教場
「まぁ、その話はメアリーが来た時に説明をしてくれ。メアリーはアイと何をするのか具体案が有るのなら聞きたい」
と、ダートル様が仰れば、
「お聞きではないのですか? 私はカリーナ様に具体案を提出していますよ。
勿論その案の中には、ダートル様とダニー様を巻き込むと提案済みですが……」
「「えっ?……聞いてない」よ」
と、ダートル様とダニー様が返事を為さる。
「大丈夫ですよ。お二人共、アイの提案はカリーナ様に却下されましたから」
と、ルカが顔を見合わせている伯父と甥に伝えた。
「…………」
「それは、カリーナ様と組むのを私が拒んだからでしょう? カリーナ様の誘導に合わせてメアリー様と組むことにしたのに、酷いです」
と、藍は巫女衣装の緋袴を両脇を縦に均しながら折り目を整える。
「その衣装はアイが用意したものかい?」
と、ダートル様は始めに見たものと違う事に気が付き問うと、
「これは私が縫った方ですね。
一着しか無かったので生地問屋で、私の知識と近いものを選んで縫いました」
と、藍は白衣と緋袴をほぼ原型通りに、縫製していた。
ただ白衣は丈をお尻までとして、袴もスカートに近く脇の開きは大して大きくないお尻が入ればいいだけで、深くしていない。
アレンジをしても本物を知らなければ、問題にもならない。
……それでも足袋と履き物はどうにも成らなくて、靴下とブーツに成っている。
コスプレみたいで恥ずかしいが、装飾を付けなければ堪えれるはず……袴にブーツとなれば巫女衣装ではなくハイカラさんだと、サイドアップの髪型にすれば、黒髪にサイドが赤色のどこかのコスプレイヤーみたいになっている。
良かった…………この世界で本当の巫女を知っている人が居なくて………………一人いるか。
「アイによく似合っているが、派手なのか地味なのか……装飾が無いが白と赤で派手さは有るし、腰のリボンは前が正解なのか?」
と、ダートル様とダニー様の評論会が始まった。
……お二人は本当によく似た感性で表情も……同じだ……血? ミトコンドリア? DNAも一緒なのかな? そうじゃないとお祖母ちゃまと、お祖父様に子が出来ないかぁ
サイドアップにした髪色は見えないが、これがお祖父様との繋がりの証拠でも有る。
「アイ、学習に持って行く物を確認しましょうか?」
と、考え事をしていた藍へルカの指摘が入る。
「あっ!、ダートル様の教材はその都度用意をするのですか?」
と、ルカは奥の棚に並んで入っている教材と、部屋の机の上に有る教材とを見比べて問う。
「奥のは使わないな、ルカも教育科だったから分かるだろうが、1つの科目に必須時間は300位かな平均して、それが復習科目を入れて10種類なんだが、僕はこの先も教師でいる訳じゃないから、復習科目を担う」
と、ダートル様の現状を説明された。
「成る程、それで基本の教科書しかないのですね」
「そう、だから何でも屋みたいだね。
学徒各々復習したいものが違うから、聞いてくる内容はそれぞれだし、僕も抜け落ちた知識は一緒に探したりしている。
学徒達は僕が臨時であること、研究所所長であることを理解しているから、やはり研究に興味のある子が多いし、用意何て出来ない。各々の質問や疑問を提示してもらってからの学習になるからね」
と、ダートル様の出されている教材の少なさに理解できる。
「ダートル先生、そちらは?」
と、教場に移動すればダートル様より、後に控えている藍に視線が来る。
「私の文官だ。アカデミーに関係が無いが、許可は取ってこの場にいるが、君達には関係が無い」
と、ダートル様は学習を始めるのに当たり、出席を取っている。
……全員……男の子。うぁ~あ男子校みたい。出席を取るのは同じなんだね。
あっ! ダニー様も席に着いてる。どんな席順になってるのかしら?
