第六十六話「昇格審査」
昇格審査の申請を出したのは、王都に戻ってから二週間後だった。
Gランクからの審査は通常、F、Eという段階を踏んで上がるものだったが、推薦状があれば段階を飛ばして審査を受けられる制度があった。リーナがBランクの推薦状を書いてくれて、クルトが管理局の証明書を添付してくれた。これで、一気に上位ランクへの審査が受けられることになった。
審査当日の朝、蒼は早起きして一人で訓練場に行った。体を動かすためではなく、頭を整理するためだった。
筆記の部分は自信があった。魔物の知識、魔脈の基礎理論、危機対応の手順。この一か月半で積み重ねた情報量は、普通のGランクとは比較にならないはずだ。問題は実技だった。ステータスは上がっていたが、戦闘経験の蓄積という点では同じランク帯の冒険者より少ない。
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審査会場はギルドの裏手にある広場だった。
審査官は二人で、どちらもAランクだという話だった。筆記は一時間かけて行われ、蒼はほぼ全問に答えられた。一問だけわからない問題があったが、それはこの世界特有の魔物の生態に関する問題で、まだ直接見たことのない種類だった。
次に実技が始まった。
最初は基礎動作の確認で、走る、跳ぶ、障害を越えるという動作を見られた。体力Bに届いていたおかげで、Gランク時代とは比べ物にならない動きができた。審査官の一人が少し眉を上げたのが見えた。
最後に手合わせがあった。
「Cランクの審査官と模擬戦を行います」
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相手は三十代の女性冒険者で、動きが速かった。最初の一撃で蒼の間合いを測ってきた。蒼は後退した。前に出ることより、まず相手の動きのパターンを把握する方を選んだ。《知識蓄積》が相手の動きを記録していく。
三回のやり取りで、相手の癖が見えた。左手を上げる前に一瞬重心が右に寄る。それが攻撃の前兆だった。
四回目の攻撃が来た瞬間、蒼は相手の右側に半歩踏み込んだ。攻撃が空振りした瞬間、体勢が崩れた相手の腕を取って、制した。
審査官の二人が短く話し合っていた。
「Cランク、認定します」
広場に静寂が来て、それから後ろにいたリーナが小さく声を出した。蒼は振り返った。リーナが普段より少し顔が赤かった。
「どうしましたか」と蒼は言った。
「なんでもない」とリーナは言った。「おめでとう」




