第七十五話「二か月の振り返り」
ヴィナから王都への帰り道、蒼は馬を歩かせながら空を見ていた。
転生してから、ちょうど二か月が経っていた。アルガの森で目を覚まして、魔物に殴られて、リーナに助けてもらった。それが始まりだった。
今のステータスを確認した。
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天宮蒼
体力:B− 筋力:D 速度:C
魔力:0(外部操作:初段階)
スキル:《限界突破》《知識蓄積》
冒険者ランク:C
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体力がB−まで上がっていた。転生直後のFから考えれば、大きな変化だった。魔力の欄に「外部操作:初段階」という記述が加わっていたのも確認できた。スキルが増えたわけではないが、既存のスキルの使い方が広がっていた。
「何を見ているんですか」とリーナが横から言った。
「ステータスです。二か月前と比べていました」
「どう変わりました?」
「体力がBに届きました」
「すごいじゃないですか」
「まだまだです。七年で、次の調整に対処できるくらいにならないといけない」
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リーナが少し間を置いてから言った。「蒼さんは、どのくらいを目指しているんですか。Aランクとか、Sランクとか」
「ランクがどこかより、必要なことができるかどうかの方が重要なので」と蒼は答えた。「封じられた存在と対話するためには、炉への接続を深める必要があります。そのためには精神的な強さが必要で、それは《限界突破》の蓄積とも関係している。ランクは結果として上がるものだと思っています」
「地に足がついた考え方ですね」
「転生直後は目の前のことに必死すぎて、ランクとか強さとかを考える余裕がなかったので。今でも、まず目の前の問題を片付ける方を優先してしまいます」
「それでいいと思います」とリーナが言った。「英雄みたいに最強を目指す人もいるけど、必要なことをやり続ける人の方が、長期的には遠くまで行ける気がします」
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エムが前から戻ってきて、二人の話に加わった。
「二か月の振り返りをしているんですか」とエムが言った。
「少し」
「一つ、確認させてください」とエムが言った。「転生してきたとき、《知識蓄積》は最初からあったんですよね」
「そうです。《限界突破》と一緒に最初からありました」
「炉の話では、《知識蓄積》は炉が流していたものだった。ということは、転生のタイミングで炉のスキルが届いた。炉がその時点で、あなたが転生してくることを知っていた可能性があります」
蒼は少し考えた。「知っていたというか、待っていたということですかね。設計者の言葉が炉に残っていて、その設計者が仕掛けた仕組みが転生のタイミングで作動した」
「そうだとすると、設計者はこの世界の外のことを知っていたということになります。外の世界から転生者が来ることを」
「前提として知っていた、ということですか」
「あるいは、設計者自身が外から来た経験を持っていたか」
その言葉が蒼の頭に残った。設計者は外の世界から来た存在だったとヨルダから聞いていた。だとすれば、設計者は自分が来たのと同じ経路で、いつかまた誰かが来ることを知っていたかもしれない。
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【次話予告】
王都に戻った蒼を待っていたのは、意外な来訪者だった。アルガから、ゴードが来ていた。転生したての蒼を道端から連れ帰った、最初の出会いの男だった。
次話「ゴードの来訪」
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