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第21話:王冠の重み、隣歩く誓い【蒼の騎士エンディング】

「――アレクシス様!」


 ステラは叫んだ。  破壊してしまえば、国は混乱に陥る。  シルヴァリオと共に堕ちれば、世界は停滞する。  必要なのは、正しいことわりを取り戻し、未来へと繋ぐこと。


「私とパスを繋いで! 貴方の血統コードと私の鍵で、世界を正しい形に書き換えます!」


 ステラの叫びに、アレクシスが弾かれたように振り返った。  その藍色の瞳が、ステラの覚悟を受け止め、力強く頷く。


「承知した! ……我が命、君に預ける!」


 アレクシスが剣を捨て、ステラの元へと疾走する。  シルヴァリオが黒い茨で阻もうとするが、レオンハルトが咆哮と共にそれを切り払った。   「行けぇッ! アレクシス、ステラ! 美味しいところは譲ってやる!」


 レオンハルトが切り開いた道を抜け、アレクシスが祭壇へと飛び込む。  彼は迷わず、ステラの手を強く握りしめた。


「合わせろ、ステラ! 俺の血に眠る『古の契約』を呼び覚ます!」 「はい!」


 二人の手が重なり合った瞬間、ステラの身体から溢れる純白の魔力が、アレクシスの身体へと流れ込んだ。  それは破壊の光ではない。  複雑に絡み合ったシルヴァリオの術式を解きほぐし、本来の美しい回路へと再構築するための、青白く澄んだ「秩序の光」。


『――王権執行ロイヤル・オーソリティ再起動リブート!』


 カッ!!


 祭壇から天へと向かって、巨大な光の柱が立ち昇った。  その光は、暴走するドス黒い「クリスタル」を優しく包み込み、こびりついた汚れを洗い流していく。


「馬鹿な……!? ヴァイスの血ごときが、私のシステムに干渉できるはずが……!」  シルヴァリオが目を見開く。


「思い上がったな、シルヴァリオ。これは貴様が作ったシステムではない。この国が、星が、本来持っていた力だ!」


 アレクシスが叫ぶ。  ステラには見えた。彼の背中に、歴代の王たちの幻影が重なり、彼に力を貸しているのが。  これこそが正統なる王の力。  シルヴァリオがどれだけ魔術で偽装しても手に入らなかった、「世界に愛された王」の輝きだ。


「戻れ、あるべき姿に――!!」


 二人の声が重なる。  光が弾け、黒い茨がガラス細工のように砕け散った。  そこには、透き通るような蒼色を取り戻し、穏やかに脈打つ美しいクリスタルが鎮座していた。


「あ、あぁ……私の……私の理想郷が……」


 力の供給源を断たれたシルヴァリオは、糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。  彼の野望は、暴力によってではなく、あまりに眩しい「正しさ」によって浄化されたのだ。


          ***


 それから、一年後。


 王宮のバルコニーには、新しい時代の風が吹いていた。  眼下には、復興を遂げ、以前よりも活気に満ちた王都の街並みが広がっている。


「……良い式だったな」


 真新しい王冠を戴いたアレクシスが、隣に立つステラに微笑みかけた。  今日は、彼の戴冠式であり、そして二人の婚礼の儀でもあった。


 純白のドレスに、王妃の証であるティアラをつけたステラは、幸せそうに微笑み返した。


「ええ。民衆の皆さんの笑顔、とても素敵でした」 「君のおかげだ。君がいなければ、私は復讐に囚われた亡霊のままだった」


 アレクシスはそっとステラの手を取り、その薬指に光る指輪に口付けた。  あの日、世界を救った「共犯者」は、今や国を背負う「伴侶」となった。


 シルヴァリオは処刑されず、魔力を封じられた上で、北の離宮に幽閉されている。  かつて彼がステラを閉じ込めたように、今度は彼が、二人が作る新しい王国の繁栄を、窓から眺め続けることになったのだ。  それが、彼にとって最大の罰であり、アレクシスなりの慈悲だった。


「これからは忙しくなるぞ。レオンハルトのやつも、貿易協定の件でうるさいしな」 「ふふ、彼らしいですね。……でも、大丈夫です」


 ステラはアレクシスの腕に身を寄せた。  王冠の重みは、一人で背負うには重すぎる。  けれど、二人なら。


「貴方が道に迷う時は、私が『鍵』となって道を拓きます。……ですから、ずっとお側に置いてくださいね、私の王様マイ・キング


「ああ。誓おう、我が愛しき王妃マイ・クイーン。この命ある限り、君と共に歩むと」


 鐘の音が響き渡る。  蒼き王と、異界の聖女。  二人の治世は、王国の歴史の中で最も賢明で、愛に満ちた黄金時代として、長く語り継がれることだろう。


 二人は口付けを交わす。  それは契約ではなく、心からの愛の誓いだった。

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