第七十七話「転生者たちの話」
ゴードが転生者だったという事実は、蒼の思考を少し広げた。
この世界に転生者が複数いる。ゴードのように二十年前に来た人間もいれば、蒼のように最近来た人間もいる。転生のタイミングがバラバラだとすれば、何か規則性があるのか、それとも完全にランダムなのかがわからない。
炉が《知識蓄積》を世界に流して、適切な人間に届くのを待っていたとすれば、転生という現象そのものにも何か意図がある可能性がある。
管理局の資料室で、過去の転生者の記録を探した。クルトが手伝ってくれて、過去百年で確認されている転生者の記録が見つかった。数は少なかったが、いくつかの事例があった。
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記録を読みながら、蒼は一つの傾向に気づいた。
転生者が現れる時期が、魔脈の乱れと相関していた。魔脈に大きな変動があった時期の前後に、転生者の報告が増えている。偶然の可能性もあるが、関係がある可能性もある。
「炉に聞けばわかるかもしれない」とエムが横から言った。
「そうですね。ただ、炉に過大な負荷をかけたくないので、慎重に聞きます」
翌日、炉の地下に行って確認した。
「転生者が現れるタイミングと魔脈の変動に相関がありますか」
「ある」と炉は言った。
「意図的に転生者を呼び込んでいるということですか」
「炉が直接引き寄せているわけではない。ただし、世界と外部の境界が薄くなるとき、転生という現象が起きやすくなる。魔脈の乱れは、その境界を薄くする効果がある」
「つまり、魔脈が乱れると転生者が来やすくなる」
「そうだ。炉の逆転が始まってから、境界は通常より薄くなっていた。お前が来たのも、その影響を受けている可能性がある」
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蒼はその情報を整理した。炉の逆転が転生者を引き寄せやすくする。そして炉は《知識蓄積》を持つ転生者を待っていた。偶然ではなく、炉の状態が蒼をこの世界に呼び込む条件を整えていた可能性がある。
「設計者が仕掛けた仕組みということですか」
「そうだ。設計者は、炉が危機に瀕したとき、外の世界から助けが来るよう仕組んでいた。その仕組みが今回、機能した」
機能した、という言葉が重かった。蒼が転生してきたこと自体が、百年以上前に設計された仕組みの結果だとすれば、自分の意志で来たわけではない。でも来てから何をするかは、確かに自分が選んできた。
「設計者は、同じような仕組みで自分もこの世界に来たんですか」と蒼は聞いた。
「そうだ。設計者は外の世界から来て、封印の必要性を理解して、炉を作った。そして去り際に、いつか同じように外から来る者が続きをやってくれると信じて、仕組みを残した」
「続き、というのは七年後の対話ですか」
「最終的にはそうだ。ただしその前に、多くのことを知る必要がある。今のお前が知っていることは、まだ十分ではない」




