認識 3
「ダートル、ガルソール2人の接見依頼を何事かと軽くみておった。
改めてセントール王子の訪問に対して行動に気を付けよう」
と、ダニエル殿下は仰る。
「早急の依頼に陛下のいつもの趣向を読み違いを致しました。大変失礼な態度を示したかも知れぬ、申し訳なく存じます」
と、宰相殿下は謝罪された。
「シアン国王陛下は危惧されての事ではありません。国中の国民が貴族も平民も穏やかな時間に危機感の認識を薄めてしまったのは自分にあると陛下は仰いました」
と、ガルソール殿の言葉に、
「その学徒にお礼が言いたいが、アカデミーにおるのか?」
と、宰相殿下の問いかけに、
「いえ、それには及びません。本人は気付いておりませんから。
それよりも宰相殿下、王宮内で働いてある者達の指導をお願い致します。
私事ですが研究所員の指導をいたしたところ、なかなか難しく難儀しております」
と、ダートルが告げると、
「注意すればいいであろう?」
と、ダニエル殿下の問いに、
「私の経験から申し上げれば、会話をすれば得られる情報は有ります。
しかしながら、ダニエル殿下と宰相殿下はジャスパード国王子をお迎えされるお立ち場、会話を為さらない訳にはいきますまい。周りに控えております側近達も同じ立場ですしな」
と、ガルソール殿も付け加える。
「それでは、経験豊かな者達を付けましょうか」
と、宰相殿下の答えに、
「宰相殿下、それではダニエル殿下を始め側近達の経験になりません。王宮にお迎えすれば相手の王子殿下や側近達は聞き取りやすいところを狙って来るでしょう。
シアン国王陛下の助力を願い出られませ。私の経験上の話なら纏めて話を聞くでしょうし、シアン国王陛下以上の方で上の者から下の者まで情報の探られて方はおりません。
講義をお願いされてはいかがですか?」
と、ガルソール殿は見かねて提案してきた。
「ぬぅ? それは義父上の体験話を願っても良いと言うことか!」
と、ダニエル殿下は一気に愉悦に感情を出される。
「ダニエル殿下、シアン国王陛下はご自分の体験されたことを出し惜しみ等なさいませんよ。ダニエル殿下が素直にお願いされれば受けて貰えると存じます」
と、シアン国王陛下侍従長であるガルソール殿は助言する。
その言葉を聞いてダートル殿も頷き賛同を示した。
「では、早速シアン陛下に依頼書をお作りしないといけませんね」
と、宰相殿下は段取りを言ってガルソール殿に視線を向けて言う。
「そういたす。で、ダートルは研究所の事頼めるのだな?」
と、ダニエル殿下の確認がダートル殿も向かうと、
「私共の研究所では、室長のバーストと対策致します。ダニエル殿下のご理解を得られ無いことには研究所員を守れないと判断致しましたので、心苦しくも口上させていただきました」
と、ダートル殿は説明すれば、
「いや、義父上の判断は正しい。ダートルからの助言を素直に聞けるか聞いてどう判断するかと試されているようだ。
私が義父上だけに助力をお願いすれば角が立つ。リックと相談して早速四大側近達にも意向を聞き対策とする」
と、ダニエル殿下は掛けていたソファーから立ち上がり机に向かった。
その行動を見てガルソール殿とダートル殿は一礼をして退室の行動に移す。
「ダートル殿、そなたの機転で此方の杞憂も晴れそうです」
と、王宮殿の太子の間から一緒に退室したシアン国王陛下侍従長は言う。
「では、シアン国王陛下は杞憂されていたと?」
「そうではないが、そなたの地ダーニーズヴッド辺境伯領地から戻られてシアン陛下は変わられた。
実際のご年齢よりは若々しくておられるが、最近はダニエル殿下の成長を心から待ち遠しく思われていたように感じていたのだ。その期待には何処か言葉は悪いが人任せ宰相殿下任せに見えていたのだかな…………遠慮されているのだろうと理解していた」
