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1、安請け合いは身を亡ぼす!

会場の端っこに立って、僕は俯いたまま足元の床を見つめている。

人の声、足音、笑い声、すべてが重なって、胸の奥を押し潰す。


ステージではリハーサルが続いている。

ライトが点くたび、目に光が跳ねる。

それだけで、心臓が高鳴った。


僕なんかに、できるわけがない。

人が多い場所は苦手だし、見られるのも怖い。

目立つことも、注目されることも――全部、怖い。


――どうして、僕はここにいるんだろう。


ふと、先日のマスターとの会話を思い出す。


「知り合いがね、紹介してくれたんだよ」


探偵カフェの奥、カウンター越しのあの声。

穏やかで、力が抜けていて、でも何も言わなくても受け止めてくれる人。

その人が、僕に言った。


「だからって、どうして僕なんですか!」


思わず口を強く突き出す。

声に力が入る。


(僕が行かなくてもいいじゃないか!)


「こんな場所、向いてません!だって、人が多すぎるし、僕は、、」


「うんうん。そう思うよねえ」


否定も、説得も、励ましもない。

ただ、ふわっと受け止めるだけの優しい声。

その声に、僕は途端に肩の力が抜けた。


――安心する。


外に出ることを考えるととても怖い。

人が遠く集まるところだ。そんなことは僕よりもわかっているはずなのに......っ!


マスターはいつもそうだ。

ただ当たり前のことのように、すべてを肯定して受け入れてくれる。


「こういう場所だからこそ、君がいいんだ」


理由は聞かなかった。

怖くて、怖くて。

でも、マスターがそういうのなら、きっと、


胸の奥がざわつく。

――期待されるのが怖い。

――信じるのが怖い。

――自分で立ち向かうことさえ、怖い。


だけど、俯いたままの僕を、逃がさないように見守ってくれる人がいる。

それだけで、自然と息をすることができた。


.......――っ。


爪が食い込む痛みでふと我に返る。


マスターが僕を視ている。

ずっと僕を視てくれている。

今の自分がここにいる理由としては、それだけで十分だ。


――――――――――――――――――――


なんて、優しさに流されて受け入れてしまったあの時の自分を殴り飛ばしてやりたい。


「無理だよマスター」


――やっぱり、僕だなんて間違ってるんだ。

――僕じゃなくてもできる仕事じゃないか。


ざわつきの中で、僕はまだ立っている。

誰にも気づかれず、誰の視線にも止まらない。


一生誰にも関わらずに生きていきたい。


「あぁ、もうほんとに帰りたい......」


なんだかすごく長い一日になりそうだ。






「マスター!!もう無理です!!!!」

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