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訪問者

あれから、ミカエル様とルカとわたしが何処で寝るかと、揉めにもめて結局わたしは、続き部屋のベットで寝ることになった。


客室のベットで寝るように言われたが、そうなると控えのベットがミカエル様で、客室のソファーがルカになる。わたしは構わないと言ったけど、ルカが続き部屋の椅子で寝ると言うので、ミカエル様に客室のベットにしてもらい、ソファーはルカ、続き部屋のベットがわたしとなるまでが、時間がかかった。


……今さら同室に誰がいようと構わないが……構うか。ミカエル様とルカは構わないが、散々倒れたわたしを見られている。

二人共わたしの寝顔も見慣れたものだろうに。


「セイ様?」


『どうした?アイ』

と、枕元の携帯から返事が来る。

デニム風の生地で、昔懐かしいポシェットを作った。小物と携帯を入れて常に持ち運べるようにした。

ダーニーズウッド領主邸を出発直前に思い付き作った物だ。お館の中や敷地内を移動する位なら少々何処かに置き忘れても大丈夫だったろうけど、これからは肌身離さず持ち歩かないと、わたしの命に関わる。

ドレスの隠しに入れていては、セイ様の声が届かない。ポシェットの紐さえ調節出来れば、小物と持ち歩いていても可笑しくないと思った。


「お祖父様と離れてしまいますが、私は大丈夫なんですね」

と、安心のために聞いてしまう。


『アイ、ふあんかもしれぬが、アオイのきはアイにむいておる。ほそいせんだが、はなれたところからも、アイにきをむけているものも、おるの』

と、セイ様は愛嬌のある顔を近付けて言ってくる。


「加護を頂いても、私の身体は健康にならないのでしょうか?」


『もともとアイのからだは、くうをのむのもたいへんだったであろう? いそげばからたがもたぬぞ。ならすというのか?』

と、セイ様は答えてくれる。


「そうですね。今日の馬車酔いも身体が慣れてないからですもの。徐々に慣らしていきます」

と、藍が言えば、


『アイは、せっかちだといったであろう。おもいたっても、ひといきつくことじゃ』

と、何回めか注意をされる。


……わたしってせっかちなんだ。此で普通の身体がだったら周りに迷惑かけているタイプ? 動けなくても注意されるって……




朝一、シアン国王陛下はミカエル様とルカに、第5団隊の隊員達に見送られて関所を通って王都に入っていった。

わたしは、まだ注目を浴びる訳にはいかず部屋でお留守番だ。


と、言うのもダーニーズウッド領主邸に王都からシアン国王陛下を迎えに来ていた侍従と騎士は、ダーニーズウッド辺境伯領地内の貴族出で、カール様やロビン様の推薦で王宮勤めになっている人達で構成されていた。


……道理でチラチラ視線は感じても、何も言ってこないはずである。オマケに国王陛下にお口チャックとされたら、尚更ですね…………


そろそろわたしも、出る用意をしないと王都のダーニーズウッド別邸から迎えに来るらしい。昨晩使った続き部屋の片付けをしないと。


また、馬車移動になると分かっているから、少しラフだが普段着にしておく。携帯と手巾を入れたポシェットに紐の長さを調整して肩に掛け、部屋を整えていると客室から微かに物音がした。


……あれ? ミカエル様かルカが戻ってきたの?


でも客室にわたしが居ないとなったら二人なら、続き部屋を覗くよね…………


もしかして、シアン国王陛下を狙った襲撃犯かも……だって予定ではダーニーズウッド邸の迎えが来たら別々に出発するはずだったが、王宮から一刻も速く帰都願いがあったらしく、シアン国王陛下は渋々帰都されると、朝一にシアン国王陛下付きの侍従さんが、部屋に知らせてくれた。


……襲撃犯が、予定と違って何か探りに来たとしたら、こっちにも来る? う? わたしはどうしょうか?

