来客 4
昼食をお客様と一緒に取ることになった。ガルソール様の目的が、わたしを知ることであるのなら拒否するわけにはいかない。
女主人であるカリーナ様を中心に、ガルソール様とバースト様に対して、ダートル様わたしを挟んでメアリー様と食卓を囲む。
「ダーニーズウッド辺境伯夫人、此度のジャスパード国からセントール王子が来賓されます。メアリー嬢は来賓の晩餐会には参加頂けるのですか?」
と、ガルソール様はカリーナ様に話題の1つとして問う。
「はい。ロビン様のお考えでは、長男ミカエルと長女メアリーには、隣国ジャスパード国に情報として知られております。
国境境のダーニーズウッド家として、ダニエル王太子殿下をお支えするのは道義です」
と、カリーナ様はお答えする。
「へぇー、ミカエルは晩餐会に出るんだ。何かと理由を付けて参加していなかったのに」
と、バースト様は甥のミカエル様に会えていない現状を言ってくる。
「お異母兄様は、私の側にいてくれます。どんなにお忙しくされていても、私が参加する時には一緒に参加されますよ」
と、メアリー様はミカエル様の事を庇う。
「僕は参加してないから分からないが、ミカエルに縁談は来てないのか?」
と、ダートル様はメアリー様に問う。
「ダートル伯父様、お異母兄様は伯父様方を見倣ってご令嬢方のお誘いを聞こえないふりをなさるのです。私の側にいるのも異母妹が心配だからとお断りする出しにされるのですよ」
と、メアリー様はダートル様とバースト様に反撃している。
「それはどう言うことなの? メアリー様」
と、藍は訳が分からずに問うと。
「アイは知らなかったのか? 僕とバーストは恋人同士だから相手はいないんだよ」
「うえっぐ!! ゴッボッゴッボ……な、な、な、何を! 言っている!! んなわけあるか!!」
と、バースト様は思い切り噎せて否定した。
「そんな噂もありましたけどね……私みたい諦めが悪ければ変わっていた事も有ったのでは?」
と、カリーナ様は何か知ってそうに呟く。
「はて、そんな噂が有ったのか?」
と、ガルソール様は初耳のようで驚いて答えている。
「研究所の所長室長が仲が良いのは、別に悪いことではありませんから、そのお話しは置いといてお義兄様は、今日のアイの診察で許可が出たらどの様になさるのですか?
メアリーを始めダニーもケビンもアカデミー内では協力すると申しておりましたよ」
と、義妹 カリーナ様はダートル義兄に問う。
「僕ではアイの体調管理は出来ないだろう。ルカに頼ることに成るけれど、ルカでもこの前の事は対処出来ずにいた。
シアン陛下の思惑に従うのなら、アカデミーからアイの存在を浸透させ、研究所にも臨時の文官見習いとして付いてもらう。
各々、その場の問題は出てくるだろうが、問題の種類は違うだろう。
それをアイも体験するなり対処を学びの場になれば、王宮に上がったとしても後手に成らずにすむだろう」
と、食事を終えたダートル様は、女主人に答える。
「そのアイの診察は、私も付いて良いのか?」
と、バースト様が聞いてくる。
「別に私は構いませんが、バースト様は研究所の室長をされているのでしたら、私の身体の事は知っておかれる方が良いのでは?」
と、藍は当然といった態度で答える。
「アイは自分の身体の情報が周りに漏れてもよいのか?」
と、侍従長らしくガルソール様は、驚愕顔をされて聞いてくる。
「誰でも良いのではなく、この場にいらっしゃるのはシアン国王陛下付侍従長で有るガルソール様、ロビン · ダーニーズウッド辺境伯の兄お二人ですよね」
と、藍は答えた。
「そうですね。アイと関わって頂けるのなら、覚悟は必要ですね」
と、カリーナ様もニッコリと認める。
「覚悟? 覚悟など必要無いだろう?」
と、バースト様が仰れば、
「そう思うだろうな。私もそうだったよ」
と、ダートル様のしたり顔で言ってくる。
昼食後は、部屋で休憩するという藍にガルソール様は付き添われた。
バースト様はダートル様とメアリー様にミカエル様の最近の話をねだられて談話室へと各々に向かった。
