第四十一話「動き出す王都」
翌朝、管理局の廊下をカインが走ってきた。
蒼はちょうど食堂で朝食を取っていた。昨夜の戦いで全身を打ちつけていたので体が重かったが、飯を食うと言った手前、きちんと食べていた。カインが扉を開けた瞬間、その顔を見て箸を置いた。
「第一王子派が全軍を動かしました」とカインが言った。「王都に向けて、北の街道を南下しています。先頭部隊は今日の夜には王都の城壁に届く」
食堂が静まり返った。クルトが立ち上がった。「規模は」
「五千以上。正規軍の三割に相当します」
「クーデターか」
「そう判断しています」カインが蒼を見た。「マルクスが動いたのと、第一王子派の全軍展開が同じ日だったのは偶然ではないと思います。炉の解放が成功していれば、その力を後ろ盾に王都を掌握するつもりだった。炉が止まった今、彼らは力ずくで動くしかなくなった」
蒼は昨夜の戦いの疲れを、少し後回しにした。頭が動き始めた。
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全員が管理局の会議室に集まった。ガーレン局長、クルト、リーナ、エム、カイン、アリエル、そして蒼。傷の残る顔が並んでいたが、全員の目は生きていた。
「現国王は今どこにいますか」と蒼が聞いた。
「王城の奥にいます。健在ですが、体調が優れないのは事実で、政務の多くを側近が代行している」とカインが答えた。
「第一王子は今、王都の外ですか」
「南の街道から入ろうとしています。北から軍が来て、南から本人が入ることで王城を挟み込む形を作るつもりだと思います」
「それが完成する前に手を打てますか」
「時間は今日の午前中だけです」
蒼は少し考えた。軍事的な対抗は、管理局の権限では難しい。王城の守備隊と正規軍の一部は王家に忠誠を持つが、それが第一王子派と対峙すれば内戦になる。それは最悪の結果だった。
「戦いで解決しない方法はないですか」と蒼は言った。
「この状況で?」とクルトが言った。
「あります」とカインが静かに言った。全員が彼を見た。「第一王子に直接会って、交渉する余地があります。ただし、それができる人間が一人しかいない」
「誰ですか」
カインがアリエルを見た。アリエルが兄の視線を受けて、静かに頷いた。
「私です」とアリエルが言った。「第一王子は私の異母兄です。直接話せます」




