第0.5話 少し先の話
星降る夜。
その言葉がまさに絵に描いたように、現実に、眼前に広がっている。
都心から離れた場所からでも、こんな光景は一生かけても見れなかっただろう。黄金に輝く星々が線を描くように降り注ぎ、姿を現しては消えて行く。時と場所が違えば思わず涙を流していたかもしれない。それほどに、全ての意識が空の光景に切り取られてしまった。
これだけ星が流れているのだから、1つくらいは願い事を叶えてくれるだろうか。
空腹を紛らわせるように妄想する。
自分は今まで何をしてこれたのだろうか。
今まで手のひらからこぼれ落ちて行った幸せの分、これから見つけるかもしれない幸せをひと握りでも守れるようになりたい。
"力無く"握った拳では何ひとつ成し遂げることは出来ないかもしれないが、心だけは諦めずに前だけを向こうとそう決めている。例えカラ元気であっても。
(さぁ、明日は何をしようか。)
街灯どころか、周囲には光を放つものは何ひとつとして存在しない。冷たい風が頬を撫でる。激しく移り変わる空模様とは裏腹に、砂の音以外は恐怖を感じるほどの静寂。乾いた空気に声は掠れ、身体は起き上がることを拒んでいる。
果てしなく広がる砂漠。そして、その砂漠の中に埋もれるように元々建造物であったらしいそれらが顔を出している。背丈の高かったであろう建造物の先端以外は地中奥深くに眠っているらしい。風を凌ぐような機能は果たさず、風は横から吹き抜けてゆく。
この砂の町には似つかない宇宙船のような、あちらこちらが焼け焦げている円形の乗り物。それに寄りかかるように座り込み空を眺めている。
この幻想的で悪夢のような現実は、醒めることは無い。しかし、朦朧とする意識の中では現実と夢との境界線は曖昧なものになってしまう。次に目が醒めると暖かい布団の中で、止め損ねた目覚まし時計が景気よく朝を知らせてくれているかもしれない。砂煙の僅かな音を子守唄に次第に"本当"の夢の世界へと堕ちてゆく。
僅かな砂音に紛れた足音に気付かぬまま。