ちびっ娘革命!
あたしの名前は風野速子。13才。
めちゃくちゃ運動神経がいい。
足も速いしジャンプ力もあるしパワーもある。
ただ身長がひくい。
あだ名はおちびだ。
身長は147センチしかない。
お昼休み。教室の机につっぷしてグチる。
「あ~あ~。もしあたしの身長が160センチあればオリンピックは全種目金メダルだし、どんなスポーツでもエース級の活躍ができるのになぁ」
「根拠はありますの?」
クラスメイトで親友の白鳥美麗が首を傾げる。
こいつは美人で高身長でスポーツ万能で実家が金持ち。
身長以外はあたしとまったく同じだ。
うそです。うちはど貧乏であたしゃ美人でもない。
同じなのはスポーツ万能ってところだけ。
「想像してみてよ。160センチのあたしを。バスケでダンクできるし、バレーでもどんなボレーもブロックできるし、100メートル走だって走り幅飛びだって走り高跳びだって金メダルだよ。背が低いとバスケもバレーも背の高い選手の2倍飛ばないといけない。走る時も足が短いから足が長い選手の2倍走らないといけない。歩幅が短いからね。体が小さいから体力も大きい人の半分しかたくわえられない。バスケもバレーも高身長の子はヘタでも県の選抜に選ばれたりしてずるいんだ。それで嫌気がさして部活辞める子もいる。スポーツ界はちびにきびしい世界だよ。ホント」
美麗にはあたしの熱弁が響いてない。
「ほんまかいな?ですわ」
「ほんまだよ!身長別階級制・体重別階級のような制度があればいいんだ。そしたらあたしがスポーツ界No. 1だって証明できるのに。くやちぃ」
「メッシは背が低くてもサッカーばかうまですわ。背の低いバレー選手がリベロで大活躍しているのを見たことありますし、背の低いバスケ選手が低いドリブルで果敢に敵陣に切り込んでるのもみたことありますわ。だれも止められません」
「サッカーはヘディングの時は圧倒的に不利だよ。バレーはチビだとアタッカーやブロッカーやりたくてもできないじゃん。バスケだってシュート止められやすいし。アンフェアなんだ」
「たしかに背が低いとバレー部でレギュラーを勝ち取りにくいのは確かですわ」
いちおうバレー部に所属してる。
三軍の補欠だ。
リベロも背が低過ぎて手が短いからボールを拾うのに不利でレギュラーは夢のまた夢って感じ。
美麗は一軍のエースアタッカー。
小学生の頃はスポーツのライバルだったのに身長で差がついた。
逆だったかもしれねェ・・・
「放課後、ちょっくらスポーツ庁に行ってくる。部活休むから言っといて」
「ええっ!?」
美麗は目を丸くした。
放課後。
スポーツ庁の受付に到着する。
受付のお姉さんにスポーツ庁長官に会いたいと伝えた。
「申し訳ありませんが、長官に直接会うことはできないんですよ」
「そこをなんとか!」
手を合わせる。
「ムリですよ」
お姉さんは苦笑いだ。
美麗がずいっと前に出る。
「白鳥美麗が来てるとおっしゃってください」
「いちおう言ってみます」
お姉さんは長官に電話する。
「長官がお会いするそうです」
「やたっ!」
あたしたちはエレベーターで3階の長官室に向かう。
「白鳥財閥はスポーツ界に多額の支援をしています。白鳥家の者をむげに扱うことはできないでしょう」
「美麗、ありがとう!」
「どういたしましてですわ」
美麗は部活を休んでいっしょについてきてくれた。
小学生時代のライバルが落ちぶれていくのを見ていられなかったんだと思う。
やさちい。
「失礼します!」
長官室に入ると長官が立って迎えてくれた。
ソファーで向き合う。
長官に階級制の件を直談判した。
話を聞き終えた長官はあごに手をのせる。
「なるほどぉ。背が低い選手に不利だからスポーツは階級制を取り入れるべきだと?」
「そうです!ちびっ子にやさしい社会にしましょう!」
美麗も援護射撃してくれた。
「ボクシングやアマチュア相撲は階級制があります。ほかのスポーツにも取り入れてはいかがでしょうか?」
長官は頭をかく。
「そうしてあげたいのはやまやまなんですがね、なにしろお金がない」
にへらっと笑って指を丸める。
「えっ?お金の問題なの?」
「お金の問題です。階級制を取り入れるとプロスポーツ選手が爆発的に増える。そうなると競技場やスタジアムも増やさないといけない。オリンピックでは一つの競技が終わるのにとても時間がかかる。そうなると運営費が莫大になる。スポーツ庁にはそんな予算とてもありません」
