第1章:研究開始記録
研究報告書No.001 / 記録者:アキト・ミナセ(特異行動心理学専攻)
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【研究対象】
仮称:ワープ性ヤンデレ行動特性
通称:YDT-001(Yandere Teleport)
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【研究目的】
近年、都市伝説的に語られる「ヤンデレ女性の瞬間的接近能力」について、実証的検証を行う。
特に、以下の現象の実在性を調査対象とする。
•被験者が物理的に不可能なタイミングで対象の傍に現れる
•対象が居場所を秘匿しても追跡・接近できる
•鍵・セキュリティを突破する形跡なしに接近可能である
本研究ではこの現象を**「ヤンデレ特有のワープ機能(仮)」**と仮称し、被験者協力のもと記録・検証を進める。
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【被験者情報】
氏名:非公開(被験者希望により仮名「ミサキ」と記す)
年齢:21歳
職業:フリーター
精神状態:自己申告により「私は重度のヤンデレです!」とのこと
※初対面の印象は明るく、協力的。精神的不安定さは見られず。
ただし、終始こちらの目を逸らさず微笑む様子に、若干の圧迫感あり。
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【研究開始日】
7月×日(月)
天候:曇り(蒸し暑い)
開始場所:研究棟E-2、簡易実験室
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【初期実験内容】
実験001:連絡後の接近速度測定
•条件:研究室より被験者に「今から来られますか?」と連絡
•測定開始:12:03:15
•到着時刻:12:05:08(約1.9kmの距離、最短でも徒歩25分)
→【異常検出】:
電話から2分足らずでノック音確認。
アキトが扉を開けた瞬間、ミサキが笑顔で立っていた。
「ちょうど近くにいたので」と回答。
→後日、GPSログを確認したが、12:02の時点では別の区画に位置。
説明がつかない移動速度。
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実験002:対象未告知位置への到達
•条件:アキトがランダムに選んだカフェ(研究室より約6km)に向かう
•ミサキには事前通知一切なし
•到着から約8分後、ミサキが隣席に現れ、「今日はアイスティーですか?」と話しかけてくる
→【重大異常】:
位置情報アプリの共有は切っていた。SNS等での行動記録投稿なし。
目撃者によると、ミサキは「突然、カフェのトイレから出てきた」と証言。
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【研究者所感】
予想を遥かに上回る現象の連続。
現時点では“偶然”や“尾行技術”では説明が困難。
特にカフェの件は「屋内への非通知侵入」と「発見の困難性」が極めて高く、実験としては成功だが、個人的には背筋が冷えた。
ミサキさんは常に笑顔。
しかし、記録を取りながらも、「この人間を調べていて本当にいいのか?」という疑問が胸をよぎる。
だが、まだ序章にすぎない。
この“ワープ機能”が幻覚でなければ、明確な証拠をこの手に掴む必要がある。
この記録が、最後にならないことを祈る。
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――次回記録予定:実験003「鍵のかかった空間への侵入検証」