でも、まさかね……何もしてないのに襲撃なんてあるかなぁ?……ここ警護団隊舎だしね。隊員さんが沢山いてるとこに? 無いなーー。で……も……念のため。


そっーーと、扉に近付き聞き耳をたてようと顔を近付けてたとこで内向きに開く。


……えっ? おっおっおっおっおーーっ!


身体の左側に体重が片寄っていたが、そのまま扉が内側に開き切れば、わたしは壁と扉に挟まれて誰が開けたか全く見えない。


声を出そうと思ったが、相手が誰であろうとびっくりするだろう。そんな心臓に悪いことしたくないし、閉まるのを待つことにした。


……誰だろう? ……ルカじゃない。ルカなら一言ある……ミカエル様でもない。ミカエル様は音を立てずに動けない人だ。必ず何かしらの音をたてる。昨日も覚醒間近といえミカエル様の動く気配と小さな何かしらの音で、目が覚めたのだから。


……えっ? ヤバイ? ミカエル様とルカ以外はやっぱりヤバイ! 絶対! 二人じゃない!


急に二人じゃないないと思ったらドキドキしてきた! これで掃除婦のおばさんだったら、わたし怒ってもいいよね!!


……楽観的な考えはやめよう……誰であっても怪しい。音を立てない。声を掛けない。気配を探ってみても一人だ。扉を開けたけど中には入ってこなかった。テーブルの書類を探ってる? 紙擦れの僅かな音がする。絨毯で足音まではしないが、特殊な靴底と? 生地がすれる? シーツ?


コン! コン! コン!

「アイ! 迎えに来たよ。一緒に馬車に乗ろう!」

と、聞き覚えのある声が、客室のドア前から聞こえてきた。


……えっ? ケビン様?


「待ってください。ケビン様」

と、ルカの声がする。


「ケビン! 何でお前がここに来ているんだ!」

と、ミカエル様の声もドア前からする。


……今、わたしが出ると鉢合わせだよね…………誰だか分からないけど……


カッチャッ!

……空気が……動いた。ベランダの窓が開いたんだ。

カッチャッ!

……えっ? 何! やっぱりヤバかったんだ………


侵入者だ……何で? 慌てずに出ていけるの?……


「あれ? 異母兄さん、部屋にアイが居ないよ?」

と、ケビン様が言えば、


「えっ? アイが居ない? だと」

と、ミカエル様も部屋に入ってきた。


大きく呼吸をすれば、緊張して呼吸を浅くしていたみたいだ。掌にも汗が滲んでいる。ゆっくり壁と扉の間から身体を出して、顔から客室に向かって出していく。


「アッ……ムゥギュッ!」

と、ケビン様の口をルカが手で塞ぐ。

わたしが口もとを手にかざして出てきたからだ。ミカエル様は驚いて目を見開いているが、静かに客室のドアを閉めてくれた。


わたしは、さっき開いただろうベランダ側に行って鍵を見る。開いたままだが手摺には靴跡が残っていた。

流石に今外を覗きたくはないが、急に震えが来たよ。


「アイ、どうした?」

と、ルカが側に来て聞いてくる。


「はぁーーーーーーっ! ……誰だか分からないけど……侵入者がさっきまでいた」

と、言ったら立ってられず、足から力が抜けた。

ルカが側で支えてくれたから、そのまま座り込むことはなかったが、ソファーに行くまでに嘘みたいに膝が笑って歩けない。

頭では、冷静にしていたつもりだったが、実際には手足が冷えて冷たくなっている。


「ルカ!」

と、ミカエル様が声を掛けた。


「ミカエル様、どうしますか?」

と、わたしを抱えたままのルカが問う。


「そんなの、隊長を呼んでそこから出た侵入者を探さないと!」

と、ケビン様がミカエル様に詰め寄る。


「ケビン様! 今騒ぎを起こせば、アイがここにいたことが知れます」

と、ルカがケビン様を諌める。


「ルカ! でもこのままにすることは可笑しいだろう!」

と、ケビン様が息巻く。


「ケビン! お前は黙っていろ。ルカ、アイをソファーに座らせてくれ。

悪いが、ザエーカルとウルーナミを呼んで来てくれるか」

と、ミカエル様が言う。

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