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遠く離れた未来の果てで、  作者: 豆狸
知識の国編 2章 女神と死神
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第12話 事の顛末 前編

「普通の家庭に育った彼女は、当たり前に学校に通い、当たり前に勉強しておった。じゃが妾と同じ遺跡探索に参加し、不慮の事故で1人地下に落ちてしまったのじゃ。幸い軽い打撲程度だったが、真っ暗闇に1人。これは絶望するしかないというものじゃ。」


「細かい説明はいずれするとして、この彼女が妾が”封印”されていた牢獄の扉を開いた。どうも、この扉というのは入るか出るかのどちらかしか行えないらしい。たまたま洞窟をさまよい、たまたま妾を見つけ出したというわけじゃな。」


その後、彼女を連れて隠し通路を使い脱出。100年前に失踪した人物が当時のまま現れたことは世間を騒がせた。


その後、何故かそのまま保全されていた家に戻り、代替わりを果たしたメイドに迎えられ100年前と同じ環境での日々が始まったという。


ただし、世間には知識の牢獄に囚われていた事は隠していても国の上層部には勘づかれたらしく研究者としてひっそりと様々な研究を行っているらしい。優遇された福利厚生と研究資材のために、利益は国に一部流すことでWinWinなんだとか。


助けてくれた彼女はというと、お互いに助けあったということもあり、連絡先は交換したがどうも妾を神格化したのか扱いが重くてのぉ…言葉を濁して遠くを見る目になっていた。


脱獄してから2年。細々と付き合いはあったが、アイドルとファンの距離感を感じているらしい。


「とまぁ、概要としてはここまでが現在に至る経歴じゃ。誰にも語ったことは無かったのじゃがの。まぁ、秘密の大半を知られてしもうたからには致し方ない。なに、秘密を知られたとしてお主をどうこうするつもりは無い。お主を守れなんだし、結果から言えば妾の対処法ももっとやり方があったのではと思うところもある。出会って数日とはいえここまで踏み込まれたとなると、お主と妾は運命共同体みたいなものじゃな。」


冗談めかした言い回しで、しかし暗く悲観的に彼女は呟いた。まぁ、このあとすぐに冗談では無くなる訳だが。


「ありがとうございます。このことは勿論口外しません。」


「あぁ、まぁ原因というか理由は想像がつく。なにから話したものかと思うておったがそうじゃな。あの後の細かい話をする前にこちらの常識。世界の仕組みについて簡単に説明しておこうか。」


そういうと、コップをふたつ用意して急須のような入れ物から香ばしい香りの飲み物を注いだ。


「まぁ、薬と栄養剤を兼ねているようなものじゃ」


ほのかに甘く、匂いほどの苦味や渋味はなかった。


「さて、端的に説明しよう。この世界にはマナというものが存在する。酸素があるようにそこかしこにマナという見えない粒子のようなものがあり、これを使って生命活動をする生物が大半じゃ。そしてもうひとつ、このマナを利用して人々は恩恵と呼ばれる個人ごとに先天的に扱える力を持っておる。遺伝する訳ではないため、どんな力かと言われると十人十色。そうじゃな、人が想像し物語として創造できる限りの力であれば全て有り得るというのが正しい解釈じゃと思っておる。」


「なるほど...」


気を失う前。彼女の見せた黒く覆われた鱗のようなものに覆われた腕。それもその恩恵のひとつというわけだろう。

そして、ひとつはっきりわかることは、自分の生きていた地球とは別の地球に来てしまっまたということだろう。しかも、過去の記録とともに。


「この恩恵というのは、そうじゃの...例えば、水を何も無いところから出現させるという単純じゃが便利な力。しかし、話はそうも単純では無い。この世に何も無いところから水を発生させることが出来る生物などおらぬ。が、水霊がもしも存在すると言われたらそんなことも出来るかもしれないと思うであろう?」


「それはそうですね...そんなものがいればですが...」


「この話の核心は、水霊が居たら水を出せるという人のイメージじゃ。マナというのは人の記憶。すなわち、様々な思いや空想、現実が織り交ざったものを形にする力を持っておる。そして、このマナというものは人の想像しうる限りのものを出来るだけ現実に溶け込ませる。まぁ、つまりじゃな...何処かには水霊の力を持った者が存在するかもしれない。逆に言えば、人の想像しうる形であればどんなものでも理にかなってさえいれば何処かには存在するとも言えるの。」


「...」言葉の意味は理解できるが、言葉がでてこない。


「恩恵は遺伝しない都合上、他者には秘匿することが多い。幼少の頃からこの恩恵と付き合っていくわけじゃから、自然と恩恵が何に由来するかというのは気づき、上手く活用してみな生きておる。生物である以上、自身の危機における第六感というものは必ず存在する。しかし、それはその世界の常識の範囲内でじゃな。」


コホンと咳払いをひとつ。


「話を大きく戻すが、お主の常識では手に持った木の棒でなんとか死神の鎌をいなせるイメージがあった。しかし、死神の常識では避けられる前提での大振りをした。そして、不幸なことにこの認識の相違がお主の大怪我へと繋がった訳じゃな。」


「最後にお主の夢じゃが、血を輸血し妾のマナがお主に流れ込んだことで発生した現象じゃと予想しておる。知識の牢獄でわかった事として、マナには記憶を持っておる。血とともにマナがお主にも流れたことで、夢という形でその記憶を追走することになったのじゃろう。」


これで事の経緯と顛末はざっくりとは説明できたかのぉ。といって席を立つ。湯を作ってくるでな。と一言言い残し、その場を後にする。


ベッドで寝るのはいつぶりだろうか。

ふと目を外に向けると、月が煌々と輝いていた。

サイズが毎日見上げていた月より一回り小さくなっていることに気づき、静寂と共に少しの孤独感と安堵の入り交じる複雑な心持ちで左手を眺めた。




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