私の経験上で、オーソドックスなのは出席順あいうえお順だけど、4月からの誕生日順や視力順なんかもあったし……
「ねぇ、ルカ」
と、藍が小声で側にいるルカに問う。ルカは返事をせずに藍の前に行き、顔を近付けた。
驚いたのは藍だけでは無いが、藍を隠すつもりで前に出たのなら分かるが、いつもと違うと驚くから止めて欲しい。
「この席順は何か基準が有るの?」
と、そのままの状態で小声で藍が問うと、ルカは振り向き学徒の並びを見て、顔を戻してダートル様の視線も感じながら答えてくれた。
「身分制です、席順は決まってはいませんが」
……あっそ! ダートル様の気分やランダムなくじで決まったりしないんだ……私には思い付かない席順なのね。
ダニー様の心配気な表情で、此方を見ている視線は感じるけど、他の学徒達の視線も何か? こっちを向いてない? 向いてるよね?
「君達! 私の話を聞かなくてもいいのか?」
と、ダートル先生の大きくない声が、教場に響いた。
……ダートル様の声って、テノールより低くて姿勢よく立って出る声量は多くないのに、耳に美味しい。
「君達がこの時間を有効に使えるか、どうかは私の指導より君達次第なんだが、疎かにしてもいいのか」
と、強弱を付けない言葉の流れを、ダートル様に向けた。
「……では始めよう」
と、教壇のダートル先生が、名前を呼び出して学徒達が順番に席から離れてグループを作り出した。
……わぁあ! グループディスカッションに、塾形式みたいな。
席順は身分制なのに、今の状態は身分は関係が無い。同じテーマに同じ疑問に取り組むんだぁ。
「いつもこのやり方なの?」
と、藍が隣のルカに小声で問うと、ルカは信じられないような顔で見ている。
「いえ、私が知っている復習科目では、このような形式はしていませんでした」
と、ルカは普通の声で返してきた。
藍はメモに、グループディスカッションと塾形式と日本語で書き、ダートル様の仕様か?と付け足した。
様子を見ていると此方を気にしている学徒はいるが、各々のグループで発言は出ているようだ。
ダートル先生は、教壇から見て呼ばれるグループに赴き学徒達の用意をした資料を広げ、指導されている。
……復習て大事だよね。この時間に理解出来た事は忘れないで身に付く。気が付いた事気づかされたこと事を体験する。
「ルカ!」
と、ダートル先生の声が掛かった。
ルカが藍の事を気にしながら、ダートル先生の側に行くと、耳打ちされて戻って来る。
「ダートル先生がいらっしゃる所では、地理と歴史の復習をしているみたいだ。
アイが苦手としている科目だから、一緒に入るかと聞かれたが、どうする?」
と、ルカは聞いてきた。
……そう言えば、文官取得試験後にダートル様から地理だけが点数を取れなかったと注意されたんだった。
ダートル様、本当に教師をしてらっしゃるんだ……少し以外……
「不得意な科目ですね。お邪魔に成らないように入らせて頂きます」
と、藍が答えるとルカは、そのままダートル先生の元に連れていってくれる。
「やはり来たね。アイの知識欲は僕には好ましいと思えるよ。
今、この場はカーディナル王国と隣国の配置が年代事に記されている」
と、地図を広げたダートル先生は、三枚の地図を並べて学徒達と、藍も入れて説明してくれる。
流石に、デジタル化された地図を見慣れているせいか、元々方向感覚と昔ながらの縮尺度を無視した地図では頭に入ってこない。
……絵としても認識出来なくて、全然分からない……わたしって学校に提出する家庭訪問の地図を書きたくて毎年挑戦したけど、皆に笑われたんだった。父が描いた地図をコピーして張り付けていたけど、絵心が無いのか方向音痴なのか?
どうやら分からなくて唸っているのを、回りに気付かれたようだ。ダートル先生が肩を震わせて笑っているよ。
「なぁ、アイ。 君の国はこの地図で言ったらどの方向に有るんだい?」
と、ダートル先生が軽く聞いてきた。
……えっ? どの方向? 今見ている地図も分からないのに……そもそもここの磁場は一緒になの?
「ダートル先生、今の現状の地図を見ても全く分からないのに、方向が分かるわけが無いじゃないですか? 」
と、思わずいつも通りのダートル様に対する接し方で返してしまった。
……し、しまった……!
「そうだろうね、全く分からないって顔をしていたよ。試験の時にも思ったけど地理が全く読めないんだな」
と、ダートル先生の指摘にどう返事をすればいいのだろうか。




