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遠く離れた未来の果てで、  作者: 豆狸
知識の国編 2章 女神と死神
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第13話 事の顛末 後編

彼女が戻って来た頃にはうっすらと夜が明け、朝を迎えた。数日しか行動を共にしていないはずだが、夢で彼女の成長を見てきたためか、今では他人とは思えないほどには距離が短く感じる。

戻ってきてからは、たわいのない話も少々した。名前は気軽にリィと呼ぶこと、そして話し方も崩して欲しいという話で、これからはそう話をさせてもらおうと思う。


話が一段落ついたところで、部屋のドアがノックされた。


「あのぉ...すみません...。」


酷く低姿勢なたぬきのような耳を生やした少女がナース服のような姿で現れた。


「この度は私の姉が大変ご迷惑を...。彼方様、アリス様におかれましては大変申し訳なく...。あの、その、目覚めたと先程お伺いしまして、その...体調はいかがでしょうか?腕の縫合は問題ないと思うのですが、はい。如何せん、治りが早すぎることの弊害がないか確認させていただきます...。その、マナの偏りも無くなったことですし、もう危害を加えることはありませんので、その...。この度は本当に申し訳ございませんでした...。」


深々と頭を下げている彼女の態度や言動の理由は、事前にアリスから聞かされていた。


ここからは意識が途絶えた後に話は戻る。

ーーーーーーーーーーーーーーー

血飛沫をあげた彼方に動揺しつつも、死神に向かって走り始める。

殺意がなくなり彼をじっと見下ろしている死神に対して攻撃を再開したと同時、別の黒い布を被ったもう1人が現れた。布を外すとタヌキみたいな耳の少女であった。


「ごめんなさい、ごめんなさい、ちょっとうちの次女がやんちゃしすぎたみたいでして...治療しますので、お待ちくださいぃ」


彼方が倒れた後、どこからともなくこのタヌキ?少女が現れ、バタバタと傷の手当をはじめた。次女ということは、この子が3女だろう。


「やんちゃだと?何が目的じゃ!」


手持ち無沙汰でそっぽを向いていた死神(次女)は答える。


「んー。マナの異変の調査と根絶?」


「ちがうよ!調査と報告でしょ!」


マナを吸収、利用できない彼を中心にマナが異変をきたしており、この森の地形変動を引き起こした。そしてその原因を排除するために派遣されたのが彼女達ということであった。


マナ異変は通常起きるものではなく、意図的に操作しない限りでは発生しない。また、悪意を持って操作しない限りではマナは異変をきたさない。


「殺すつもりは元々なかったんだけどねー。自衛できないような生物がいるなんて思わなくてさぁ。彼、多分血が足りなくて死んじゃうかもだけど、許して?あ、でもちゃんと治すよ。そんでもし生き返ったら、ちゃんとお話した上で、再度死んでもらうから。」


「彼に罪は無い。彼は来訪者じゃ!」


「来訪者…ふぅん…。なるほど…。」


みるみる顔が青ざめるのがみてとれた。


「それが本当ならちょっとまずいわね…。私はてっきりいつもの機械か薬絡みかと…。」


3女は素早く止血した後に、腕をなにかの液体を付けて縫合し始めていた。


「いずれにしても治療しないとわからないよ。

彼を運んで。血をどうにか工面しないと…。」


彼方は最寄りの国に運ばれ、治療を受けることとなった。様々なヒトが混在するこの世界において輸血の技術はあっても血のストックというものは充実していなかった。なにせ、自然治癒をするか、輸血する前に息絶えているかがほとんどである。血液型だけではなくマナの相性も鑑みて輸血する必要があるとなると一朝一夕では手に入らないこともしばしばである。彼の血液型は一般的なものであったが、適合する血液の在庫が切れており、医師はドナーを決めかねていた。


「ならば、血液型が同じ妾がドナーになろう。こやつを守れなんだは妾の責任じゃ。」


偶然血液型が一致したため、彼女が1番に名乗り出て輸血を行うことになった。その後は、輸血を無事に終え、1日後に彼方が目を覚ましたということらしい。

ーーーーーーーーーーーーーーー

再び病室。


このたぬきのような耳の生えた三姉妹はいたちに起因する恩恵を持っていた。どことなく見た目も雰囲気を感じる。鼬と言っても鎌鼬。姉妹がそれぞれ斬・打・癒と別の力を持っているのだと、次女に無理やり頭を下げさせようとする3女が教えてくれた。何も弁償できるものが無いので何か一つ言うことをと言われたことえの対価の情報である。


死神と呼ばれた次女。彼女の恩恵は打撃。華奢な見かけによらず、重い鎌を振れたのは手に持つものの重量操作ができるためである。死神装束に身をやつしていたのは顔を見られないための変装であった。


「巷で噂のあった死神が、国お抱えの暗殺部隊だとはのぉ」


「え、そこまでは言ってないんだけど。」


「その反応、当たっているようじゃのぉ?」


「図ったなぁ?おい!」


カラカラと笑いながら掴みかかってきた次女をかわす。


「お姉ちゃん!」


睨みをきかす3女に次女は停止する。


「すまぬすまぬ要らぬ詮索じゃったのぉ」


ヒエラルキーは妹の方が高いらしい。

3女の恩恵は治癒。戦闘ができないが故に長女に守って貰って戦場に参加している。 長女はと言うと、事の顛末を雇い主に伝えるべく席を外しているらしい。


襲撃の理由は、マナの乱れに気づいた彼女らの雇い主が、この3人に調査依頼を行ったことにある。血の気の多い次女の暴走の結果、あの出来事に繋がったというわけである。


「わたしからお話できるのはここまでですぅ...すみません...。」


「あい分かった。」


「あの、彼方さん、私の唾液で治療したので傷の方は大丈夫だとおもうのですが、そのちゃんと神経だったりが繋がっているか見せてもらってもいいでしょうか?」


「どうぞ」


聞き捨てならないことを言っていた気がするが、飲み込んで左腕を前に出す。


「あらぁ。完全に繋がってますね。んむぅ...。まぁそんなこともあるんですかねぇ...。不思議ですぅ...あのぉ恩恵がないって本当ですかぁ?」


「ええ...」


「んむぅ...まぁ、この分ではもう普通に出歩いても大丈夫だと思いますよぉ」


それでは失礼しますと、次女を引き連れてそそくさとはやを出ていった。


「さて、そういうことらしいからのぉ。早めにここから退散するとしようかの」










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