「総理大臣に言えばなんとかしてくれるかな?」
「財政難ですからムリでしょうね。赤字運営になるのは目に見えてますし」
「小さい選手の活躍を観たい!って人も多いと思う。赤字運営って決めつけるのはどうなのよ?」
「いやいやみんな大きな選手が競うのを観たいんですよ。相撲も巨漢力士が人気ある。なにしろ迫力がちがう。ボクシングもヘビー級が1番お金を産む。小さい階級の選手のために会場を用意したり競技時間を伸ばすメリットがまったくない」
美麗にお願いする。
「白鳥財閥がスポンサーになってくんない?ちびっ娘スター選手が活躍して人気者になれば儲かるかも!」
「支援してあげたいのはやまやまですが白鳥財閥も安定して黒字になる計画じゃないと乗れませんわ。赤字垂れ流しの不安がある以上、だれも投資してくれないでしょうね」
「きびちぃ!」
あたしは頭を抱えた。
直談判は無惨な結果に終わる。
夕焼けを背負いとぼとぼ歩く。
小学生の頃はスポーツで無双してた。
神道だって言われて大人たちにもてはやされた。
中学生になり背が伸びずスポーツで勝てなくなった。
バスケでは頭の上をパスが通過する。シュートも止められてしまう。
バレーはブロックに飛んでもネットを手が超えない。
サッカーはセンターリングで最高のジャンプを決めても競り負ける。
階級制実現は不可能だしあたしのスポ根人生オワター
美麗は落ち込んでるあたしに提案する。
「背が小さい子は男の子にモテるでしょ?おちびちゃんは顔がかわいいしトップアイドルでも目指したらいかが?ダンスもお得意でしょ?勝てる世界で勝負したほうがよろしくってよ?」
「たしかにね。今日はマジでありがとう。美麗愛してる」
「わたくしも愛してますわ」
Y字路で美麗と別れる。
家に帰って夕飯を食べて早めにベッドに入る。
嫌なことがあった時は寝るに限る。
夢の世界へゴー!
それからすぐあたしはアイドルになった。
美麗が勧めてくれたようにトップアイドルを目指すことにする。
バレー部はとうぜん辞めたよ。
ベンチ入りさえできないんじゃ意味ないし。
貴重な3年間を無駄にしたくない。
地下アイドルしてたら人気が沸騰して大手アイドル事務所から声をかけられてあっという間にトップアイドルになってしまう。
小さいのにキレッキレッのダンスで動くから目立つしがんばってる感が出たのがよかったみたい。
ちびすけでダンスがうまいってだけでこんなに簡単に成功できるなんて人生ってちょろい。
スポーツ界であんなに苦労したのがウソのような栄光の日々だ
あたしはソロアイドルになり必要な時は事務所がバックダンサーを用意してる。
3年後。
馬車馬のように働いて認知度は高まったしお金もいっぱい貯まった。
準備していた企画を始動させる。
事務所に企画を提案して自腹を切る!って宣言したら通った。
すぐに記者会見する。
「あたしをリーダーとした新しいアイドルグループを作ります。背が低くて運動が得意な子を大募集。枠は9名です」
オーディションにはたくさんの参加者が集まった。
ルックスも加味して合格者を決める。
個性的なかわいいちびっ娘が集まった。
合宿でダンスと歌を徹底的に仕込む。
無料ネット配信サービスで5対5に別れてさまざまなスポーツにチャレンジする新番組を立ち上げる。
番組名は「ちびっ娘革命!」だ。
スポンサーは白鳥財閥1社提供である。
美麗はずっとあたしを推してくれてる。
両親も説得してくれたみたい。
いい親友をもったもんだ。
運動神経がめっちゃいいちびっ娘たちがバスケやバレー、サッカーをする姿は可愛くて迫力があるのでしょっぱなからすごい再生回数叩き出した。
最後は歌とダンスで締める。
コートは身長に合わせて狭くした。ネットやリングの高さも低くする。
身長別階級制の導入だ。
これでアタックをブロックできるしダンクもできる。
ちびっ娘たちで陸上競技もチャレンジしたし、難易度が高いアスレチックにも挑戦した。
難易度が高いアスレチックをクリアする番組は地上波でもあるけど身長に合わせて低くしてくれてないのでちびは不利だった。うちの番組はちびに合わせてる。
クライミングもちびに合わせたサイズだ。手足が届かないといったアンフェアなことは起こらない。
陸上競技や水泳にもみんなで挑戦した。
この番組で無双したのはあたしだ。
身長別階級制なら全種目オリンピックで金メダルだし、あらゆるスポーツでエース級の活躍ができるって言ったでしょ?