ガルソール様は、アイ自身の質問をされること無くダーニーズウッド家での生活を、尋ねられた。そこにはシアン陛下とカール様とのやり取りが多く出ることに、ガルソール様は楽しげに聞いておられた。
「ガルソール様はカール様とシアン陛下にお仕えされた期間が同じなのですか?」
と、藍の質問に、
「私が代替りでお仕えした時は、カール殿は次期領主と決まり側近としては長いが、共に隣国に廻ることは無くなっていました。
シアン陛下のダーニーズウッド家の逗留には私は付くとこはなく、王宮での関わりに成りますね」
と、ガルソール様は寂しそうにお答えになる。
「それでは、ガルソール様はシアン陛下の眼中に長い間とどまっておられのですね。カール様は一年の内一月有るか無いかの時ですもの。過ごされた時間は貴族の方かだの中でも、一番長いでしょう?」
「…………それは、そうなるな」
と、ガルソール様は熟思して答えられる。
ルクールさんから、医師会館からティベリ先生方が診察にいらしたと連絡があった。
程なくカリーナ様がティベリ医師とアルバン医師が、もう1人の白衣の青年を連れて部屋に入室してきたが、三人の医師が揃って固まったのは藍の側で談笑しているガルソール様が目に止まったからだ。
「ガルソール様がどうして、こちらにいらっしゃるのですか?」
と、アルバン医師が一番に驚き呟いている。
「ガルソール様、私の主治医をしてくださるティベリ医師とアルバン医師です」
と、藍が紹介に説明すれば後からダートル様とバースト様にメアリー様が遅れて入室してくる。藍の部屋は扉の前を大勢の人が群がる様にカリーナ様は、苦笑されてルクールさんに指示されていた。
「アイ、診察に来たのだが急病でないので、先ず挨拶をさせてくれ」
と、アルバン医師は藍に断ってから、ガルソール様の前に行き、ティベリ医師と青年とを連れて挨拶をしている。
メアリー様が、アルバン医師がユールチードゲ侯爵領の出身伯爵であることを、教えてくれる。
それならば、バースト様はと言えば、ティベリ医師が嫌々そうに同じく代表に挨拶をして他の医師を紹介している。
なんとも大層であるけれど、此が貴族社会の地位優勢であるのなら、紹介や挨拶が終わるまで、藍はメアリー様と生けた花を見ながら待っていた。
メアリー様がターチちゃんとのことを聞いてきたので、朝の散歩に付き合ってもらっていること、ルカが小さい頃のターチちゃんを子守りをしていたことを話していると、視線を感じて振り向く。
ティベリ医師とアルバン医師に連れられて、ユールチードゲ侯爵殿下とボドール辺境伯に、ダーニーズウッド辺境伯と辺境伯夫人に挨拶の合間にこちらに凝視する青年も医師らしい。
……ディービス先生が仰っていた、娘さんの婿候補の医師かなぁ?
凄くこっちに視線を感じるけど? ……もしかしてメアリー様に一目惚れ!!
あやー? ディービス先生の娘さんを知らないけど、メアリー様に目を付けるとは良い審美眼だわ。
ルカが診察が出来るようにベットの周りを整え終えて呼びに来る。
ルカに誘導されて三人の医師の元に行けば、ティベリ医師が、
「アイ、ディービスから聞いているのよね。私とアルバンが、アイの急変に間に合いそうに無い時には、医師会館でこのダミアンを指名するのよ」
「タツミ アイです。ダミアン先生よろしくお願いします」
と、藍が挨拶をした。
「…………ダミアンです」
と、覇気無く挨拶をされて、拒否感も含む声色に藍が戸惑っていると、ダミアン医師はボソッと呟いた。
「可笑しいと思った……急に死にかけるなんて、他の先生方は知らないんだ……」
と、藍を睨み付けてダミアン医師は、踵を返して帰ろうとする。
急な青年医師の行動に、ルカが素早く動く。
「ダミアン先生! どうなさるつもりですか?」
と、ルカのダミアン医師の前を遮る位置に、ダミアン医師は一旦怯んだ後、
「ティベリ先生、僕は命を粗末にするような患者には、指名されたくは有りません」
と、ダミアン医師はハッキリと言って出ていこうとした。




