確認
「ダミアン先生、ディービス先生がいらっしゃいましたよ」
と、医師会館事務職のノムチが、待機当番のダミアン医師に声をかける。
「えっ? もう?」
と、白衣を着ながら慌てて支度をしていると、
「あぁ~~ぁ、ダミアン先生も玉の輿に乗っかりますか!」
と、ノムチが言ってくる。
「玉の輿って?」
「ダーニーズウッド辺境伯領土のノーマン医院と言えば、爵位こそ在りませんが医師をしている先生方から一目置かれているではありませんか。
そこの現医院長ディービス先生が、ダミアン先生を引き抜きに来ているのですよ。た、ま、の、こ、し以外無いですよ!」
と、ノムチに力説される。
「ノムチ、それは違うから誤解だからあまり大きな声で言わないで」
「えっ? 違うのですか?」
「そうだよ。ディービス先生にはご自分の診ている患者が王都にいる間主治医のティベリ先生が都合が付かない時に頼むと言われているだけ。
ほら、ティベリ先生はアカデミーも請負っておられるから」
と、ダミアン医師は呼びに来たノムチと応接室に向かいながら話をする。
「では、この前の急患がそうでしょうね。ダーニーズウッド家の方がマキルバ先生を訪ねて来られましたから」
「……マキルバ先生は多分此方にはお戻りにならないよ。静養と言っておられたけど……」
「そうですね……だから私はダミアン先生をお薦めしときました!」
と、ノムチはニッコリとダミアン医師に向かって言う。
「へ~~ぇ、そうなんだ……」
「お待たせ致しました。ディービス先生」
と、医師会館の応接室のドアを開けると、窓から外を眺めている男性が2人立っていた。
「おはよう、ダミアン先生時間を作ってくれてありがとう」
と、ディービス医師は挨拶をしてくれた。そしてもう一人の男性に声を掛けて紹介の場としてくれる。
「おはようございます、ダミアン先生。私はダーニーズウッド辺境伯領主家で使用人をしておりますルカです」
と、銀髪の青年が挨拶してくれた。
「…………また、綺麗な男性ですね」
と、つい口に出してしまった。
「……ダミアン、嫌味かい。ルカといいダミアン君といい2人ともキラキラ銀髪で系統は少し違うが、おじさんは拗ねそうだよ」
と、ディービス医師は、ため息混じりに呟く。
「す、す、すみません! ディービス先生。綺麗と言ったのは容姿もそうですが、均整の取れた体格の方です。
使用人だと仰いましたが、ダーニーズウッド辺境伯領土の方だからでしょうか? 細身でも鍛えている感がしたので……」
と、慌ててたダミアン医師は言ってくる。
「まぁ、そうだね。ダミアン君が感じたことは正解に近いかなぁ。ダーニーズウッド家に近い程鍛えている人は多いよね。王都や他の領地に比べるとね」
と、ディービス医師も認める。
「ところでこの前の話なんだが……」
と、ディービス医師とルカは応接室のソファーを勧められて腰を掛ける。
「あ! はい。ティベリ先生とアルバン先生とは、会えていないので……詳しい話は出来ていません」
と、ダミアン医師は申し訳なさそうに答えた。
「それはいいんだよ。元々二人が忙しい事は知っていたけど、無理を言ったのは僕のほうだから、それにダミアン君には僕から説明はするつもりだったから」
と、ディービス医師は、ルカに視線を送り言ってくる。
「担当患者さんは普段はダーニーズウッド領で生活をしているのですか?」
「そうだったのが、急に王都で生活をすることになったんだ。僕と父 グローが初診からの診療記録がこれで、罹患歴は本人申告でこれになる。
この記録はティベリとアルバンとダミアン君しか見せない」
と、ディービス医師は三冊の診療記録をダミアン医師の前に差し出す。
「これは……その患者さんの長期診療記録ですか? 拝見しますね……」
と、ダミアン医師は始めの一冊を手に取り日付を見る。
手に取った記録と、二冊目と三冊目を見比べて中の記録を確かめて、又見比べて顔を上げた。
「ディービス先生? 最近の記録しかありませんが? これはノーマン医院の最近の記録ですか?」
と、ダミアン医師は戸惑ってディービス医師に問う。