と、ガルソール殿は国王の間に向かいながらダートルド殿に告げた。
「そうでしたか。ガルソール様がそう感じておられたのでしたら、シアン陛下の内心がそれに近いものだったのでしょう」
と、ダートルは共感を示す。
王宮殿の廊下を進むと国王の間に近衛騎士が立って扉前を守っている。
「ダートル殿、シアン国王陛下にご報告なさいますか?」
「いえ、ガルソール様が見たままご報告して下さい。
私は申し訳ないのですが、することが山の様に待機しております。
しかし……1つ伝言をお願い出来ますでしょうか?」
と、退の姿勢からダートルは願い出た。
「どの様な伝言で?」
「シアン国王陛下の文官は優秀です」
と、ダートル殿は一礼をしてガルソール殿を前を退いて王宮殿から帰っていった。
「…………やはりか」
「侍従長……様? お戻りでよろしいですか?」
と、扉前の近衛の騎士が、見送っているガルソールにオズオズと問いかけてきた。
その頃、王城敷地内の施設、カーディナル王国王立研究所では、所長が不在でも普段から所内を取りまとめている室長 バーストが指示を出して研究員達は右往左往していた。
研究所棟の隣に立地している研究員達の宿舎棟から、研究員達の蟻の行列みたいに往復しているのだ。
「バースト室長、どうしても部屋から資料や道具を研究所に返さなければいけませんか?」
と、研究員達が揃って見張りをしている室長に訴える。
「勿論だ。研究所から持ち出したものは全て研究所内に戻せ。ビーカー1つ部屋に持ち込むな。元々部屋に持ち込んで良いものでもない。研究は研究所でするものだ、宿舎棟でするものではない」
と、一喝して周りを見回す。
……長年研究員達の研究熱心さに目をつぶっていたけれど、情報漏洩の点から見れば危ういこと注意していなかった。
寝食惜しまず研究することが良いことではないと、所長から提示されたが……当の本人がしていたことであって示しが付かない。
していなくは無いが、研究員宿舎棟で生活していない私が言うしかないが……ここまで酷いとは……想像以上……だ。
研究所棟から宿舎棟を何回も往復している研究員達を見て、バースト室長はゲンナリしてきた。
「バースト室長、昔の資料はどうしますか?」
と、木箱一杯の資料を抱えた研究員に問われる。
「昔のとは?」
「現在の研究と比較するために資料を持ち出したのですが、新しく更新してもと思える資料です」
「一端は研究室に返してくれ! 後程処分するなり考えるが、君達も生活ごみとして資料は処分しては成らぬ。必ず研究所内で処分するので気を付けるように」
と、バーストの言葉に慌てて宿舎棟に一斉に戻って行く。
……オイオイ……これは僕の指導がいけないのか?……誰が手本になった?
ダートルからの確認要請書には驚いたが、ここまで野放しに成っていたこと、上位貴族籍である私にも責はある。
ダートルが代筆を指示して回ってきた書類に、戸惑いと嘲けさが有った。親子程も違う経験上浅い文官が、新鋭な研究所の者に何を提案をして我が長に対して指導されても、指摘を受ける訳が無いと…………思っていた……が。
蓋を開けるとダートルの危惧通り、情報漏洩の危機に面していた。
研究員達は学歴的にも頭脳的にも、研究追随に意欲的な人物の集まりである。貴族と平民の身分はあるが教育された内容も実力も研究所内では関係性無いと思っていた……
根本から情報漏洩の怖さを教える事に成るとは……早く帰ってこい!!!
気付いた本人が何とか! しろよ!
「ダートル所長の講義がある。君達の認識の甘さや間違いは今正さなければ危うい!」
と、室長 バーストは研究所棟と宿舎棟を行き来して目の前を通っている研究員達に、無差別に言い続けているのを、王宮から帰って来た研究所所長 ダートルは影から見ていてる。
「やれやれ、私の部屋の物は……どうするか……怖くてバーストには言えぬ……なぁ」




