癒しの時間
火曜日、二十一時二十五分。リビングのテーブルにホットミルクが入ったカップを置いた瀬輝は、鼻歌を歌いながらソファーに座った。その周りを、いつもの如く五匹の愛猫が囲む。
「今日はどんな猫の話かな〜」
ウキウキとした声音で、膝の上に乗るアメを撫でる。
この後、二十一時三十分からは『ねこトラベル』という番組が始まる。今年から放送が開始された三十分番組で、様々な猫の日常を追ったドキュメンタリーだ。それを愛猫たちと一緒に毎週観るのが瀬輝の楽しみとなっている。
時間になると、穏やかな音楽とともに放送が始まった。今日は、銭湯の看板猫の日常の話だ。瀬輝は画面に釘付けになる。
その周りにいる五匹も、番組を観ていた。
「今日もよかったぁ〜」
瀬輝は表情を緩めて愛猫たちを撫でる。テレビで猫を愛で、そばにいる愛猫たちも愛でる。それが癒しの時間だった。
使ったマグカップを洗い、自分の部屋へ行く。当然、アメやユーたち全員もついてきた。
部屋に置いてある扇風機のスイッチを入れ、蒸し暑い室内の温度を下げる。
その風に少し当たりつつ、瀬輝はベッドにうつ伏せに寝転がった。そのまま携帯電話でゲームを始める。すると、顔と携帯電話の間にアメが入り込み、腕の上に寝そべった。
だが、瀬輝は気にせずゲームを続ける。その背中の上にラック、ミカヅキ、フローズが順番に乗った。次々と重さが加わってくる。
「みんな、重い……」
苦笑いで訴えるが、四匹は微動だにしない。
その様子を、ニヤリと笑みを見せるユーが少し離れた場所でじっと見ていた。
「……やめればいいんだろー……」
瀬輝が携帯電話から手を離すと、それぞれ「ニャー」と鳴いた。目の前にいるアメを優しく撫でる。すぐにゴロゴロと喉を鳴らす音が聞こえた。
動物番組、特に猫が出ている番組を観た後は必ずこうなるのだ。瀬輝にべったりとくっつき、離れることがない。故に、この時期には少し困ることもある。
「まあ、そこが可愛いんだけど」
瀬輝は猫たちの愛らしい行動にデレデレする。ゆっくりと体を起こすと、背中に乗っていた三匹がベッドの上に移った。その子らを順に撫でていく。
(ああ、最高の癒しの時間だ)
和みながらユーの姿を探す。ユーはいつの間にか隣にいて、毛繕いをしていた。
「何か、ユーらしいな」
そっと声を掛けるが、彼はお構いなしだ。
しばらく愛猫たちと戯れ、そろそろ寝ようと瀬輝はベッドに仰向けになった。枕元に置いていたリモコンで部屋の照明を消す。
それが合図かのように、アメとミカヅキが首元に、フローズとラックが横腹辺りにくっついて寝転がり、瀬輝を囲んだ。そしてユーが、瀬輝の胸の上で香箱座りをする。
愛猫たちに囲まれて癒されはするが、五匹の体温が直に伝わり、少しばかり眉間に皺が寄る。
「……暑い……」
これが、今の時期だけの困りごとだ。扇風機を稼働させているとは言え、暑い中、猫たちにくっつかれたまま寝るのは少々辛い。冬であれば大歓迎なのだが。
それでも瀬輝は微動だにせず、目を閉じる。どんなに暑くても、彼らたちと一緒に寝るのも好きだからだ。
「おやすみ」
「ニャー」




