第三十二話「通告」
炉から戻って全員に話すと、その夜、カインが決断した。
「アリエルを連れてきます」と彼は言った。
蒼はその言葉の重さを理解していた。妹を守るために動いてきたカインが、妹を危険に近づける選択をした。それがどれほどの決断かは、言葉にしなくてもわかった。
「ありがとうございます」と蒼は言った。
「礼はいらない」カインが立ち上がった。「ただ、絶対に守ってください」
「約束します」
カインが出ていって、部屋に沈黙が落ちた。リーナが壁に背をもたれて天井を見ていた。エムがテーブルの上の地図を見ていた。蒼は残り九日という数字を頭で繰り返した。
翌朝、管理局に使者が来た。
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使者はマルクスからだった。
若い神官で、表情が固く、手に封書を持っていた。クルトが受け取って局長室に持っていき、蒼も呼ばれた。ガーレンが封書を開いて読んで、机に置いた。
「読んでください」と局長が言った。
蒼が手に取った。内容は短かった。
「天宮蒼を三日以内に建国神殿に引き渡せ。従わない場合は、アリエル王女の素養を直接炉に使用する。その場合、炉の制御は保証できない」
制御は保証できない、という言葉が引っかかった。蒼はエムを見た。
「アリエルさんを強制的に使った場合、何が起きますか」
「炉との接続が乱暴になります。素養を持つ者が自発的に行うのと、強制的に行うのでは、炉の反応が全然違う」エムが言った。「最悪の場合、炉が暴走する可能性があります」
「暴走したら」
「王都だけでは済まないかもしれない」
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三日以内という期限は、カインがアリエルを連れてくる前に終わる可能性があった。蒼は頭を動かした。
引き渡しに応じれば、マルクスが蒼のスキルを使って炉の解放を完成させる。拒否すれば、アリエルが使われて炉が暴走するかもしれない。どちらも選べない。
「第三の選択肢を作るしかないですね」と蒼は言った。
「どういう意味ですか」と局長が言った。
「三日以内に、炉の正常化を完成させる。マルクスが動く前に、こちらが先に炉を直す。そうなれば、どちらの脅しも意味がなくなります」
クルトが難しい顔をした。「準備は整っているんですか」
「整っていません」と蒼は正直に答えた。「アリエルさんがいない。エムさんの協力もまだ完全には確認できていない。ただ、三日で可能な限り整えます」
リーナが口を開いた。「カインに連絡できますか。三日以内にアリエルを連れてきてほしいと」
「私が行きます」とカインが扉の外から言った。
全員が扉を見た。カインが入ってきた。「入口で聞こえました。一昨日から準備していた。今夜、アリエルを連れてきます」




