
振り替えっても誰もいない。
私はいつの間にか走り出していた。




