第六十八話「第二王子の使者」
管理局に使者が来たのは朝一番だった。
クルトが蒼の部屋に来て、「第二王子派の使者が面会を求めています」と告げた。蒼はちょうど朝食を終えたところで、すぐに準備した。
「第二王子について教えてください」と蒼はクルトに歩きながら聞いた。
「年齢は三十代後半で、第一王子より実務的な人物です。軍の統括をしていて、王都の守備隊の一部は第二王子の指揮下にあります。ライゼル殿下が全軍停止を命じたあの夜、王都を実際に守っていたのは第二王子派の守備隊でした」
「つまり、第一王子の件でもめている間、王都を守っていた人物ということですか」
「そう見ています。ただし、第二王子派が完全に管理局側かというとそうでもない。王位継承という点では独自の動きをしています」
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使者は四十代の軍人で、第二王子の副官という肩書を持っていた。面会室で向き合うと、使者は開口一番で言った。
「殿下が転生者殿に直接お会いしたいとのことです」
「理由を聞かせてください」と蒼は言った。
「炉の件と、先日の騒動についてです。管理局からの報告だけでは把握しきれない部分があるとのことで、直接話を聞きたいと」
「それを断ると、どうなりますか」
使者が少し驚いた顔をした。「断るということを想定されていますか」
「可能性を全部考えておきたいので」
「断られた場合は、管理局に別途要請が行くことになると思います。ただ、殿下は強要するつもりはないとおっしゃっていました」
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クルトと少し話し合ってから、会うことにした。断る理由が特になかったし、第二王子がどういう人物かを知る機会としても価値があった。
第二王子との面会は翌日に設定された。王城ではなく、第二王子が使っている王都内の別邸で行うことになった。
リーナとクルトが同行した。別邸に入ると、廊下に軍の関係者が多く、管理局とは別の雰囲気があった。
第二王子、ランフォードは体格の良い男で、軍人らしい姿勢を持っていたが、目が思ったより穏やかだった。向かいに座ってすぐに話し始めた。
「炉の封印を維持したのはあなたですか」
「私だけでなく、エムさんとアリエルさんの力があってのことです」
「それはわかっています。ただあなたが中心にいたことは、複数の証言で確認しています」ランフォードが蒼を見た。「感謝しています。あの夜、炉が暴走していれば王都は終わっていた」
「お礼の場でしたか」と蒼は言った。
「半分はそうです。もう半分は」殿下が少し間を置いた。「七年後のことを聞きたい」
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ランフォードが七年後の調整について知っていたことは、驚きだった。蒼は顔には出さずに聞いた。「どこから」
「ヨルダから直接聞きました。観測者として、王家には定期的に報告が入ります。ただし、炉の問題が今回これほど深刻になるまで、私たちはその意味を正確に理解していなかった」
「七年後の調整に、どう関わろうとしていますか」
「私が直接関われることは少ないと思っています」ランフォードが率直に言った。「炉の問題は、あなたたちが担う部分が大きい。私にできるのは、あなたたちが動ける環境を整えることです。政治的な障害を取り除くこと、必要な資源を用意すること、七年間その状態を維持すること」
「それをなぜ俺に言いますか」
「確認したかったからです。七年間、あなたがこの問題から離れないことを確認したかった」
蒼は少し考えた。七年後まで続けるかどうかという問いかけは、想定していなかった。
「離れません」と蒼は言った。「七年では足りないかもしれないですが、続けます」