それが事実だと証明できた。
世界レベルで運動神経がいいちびっ娘たちがあたしに手も足も出ない。
紅白戦ではいつもあたしが入ったチームが勝つ。
外国語でも観られるようにしたから再生回数はギネス級になった。
ちびっ娘が運動するする姿は需要があることが証明される。
グッズも写真集もバカ売れだ。
ウハウハが止まらない。
左うちわだね。
資金が潤沢になったのでフェアな戦いができるスポーツゲームソフトを開発した。
有名スポーツ選手の運動データを入力すると架空の選手が作れる。
もちろん自分の運動データでもいい。
身長体重は自由に設定できる。
作った選手はあらゆるスポーツやオリンピック競技に参加できる。
それを観て応援して楽しむのだ。
パウンド・フォー・パウンドをやりたかった。
パウンド・フォー・パウンド(PFP)とは、ボクシングなどの格闘技で「もし全選手の体重が同じだったら、誰が一番強いか」を階級を超えて評価する仮想的な指標ね。
ここでいうパウンド・フォー・パウンドは「もし全選手の身長が同じだったら、誰が1番優れているか」を階級を超えて評価する仮想的な指標だよ。
ちびっ娘たちの中で世界1でも背の高いスポーツ選手はあたしが世界1だって納得しないはず。
そこで世界トップのスポーツ選手たちの運動データを入力して身長をみんな同じにした架空選手を作り、仮想現実世界で競わせた。
その結果、どのスポーツでも競技でもぶっちぎりであたしが1番だ。
ほらね♩
身長が同じならあたしは世界のだれにも負けない!
それも証明できた。
身長別階級制でも世界1はあたしだし、パウンド・フォー・パウンドでもあたしが世界1ッ!
だれの目にもあきらかな結果になったので、その事実は公式に認められた。
いまあたしは世界中の人からスーパーガールとして称賛されている。
あきらめず行動した結果、名誉と栄光が手に入った。
つねにサポートしてくれた美麗には感謝してもしきれない。
背の低い選手の活躍も観たい!という需要があることが証明されたので身長別階級制のオリンピック競技も導入され始めたし、背の低い選手がたくさんプロスポーツ選手になりスタジアムも建設され始めた。白鳥財閥をはじめ世界中の資産家や各国の政府は安定した黒字化が見込めるので投資してくれてる。
ちびでもあきらめずに常識の壁と戦ってよかった!
ちびに生まれたのも神様からの試練だったのかも。
スポーツ界に革命を起こしてフェアに競える世界にしなさいっていうね。
みんなもアンフェアなルールにはあらがおうね!
ではまた夢でお会いましょう♩さらば!
小さい選手には不利だなって思うスポーツや競技はいっぱいありますよね。
フェアな条件で競いたいと思う選手も多いんじゃないか?と思って書きました。
最近、みんなの平均身長が伸びはじめているので筆者もちびに分類される日が刻一刻と近づいています。背が高い人に囲まれると世間の女性はいつもこんな怖い思いをしていたのかと思ったり。
高畑充希さんが私たち小人族は背が高い男性じゃないとダメなんですと言っていた意味がわかりました。




