第六十二話「スキルの深度」
炉の地下に再び降りたのは、王都に戻った三日後だった。
クルトが同行した。封印が維持されている今、炉の地下は危険ではないが、一人で入ることは管理局的に難しかった。蒼はそれを受け入れた。一人で入ることより、何を確認するかの方が重要だった。
地下に降りて、炉の前に立つと、封印の文字が静かに光っていた。逆転していた頃の張り詰めた空気とは全然違う。安定した、穏やかな気配があった。
蒼は炉に近づいて、軽く意識を向けた。
「来たか」と炉が答えた。前回より声が穏やかだった。
「少し確認したいことがあって来ました」
「なんでも聞け」
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「《知識蓄積》の使い方について、もっと知りたいです」と蒼は言った。「炉と対話した後から、何かが変わった気がしています。感度が上がったというか」
「変わっている。炉との接続が深くなったことで、スキルの基礎能力が向上した」
「どの程度まで使えますか」
「現在の段階では、古代語の読解と魔法陣の分析が主な能力だ。ただし」炉が少し間を置いた。「お前の限界突破が積み重なるにつれて、知識蓄積の能力も広がる。二つのスキルは独立しているようで、実際には連動している」
「どういう意味ですか」
「身体の限界が書き換えられるとき、精神の限界も同時に書き換えられる。お前はまだその段階に達していないが、ある閾値を超えたとき、知識蓄積は情報の収集だけでなく、それを編集して出力できるようになる」
「編集して出力とは」
「この世界の魔法は、魔法陣と魔力の組み合わせで動いている。お前は魔力がゼロだ。しかし、魔法陣だけを知識として保有して、それを別の方法で駆動できる段階が来る可能性がある」
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蒼はその言葉の意味を考えた。魔力ゼロのままでも、魔法に近いことができる可能性がある。ただ「ある閾値」というのが問題で、それがいつ来るかは《限界突破》の蓄積次第だということになる。
「炉との接続を深めることで、その閾値を早めることはできますか」と蒼は聞いた。
「できる。ただし炉は今、封印の維持に集中している。深い接続は炉に負荷がかかる。七年後の調整の前に、炉が消耗しすぎることは避けたい」
「わかりました。では適度な接続に留めます」
「賢い判断だ」と炉は言った。
「一つだけ聞かせてください。設計者について、炉は何か知っていますか」
「知っている。設計者についての記憶は、炉の中で最も古い部分にある」
「外の世界から来た存在だったということは本当ですか」
「本当だ」と炉は静かに言った。「設計者はこの世界の理を理解して、封じる必要があるものを見つけて、炉を作った。去り際に言っていた。いつかまた外の世界から誰かが来て、続きをやってくれることを期待していると」
続き、という言葉が蒼の頭に残った。




