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「全ステータスF・魔力ゼロで転生したが、殴られるたびに限界を超えるので問題ない」  作者: ラーメンが好き


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第二十話「全体像」

 星読み神殿を再び訪ねると、ロスタンは既に蒼が来ることを知っていたように、執務室の扉を開けて待っていた。

「観測データから干渉源を絞り込んだんですね」と彼は言った。

「建国神殿の地下が候補の一つです」

「一つ、ということは他にも候補がある」

「東市場の地下と、北の森の方向に二か所あります」

 ロスタンが地図を見て、少し目を細めた。「東市場の下は、かつての旧市街の地下区画です。今は使われていない。北の森の方向は」彼が少し考えてから言った。「廃村の跡地に近い」

「廃村というのは、ヴァルク村ですか」

 ロスタンが蒼を見た。「エム・ヴァルクと会ったんですね」

「昨日、彼女の方から来てくれました」

「そうですか」ロスタンが窓の外を見た。何かを決めるような間があってから、彼は言った。「建国神殿の地下区画に入るための協力者として、一人心当たりがあります」

「誰ですか」

「カイン・アルノードです」

────────────────────────

 蒼は少し驚いたが、それを顔に出さずに言った。「第一王子派の人間が、なぜ協力するんですか」

「彼が第一王子派にいるのは、確かです。しかし彼個人の目的は、派の主流とは少し違う」ロスタンが蒼を見た。「カインが動いているのは、妹のためです」

「妹、ですか」

「アリエル・アルノード。王の血を引く第三王女で、現在は王都の外れに隔離されています。彼女は生まれながらにヴァルク村の素養に近い特殊な魔力を持っていて、それがある者たちに目をつけられている」

「調律炉の制御に使おうとしている、ということですか」

「使うのではなく」ロスタンが言葉を選んだ。「炉の逆転を完成させるための鍵として、彼女の素養が必要とされているようです」

 蒼は今まで集めた情報を、一気に繋ぎ合わせた。

 百年前に炉は封印を解く方向に改修された。その完成には、ヴァルク村の素養が必要だった。だからヴァルク村は排除された。しかし今、その素養を持つ人間が王族の血の中に現れた。だから炉の逆転が再び動き始め、その人間を手に入れようとしている者がいる。

────────────────────────

「カインが妹を守ろうとして第一王子派にいるのなら、派の目的とは別のところで動ける人間ということですか」

「そうです。彼は妹の素養が狙われていることを察しています。ただ何者が狙っているのかを、まだ完全には把握できていない」

「会えますか」

「昨日、使いを出しました。今日の夕方に場所を用意します」

 ロスタンが準備の良さに、蒼は少し苦笑した。「最初から、こうなると思っていましたか」

「あなたが王都に来てからの動きを見ていて、この日が来ると思っていました」とロスタンが答えた。「ただし、これだけ早く来るとは思っていなかった」

────────────────────────

 夕方、ロスタンが用意した神殿内の小部屋で、カインと向き合った。

 カインは蒼を見て、セルダの城門前と同じ目をした。値踏みではなく、確かめるための目だ。

「妹さんのことを聞きました」と蒼は言った。

 カインが少し表情を動かした。「誰から」

「ロスタン師から。ただし、カインさんが教えてくれても構いません。直接聞いた方が、互いに正確に話せると思うので」

 カインがしばらく蒼を見てから、ゆっくりと話し始めた。

 アリエルは幼い頃から特殊な魔力の動きを持っていて、魔法が得意なわけではないが、炉や魔脈に触れると直感的に状態を感知できる能力があった。王家はそれを秘密にしていたが、三年前から何者かが彼女に接触しようとする動きが始まり、カインは妹を守るために王都に留まっていた。

「その何者かが、炉の逆転と繋がっていると思いますか」と蒼が聞いた。

「繋がっていると確信しています。ただ、相手の正体がわからない」

「建国神殿の地下区画に入れますか」

 カインが蒼を見た。「なぜそれを?」

「干渉源の候補が、建国神殿の地下と一致しています。そこを調査できれば、相手の正体に近づける可能性があります」

 カインが少し考えてから言った。「建国神殿には、第一王子派の協力者がいます。手を回せます。ただし」彼が蒼を正面から見た。「私の妹を、巻き込まないでほしい」

「約束します」と蒼は即座に言った。「彼女を守ることと、炉を止めることは、同じ方向を向いています」

 カインが長い間、蒼の目を見た。やがて静かに頷いた。「わかった。明後日の夜、案内します」

────────────────────────

 宿に戻る道、リーナが蒼の横を歩きながら言った。「全部繋がってきたね」

「まだ全部じゃないです。干渉源が誰なのか、建国神殿の調査をしないとわからない。それに、残り二十日しかない」

「でも二十日前は、転生したてで森で熊みたいなやつに殴られてたじゃない」

 蒼は思わず笑った。確かにそうだった。二十日前の自分はGランクで、肋骨を折って、リーナに助けてもらっていた。それが今、王都で調律炉の秘密を追っている。

「少しは前に進んでますかね」

「だいぶ前に進んでると思う」とリーナが言った。「あなたが思ってるより」

 夜の王都の灯りが、石畳の道に揺れていた。二十日後に何が起きるのかはまだわからない。ただ蒼には、一緒に戦ってくれる人がいた。それが、何より大きな力だった。

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