第七十一話「アリアの来訪」
管理局の入口で名前を呼ばれたとき、蒼は一瞬誰だかわからなかった。
振り返ると、茶色い髪の女性が立っていた。見覚えのある顔で、でもこの場所には似合わない人物だという感覚があって、一秒遅れて思い出した。
「アリアさん」と蒼は言った。
「覚えていてくれたんですか」とアリアが言った。ほっとした顔をした。「アルガのギルドの受付をしていたアリアです。覚えてもらえているか心配でした」
「覚えています。転生したばかりの俺にGランクのカードを作ってくれた人ですよ」
アリアが少し笑った。転生してから初めて笑顔で話してくれた人だったと、蒼は思い出していた。
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話を聞くと、アリアは王都のギルド本部への転勤を命じられたという。アルガは小規模なギルドで、彼女の能力が王都本部の方で活かせると判断されたらしかった。先週王都に着いたばかりで、管理局に挨拶に来たという名目だったが、蒼が王都にいると聞いてついでに顔を出したと言った。
「Cランクになったと聞きました」とアリアが言った。
「なりました」
「すごいです。転生してそんなに経っていないのに」
「色々あって鍛えられました」
「色々というのが凄そうですが」
「凄かったかもしれません。自分ではよくわかりません」
アリアが蒼を見た。Gランクのカードを初めて受け取った日の、どこか自信なさげな転生者とは少し違う。でも基本的に変わっていない部分も感じると言った。
「変わっていない部分というのは?」とリーナが横から口を挟んだ。いつの間にか隣に来ていた。
「あ、リーナさんですか」とアリアが驚いた顔をした。「お二人がアルガを一緒に出たと聞きましたが、まだご一緒なんですね」
「まだというか」リーナが言いかけて、なんでもないと言った。
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アリアを夕食に誘った。宿の食堂で四人で食べた。クルトとエムも同席した。
アリアは王都本部での仕事について話してくれた。アルガのギルドとは規模が全然違い、一日に来る依頼の数も冒険者の数も比較にならない。最初は慣れないことだらけだと言ったが、目に活気があった。
「王都にいると、何か情報が入りやすいですか」と蒼は聞いた。
「ギルドには色んな情報が集まってきます。地方の状況も、街道の安全状況も。管理局とはまた違う情報網があります」
「そうですね」と蒼は少し考えた。「一つお願いがあります。地方の魔物の出没状況が変化している場合、それを記録してもらえますか。管理局に伝えたいので。魔脈の歪みの残存状況を把握するために、現場の情報が必要なんです」
「できます。ギルドで集まる情報は私が管理していることが多いので」
「助かります」
アリアが少し嬉しそうな顔をした。「役に立てて、よかったです」
食事が終わって外に出ると、リーナがアリアに言った。「王都での生活で困ることがあれば言って。知っている場所は教えます」
「ありがとうございます」とアリアが言った。それから少しためらってから言った。「リーナさんは、ずっと蒼さんの傍にいるんですか」
「これからもそうするつもりです」とリーナは答えた。そこに迷いはなかった。




