第五十二話「三人から四人へ」
出発の朝は快晴だった。
管理局の正門前に馬を三頭用意して、荷物を積んでいると、クルトが荷物を持って現れた。蒼とリーナとエムの三人が揃って驚いた顔をすると、クルトは少し居心地悪そうに言った。
「アーヴィンスの名前が石板に刻まれていると聞きました。私に関係があるなら、私にも知る権利があると思います。局長には休暇申請を出しました」
「局長は何と」
「行ってこいと言われました。珍しく早い承認でした」
ガーレン局長が送り出してくれた、というのは、単なる休暇承認ではないと蒼は思った。局長自身もアーヴィンスの名前の意味に気づいていて、クルトに行かせることを望んだのかもしれない。
「四人になりましたね」と蒼は言った。
「多すぎますか」とクルトが言った。
「助かります」と蒼は正直に答えた。「俺とリーナさんとエムさんだけだと、頭が多すぎて手が足りなかったので」
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王都を出ると、街道がすぐに北に向かって延びていた。空気が王都の中より澄んでいて、両側に続く丘の緑が濃かった。馬に乗りながら、蒼は久しぶりに頭の中が静かになる感覚があった。
王都にいる間、常に情報が流れ込んでいた。炉のこと、政治のこと、四つの一族のこと。頭が休まる時間がほとんどなかった。今は馬の足音と風の音だけがあって、それが心地よかった。
「少し楽そうな顔してる」とリーナが横から言った。
「王都は情報が多かったので」
「それがあなたの戦場でしょうに」
「疲れないわけじゃないです」
リーナが少し笑った。エムが前を向いたまま言った。「北部の山岳地帯まで、どのくらいかかりますか」
「ライゼル殿下の情報では、街道を五日ほど北に進んで、そこから山道に入るとのことです」とクルトが答えた。
「途中に経由する街は」
「二つあります。どちらも小規模の街ですが、宿はあります」
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一日目の夕方、最初の経由地の街に着いた。
街の名前はターグといって、農業と牧畜で生きている静かな場所だった。ギルドもあったが、王都のものとは比べ物にならない小規模だった。受付で宿の紹介を頼むと、女性が蒼のギルドカードを見て少し驚いた顔をした。
「Gランクですか」
「そうです」と蒼は答えた。
「でも、ずいぶんと旅慣れた方に見えますが」
「転生して一か月ちょっとです」
女性が困ったような顔をした。転生者が珍しくないとはいえ、一か月でここまで旅してきている転生者は珍しいらしかった。
宿に荷物を置いてから、蒼はギルドの依頼ボードを確認した。Gランクでも受けられる依頼があったので、一つ取った。翌朝の出発前に完了できる薬草採取の依頼だった。
「なんでそんな小さい依頼を取るの」とリーナが言った。
「Gランクのままでいるより、少しでも上げておいた方がいいです。それと」蒼は少し笑った。「荷物運びと薬草採取は、いつも何かを教えてくれるので」




