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ストックホルムシンドロームに愛の手を

作者: ほるまりん

どうもッ…ほるまりんです。

偶然ストックホルム症候群と言うのを見かけてなんだろうと思って調べてるうちに面白くなって書いちゃいました。

語彙少なすぎだろ私…

ストックホルム

『犯人につぐ。速やかに人質を開放して降伏しなさい。』

「ハァ…ハァ…ハァ…クソッ…」

薄暗い空。恐らく今が18時付近を刺そうとしているのだろう。

若干の肌寒さが秋中頃を彷彿とさせる。

カーテンが締め切って居て外からは中の様子を伺うのは困難を有する。

これは外界からの第三者視点だが、では気になる室内を視てみよう。

狭い室内。埃っぽい。

深呼吸などすれば咽返りそうな程だ。

長い間人が使った様子がない。

取り壊し予定だった雑居ビルだ。

Keepoutの黄色テープが入り口にグルグルと巻かれているが、ここには人が居る。

3名。

目つきの悪いボサボサ頭に赤色キャップ。窓際に身を低くして外の様子を伺う20〜30歳だろうか、の、男性。

付近に、ガクガクと震えて女の子を抱き締めている女性。

女の子は女性の娘だろうか、定期的に「おかあーさーん」と言っている。

母親が震えている原因は、男性が突き付けているハンドガンである。

実は男性の手も震えているが、自分自身が震えている為その事に気付かない。

「あ、あの…」

母親が男性に話しかけるが聞こえていない様子だ。

カーテンの隙間から顔を覗かせる事に必死なのだ。

「ねぇってば!」

「わぁ!?ばっかうっちまったらどうすんだてめぇ!!」

「ッ!?ごめんなさいごめんなさい」

銃を突き付けているのに撃ったらどうするんだと銃をぶんぶん振り回しながら男は言う。

それに対し震えながら謝る母親。

「静かにしててくれよ…俺は、別にあんたたち親子を巻き込む気は毛頭無かったんだよ…」

「ね、ねぇ君…こう言う事は辞めない?私、君がこんなことする人に見えないなーって...」

「駄目だ…出てったら。殺される…殺されたら妹達は誰が面倒見るんだよ…」

「君…」

暫くの沈黙…

そして

男性の腹の虫がなく音…

「わりぃ…ずっと何も食ってなくてな…腹減り過ぎてどうかなっちまったんだ俺…強盗も人質もとるつもりも無かったのに…あいつ等も腹空かしてるよなぁ」

「はいッおにいちゃん」

娘は何かをポシェットから取り出す。

割れたビスケットだ

「え、これ…」

「おなかすいてるんでしょ?どうぞッ」

「いや…アンタたちだって腹減って…」

今度は3人のお腹がなる

母親は顔を真っ赤にして腹部を押さえる。それは娘も一緒だった

「うう…お母さんにもはいッ」

娘はビスケットを割って母親に渡す。母親はこんな状況だと言うのに笑いが込み上げてきた。

「ふふっ…ナタリーはいい娘ね。じゃあどうかしら3人で分けません?」

母親はもらったビスケットを更に分けて、男性に渡した。

「すんません…」

「お礼は娘に」

「お嬢ちゃんありがとな…」

「いいってことよ!」

ナタリーは自分の父親の真似だろうか胸を張っている。

男性はその仕草に微笑みをもって応え…遠慮なしにビスケットを頬張り噛みしめる。大事に大事に噛みしめる…

「うめぇ…!」

「そんなに美味しそうにビスケットを食べる人初めて見たわ」

母親もビスケットを頬張る。あら、美味しい…と自然に呟いた。

ナタリーも口に運ぶ。

「うん。やっぱりおなかへってるときはこれにかぎるな!」

「お父さんの真似かい?お嬢ちゃん」

「うん!けどお父さんきょねんしんじゃったんだ。」

「えっ…?…ごめん」

「いいの!お父さんは、わたしのここにいるからッ!」

と、胸部分を自分でこんこんと叩く

「ナタリーちゃんは強いわね。」

母親の顔は少しだけ哀愁を帯びているように見えた。部屋の暗がりのせいだろうか…

男は突然

「あんたたちを開放するよ。」

と、すくっと立ち上がる。

「えっ?」

驚愕の声を上げたのは母親だ。

それに対し

「ナタリーちゃんありがとな。お陰でお腹膨れてお兄ちゃん元に戻れそうだ」

「なんかよくわかんないけどきにすんな」

娘はまた胸を張って威張る

母親も立ち上がり

「自首するんですか…貴方はやっぱり悪い人じゃない。強盗も、人質もとったけど、それは空腹で我を忘れていただけで…私、証言しますから。貴方が悪い人じゃないって…」

母親が言い終る事は無かった。

心臓部分から血液が溢れ出、背中から倒れた。

「お母さん?お母さん…」

何が起きたのか分からないのだろう、しかし少女は本能的に察したのだ。自分の母親が助からないという事に。涙を溢れさせながらしがみついている。

男性は反射的にナタリーを庇う。

何かが男性の腕を掠める。銃弾だ。

(嘘だろ…人質もお構い無しかよ…!!この人は…この血の量じゃ…この娘が巻き込まれるのだけは…!)

「ナタリー!逃げるぞ!」

「えっ、やだ…お母さん…!!おかあs」

男性は銃の柄でナタリーの首を軽く叩く。

力なく膝から崩れ落ちたところを肩に抱えて走る。

それが間違えた回答であっても走る。

逃げる…どこまでも。


      ◆


『…当時2歳だったナタリーちゃんを誘拐した犯人と思しき死体が、等雑居ビルから発見されました。死体は銃で撃たれた形跡があり付近に凶器が無い為、殺人事件で捜査を行っており、現在7歳になるナタリーちゃんの行方は未だに分かって居ません......次のニュースです。大統領選挙に…‥』

「ナタリー…これってお前のことじゃあ…えっ、あの時側に居たのはお母さんじゃなくって…撃ったのも警察じゃあ…」

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