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ぼろろんぼろろん  作者: くぼとーる
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プロローグ

 あんのぼろろン島にはな、行っちゃいけんかんねぇ。

いいねぇ、肝試しだぁなんて言って若いのがふざけて行っちゃりするけど

お前は、ぜってぇ行っちゃぁいけんかんね、かあちゃんと約束しれよ。

約束きったら、かあちゃん、ちゃぁんとわかるんけんねぇ。

いいねぇ、ヨシくんは、ぜってぇ行かんと約束できんね?


 幼い頃、病床の母親が枕元に座る俺の手を撫でながら、

何度も繰り返して同じ話を俺に言って聞かせた。

それを、島を見るたびに思い出す。少し冷えた風が顔を撫で始めた。

 瞑っていた目を開けると、さっきまでの青空はすっかり色を失っていた。

寝転がっていた視界の端っこに、いつもと変わらず島があった。


 「いかねぇっての・・・面倒臭ぇ」空の上の母親に返事をするように呟く。

ヨシくん、約束できんね?俺を残して逝こうとしていた母親は、

不安な気持ちをいつものように笑みで消して…そんな事、今更。


 もたげかけた感覚に、首を振って勢いよく起き上がる。

この辺のどっからでも必ず見えるあン島は、ずぅっと昔からそこに在った。

大昔、いつの時代かに山が噴火して出来たらしいっていう先生の話だが、

あれは巨大な鬼神の頭で下に胴体があるっていう、ここらの昔話もある。


 うみのまン中に浮かぶ島は、みなに「ぼろろン島」と呼ばれた。

うっそうと草木が生い茂った昼でも暗い森を被り、あまり人を寄せない。

盆と彼岸の頃になると年寄りが何人かで船で島に渡り、祠にお供えをするが、

あとは、暇な奴らが肝試しに行くだけの、ただのちょっとした無人島だった。


 島へは、行った事が無い。この辺の、大体の奴らも同じだ。

小さい時から親に言い聞かせられて、行ったってスグにバレて叱られるはずだ。

そう、叱られるのも損だから…わざわざ行く事も無い、何も無い無人島には。


 俺は立ち上がって少し背伸びをすると、前のめりになりつつ目を細めた。

夕焼けに黒く浮かび上がった島に、小舟が近付いて行くのが見えた。

・・・こんな時間に?直に夜なのに。何者かが櫓を漕いでいる。男だ。


 人目を避けるかのように静かに進む小舟は、

今一度、しっかり確かめようと目を凝らしている間に

流れるように先へと進み、島影に隠れて直ぐに見えなくなった。


 

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