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Episode 2

何故、私はまた、トリプルエスプレッソラテを飲んでいるんだろう?


履歴書を受け取らない久柳に、再び連れて来られた店内で、2杯目のコーヒーを口に運びながら考えた。


『あの、久柳さん。確かに私は仕事を探してます。』


『が!どうして、あなたにピッタリの仕事を探す仕事をすることになるのでしょう。』


初対面の久柳が、突然提案したのはこうだった。


『僕の天職を探してもらえませんか?』


『もちろんバイト料はしっかりとお支払いします。時給は最低賃金の150%でどうでしょうか? 詳しいお話はコーヒーでも飲みながらにしましょう。』


そう言いながら歩き出した久柳の後を、彼の履歴書を持ったまま追いかけて来たのだ。


『そもそも、あなた程のスペックの持ち主なら、引くて数多でしょ? 1番条件の良い所に就職すれば、生涯安泰じゃないですか。』


『もしかして、私が可愛いからって、新手のナンパですか?』


そこまでを一気に言葉にすると、大きなため息が漏れた。


『少し、僕の話をしてもいいですか?』

何の感情も見せずに久柳は言った。


久柳の静かな声音に、観念した私は頷いた。


『えっと、なんて呼んだらいいかな?』


一瞬、躊躇ったけれど、履歴書を見てしまった罪悪感から、偽名を使うのは諦めた。


『那里、橘那里です。同じ歳だから、那里でいいですよ。』


『では、橘さんで。』


そっか、距離感はしっかりしてるのね。


『橘さんは、どうしてあの企業説明会に出席してたんですか? あ、差し支えなかったら答えて下さい。答えたくない時は、答えたくないと言ってくれて構いません。』


うん、流石にK大卒。その内、論文書かされそうだわ。


『はい、そこは大丈夫な所なので、お答えします。会社が倒産して職を失ったからです。まぁ、そもそも、倒産しそうな会社を選んだ私の読みが甘かったと、自分を責め倒しましたけど。』


『そうですね、浅はかでしたね』


「チッ!」脳内で舌打ち。


『じゃあ、久柳さんが企業説明会に出席した理由は?』


久柳は椅子の背に身体を預けると、私を通り越して、ずっと遠い所を見つめて言った。


『橘さんが言う様に、将来何の心配も要らないであろう某有名企業に入社しました。』


『同期は皆んな、どこぞのご子息・ご令嬢。ランチタイムに花咲く胸が焼けそうな自慢話。揚げ足取りまくりのマウンティング活動。』


『成果を出せば上から重圧がかかる。出さなければ吊るし上げられる。目標が数字でしかない毎日が嫌になって・・。』


そこまで話した久柳は、漸く私に視線を合わせると、


『半年で、会社を辞めました!』

と、楽しそうに笑顔を見せた。


『でね、気づいたんだ。周りの人の行動や上司の評価や、自分の価値をレベルみたいに決めてしまう数字が、そんなどうでもいい事が、気になって仕方が無いって事は、本気で仕事をしていないって事なんだな、って。』


私の目を見つめる久柳の瞳には澱みが無く、キラキラしていて、そして、眩しくて羨ましかった。


『でも、どうして私なの?』

半分諦めの混じった声で私が尋ねると、


『僕の履歴書を見てしまったから。』

と、久柳は意地の悪い顔で笑った。




ゆっくりですが、私自身楽しんで進めています。

よろしければ、また続きも読みに来てください。

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