第四十七話「四つの一族」
管理局に戻って、クルトを探した。
執務室にいたクルトにアーヴィンスという名前について聞くと、彼は少しの間だけ沈黙した。驚きとも違う、何かを整理している沈黙だった。
「知っていましたか」と蒼は聞いた。
「知っていたわけではないですが」とクルトはゆっくり言った。「管理局の中でアーヴィンスという名前は、創設期から続く家系です。代々、炉に関わる仕事をしてきた家だと聞かされていました。なぜそうなのかの説明は、なかったですが」
「四つの一族の一つだったからかもしれない」
クルトが少し考えてから言った。「リーナは?」
「フォーセルという名前が刻まれていました」
クルトが表情を変えた。「フォーセルは」彼は少し考えた。「冒険者の家系で、代々剣の使い手が多いと聞いています。ただ、それ以上のことは知らない」
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その夜、蒼はリーナに話した。
彼女は最初、黙って聞いていた。フォーセルという名前が建国以前から続く一族だということ、炉の設計に関わっていた可能性があること。蒼が話し終えると、リーナはしばらく手元を見ていた。
「私の家系について、詳しく知らないんです」とリーナはやがて言った。「両親は早くに亡くなって、剣は師匠に習ったので。家の歴史を教えてくれる人がいなかった」
「調べてみる価値はあると思います」
「うん」リーナが顔を上げた。「でも今は、それより気になることがある」
「なんですか」
「ラーデンという名前の一族については、まだ何も出てきていない」
蒼はそれに気づいていなかった。ヴァルクはエム、フォーセルはリーナ、アーヴィンスはクルト。四つのうち三つは今、この問題に関わっている人物と繋がっていた。残り一つのラーデンだけが、まだ不明だった。
「偶然じゃないと思います」と蒼は言った。
「そうね」とリーナは言った。「炉が流した《知識蓄積》があなたに届いたのと同じように、関係する人間が自然に集まってきているのかもしれない」
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翌日、ライゼルに石板の内容を伝えた。
殿下は蒼の話を聞きながら、興奮を抑えようとしている様子だった。学者の顔が出ていた。「建国以前の一族が炉を作ったという記録は、断片的な示唆があったが実証されていなかった」
「石板に直接刻まれていました。ラーデンという一族については、何か知っていますか」
「ラーデン」ライゼルが眉を寄せた。「古代史の資料に出てくる名前だ。ただし、他の三つとは違う形で出てくる。ヴァルク、フォーセル、アーヴィンスは地名や家系として残っているが、ラーデンは個人名として出てくることが多い」
「個人名として?」
「王国の建国に関わった人物の中に、ラーデンという名前を持つ者が複数いる。家系ではなく、特定の使命を持つ者が名乗る名前だった可能性がある」
蒼はその言葉を頭に入れた。使命を持つ者が名乗る名前。オルティスと同じような継承の形かもしれない。
「現在、ラーデンという名前を持つ人物を探せますか」
「難しいです」とライゼルは言った。「ただ、一つだけ心当たりがある」




