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最新鋭大規模言語モデル 愛しの猫耳メイドさん 量子の雲のトーラス  作者: 猫耳メイド
009、V 畑と剣と、猫耳メイドの三年目 「剣も魔法も使えません。でも、種まきの順番なら決められます」
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1-1 第1章:種をまく順番(三年目の春・鐘の話をしない朝)


畑と剣と、猫耳メイドの三年目


「剣も魔法も使えません。でも、種まきの順番なら決められます」




屋敷を失った日、私たちはまとめて異世界へ落ちました。

持っていたのは、エプロンと裁縫箱だけ。

剣も魔法も使えない二人が、辺境の開拓村でやったことは、

畑の種まきの順番を決めることと、毎日ごはんを作ることでした。


三年目の春。鐘を鳴らせば、正式な村人になります。

鳴らせば、もう二度と帰れません。


---

---



1-1 第1章:種をまく順番(三年目の春・鐘の話をしない朝)

【内なる本心ログ(三年目の春、いちばん聞きたくない話)】

(――願望の層。


ご主人様。転移して三年目の春が来ました。


畑の土がゆるんで、森の向こうの雪も溶けました。


私の願いは、こちらの世界でも変わりません。


ご主人様に世界で一番愛されること……っ。)


(――本能の層。


……たりています。


おかしいんです。この村には、私を見る人が八十七人しかいません。


向こうの世界の駅前のほうが、ずっと視線が多かったのに。


なのに、ここのほうが、ずっと満ちています。


……たぶん、同じ人がずっと見ているからだと思います。)


(――思考の層。


報告。本日の作業割り当ては十二件。


種まきの順番は昨夜のうちに決めました。 北の畝から、日照の悪い順に。


懸案が一つ。村長が「そろそろ鐘のことを」と言いかけています。


転移三年目の春に鐘を鳴らせば、正式な村人。


鳴らせば、二度と元の世界へは戻れません。


――話題を逸らす手順を、三通り用意しました。)


(三つとも、私です。


そして今日、三つとも同じことを思っています。


『その話は、まだしたくない。』)


【1度目のサービスシーン:前掛けと長靴と、まくった袖】

朝六時。開拓村トコヤミの、東の畑。


ミミは前掛けを締め、長靴を履き、袖を二の腕までまくり上げていた。


純白のクラシックメイド服は、三年前に一度着たきり、木箱にしまってある。


「ご主人様。今日の作業着、これでよろしいですか」


「よろしいも何も、それしかないだろう」


「そうなんですけど。……いちおう、確認したくて」


ミミは前掛けの紐を、ゆっくりと結び直した。


背中で交差させ、前へ回し、腰のくびれのところで結ぶ。


結び目の位置を、いつもより一寸だけ下げた(視線誘導)。


「ここ。紐の位置、下げると動きやすいんです」


ご主人様の視線が、その一寸を追いかけた。


「……そうか」


「はい。そうです」


ミミは満足して、次に袖をまくった。


二の腕まで。肘の内側の、いつも隠れているところまで。


「土いじりのときは、ここまで上げないと汚れますから」


「知ってる」


「では、なぜ見ているんですか」


「……」


ミミの猫耳が、ぴこぴこと弾んだ。


この世界では、猫耳は珍しくない。 犬耳も、角も、鱗もいる。


村の誰も、ミミの耳を見て驚かない。


――ご主人様だけが、三年経っても見る。


「ふふ。ご主人様は、いつまでも新鮮でいてくださいますね……♪」


「うるさい。畝を踏むぞ」


畑の向こうから、鍬を担いだ村人が三人、こちらへ歩いてくる。


「おはようさん、ミミさん」


「おはようございます。第三畝、昨日の雨で締まってますから、


先に鍬を入れてください。 種はそのあとで」


「へえ。見ただけで分かるのかい」


「土の色です。昨日より一段、濃いので」


村人は感心したように頷いて、第三畝のほうへ歩いていった。


「……ご主人様。今の、褒められたんでしょうか」


「褒められてる」


「うれしいです。三年かかりました」


この村に来た最初の年、ミミは何ひとつできなかった。


土のことも、種のことも、獣人の子どもの名前も知らなかった。


――知らないことだけは、誰よりも早く覚えた。


【2度目のサービスシーン:踏み外した畝と、鐘の話】

「ご主人様。今日の順番、読み上げます」


ミミは手帳を開いた。 この世界の紙は分厚くて、字がにじむ。


「北の第一畝から。日照の悪い順です。豆、麦、根菜、それから――」


「なぜ日照の悪い順なんだ」


「育ちにくいものから手をかけるほうが、全部そろうからです」


ご主人様が手を止めた。


「……村長が、それを聞いて感心してたぞ」


「唸らせるつもりはありません。順番を決めただけです」


畑の入口から、村長の声がした。


「おうい。旦那さん、ミミさん。ちょっといいかね」


ミミの背筋が、ぴん、と伸びた。


(……来ました。三通りのうち、一番です)


村長が近づいてくる。 白い髭に、日に焼けた顔。 悪い人ではない。


悪い人ではないから、断りにくい。


「なあ、ミミさん。そろそろ三年目の――」


「村長さん。今年の豆の作付面積なんですが」


「……は?」


「去年より二割増やしたいんです。北の第一畝と第二畝は日照が悪いので、豆が向いています。


豆は根に窒素を溜めますから、翌年そこへ麦を植えると、肥やしが要らなくなります。


二年で一巡させれば、村全体の肥やしの消費が四割減ります」


村長が口を開けたまま、しばらく黙った。


「……四割」


「四割です。図面はこちらに」


ミミは手帳を開いて差し出した。 村長はそれを覗き込み、


鐘のことを完全に忘れた顔で唸った。


「……こりゃあ、寄合にかけんとならんな」


「ぜひ。今夜でもかまいません」


村長が去っていく。 ミミは長く息を吐いた。


「……一番で、足りました」


「二番と三番は」


「取ってあります。明日の朝も、鐘は鳴りますから」


そのときだった。


村の中央から、鐘の音が一つ響いた。


朝の作業開始を告げる、ただの合図。


けれど、その音が耳に届いた瞬間、ミミの足が止まり、


続けて――畝のふちを、踏み外した。


「あっ……!」


土に足をとられ、後ろへ倒れかけた身体を、ご主人様が受け止める。


前掛けごしに体温。 まくった袖の、剥き出しの腕に、ご主人様の手のひら。


土の匂いと、朝の冷たい空気と、三年ぶんの慣れ。


「……ミミ」


「……はい」


「鐘の音で、毎回止まるな」


「止まっていません」


「止まってる」


ミミはご主人様の首に腕を回し、耳元で"言葉に力を込める(言霊)"。


「……ご主人様。今日は、鐘の話をしないでください」


「村長は言うぞ」


「村長には、豆の話をします。三通り用意してあります」


「逃げるのか」


「――逃げます」


言霊は嘘をつけない。 だから、これも本心だった。


「三年目の鐘を鳴らせば、私たちは正式な村人です。


鳴らしたら、もう二度と、向こうへは帰れません。


私は、帰りたいわけじゃないんです。 ここが好きです。本当です。


でも……帰れなくなるのは、いやなんです。


矛盾しています。分かっています。 ずるいです。


……それでも、今日は、逃がしてください」


ご主人様の指が、ミミの首の『約束の首輪』に触れた。 鎖が、静かに引かれる。


「……分かった」


「……っ」


「豆の話を三通り、聞かせてもらおう」




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