「僕が最近纏めた診療記録だよ。父と僕は各々に記録したものを纏めた。患者個人の記録になる」
「個人? 一人分? ですか? 日付は最近ですよね? 診察診療された日付ではないのですか?」
「診察診療した日付で、纏めた。処置も投薬も出来るだけ詳細にしたつもりだが、名前や年齢に特徴は記載していない」
と、ディービス医師は答える。
「それは……どうしてでしょう? 医師が目を通せば分かることです」
「君もこれを診て一人分の記録とは思わなかっただろう」
「そうですね。ディービス先生に言われないと、日報記録と思うでしょうね」
「ティベリとアルバンは手を尽くして僕を入れた三人で診ていたが、僕はダーニーズウッド領地の医師だ。患者は気になるが帰らなくては……」
と、ディービス医師は説明する。
「僕に指名が来たのは、この前の話が切っ掛けですか?」
「そうだよ。ダミアン君にノーマン医院を継いで欲しいというのは僕の本心だ。
だけどね。この患者はティベリが気を付けて診てくれたとしても急変するんだ……多分」
「えっ? と? それをティベリ先生とアルバン先生は認めているのですか?」
「認めているどころか、絶対にダミアン君を引き込めと言われたよ。だから証人としてルカにも来てもらったんだ」
と、ディービス医師はルカに視線を向ける。
「信じてもらえないかも知れませんが、本人は凄く身体を気に掛けて気を付けて生活をしているのです……少し目を離し時には倒れていることが多くて」
と、ルカは答えた。
「……………………」
「ダミアン君が今考えていることは分かるよ。ティベリとアルバンもそう疑っていたと謝っていたからね。
だけど……自画自賛ではないけれど、父 グローとティベリにアルバンに僕が気に掛ける患者だよ。患者に優劣を付けるわけにはいかないけれど、健康にしてあげたいと強く願ってしまう患者ではあるんだ」
と、ディービス医師は珍しく誇示的に伝えている。
「それは、失礼ですが……ダーニーズウッド家の……お力が……あるからで……」
と、ダミアン医師は最後まで言葉にせずに口ごもる。
「うん、そうだよね。確かに……ここまでの処置や治療が出来たのは治療費を払えるだけの後ろ楯があるからで、我が子でもなければこの短い期間でそこまでの治療は……普通は出来ないよね」
と、ディービス医師も頭を抱えて認める。
「…………短い期間で?……………あの~~ぅ、この下に書いてあるの診療報酬の計算ですか?」
「………………そうだ……よ。一律だ。ここと同じだから医療に上下は無いようにしている。診察治療は一律だけど、往診指名薬品の品質の差は出るよね」
と、診療報酬明細の話をする。
「ディービス先生、良心的ですね……流石です」
と、ダミアン医師は記録を捲りながら目を通していく。
「そうでも無いよ。内は薬品は自分の所で調剤するからね。薬草も育てているし身内に薬卸もいるからで……」
「いえ、分かりました。僕でお役に立つなら協力します」
と、ダミアン医師は答える。
「すみません、ダミアン先生に失礼な確認をしてもよろしいですか?」
と、ルカは間に入って聞いてくる。
「失礼な確認ですか? 僕は平民ですよ医師ではありますが、上位お貴族様の情報を漏らすことは命に関わることですから厳守しますよ」
と、少し心外そうに答える。
「いえ、医師の守秘義務は理解しているつもりです。職務的な事ではなくて、精神的な制御はお強いですかとお聞きしたかったのです」
「あ、あ、あ、ルカ! 聞き方!」
「どういう意味ですか?」
と、ダミアン医師は不興顔で問う。
「先程、私に対して綺麗と仰いました。容姿で対応は変わるのかとお聞きしたかったのです」
と、ルカは言ってくる。
「ルカ! ルカの言いたいことは分かるが、それはダミアン君が彼女と会ってない段階では、伝わらないよ」
と、ディービス医師は取り成している。
「あぁ~ぁ! 成る程、僕が若いから美醜で態度を変えるかと聞きたいのですね。
上位お貴族様の近くにおられるのでしたら、見目麗しいか、病気でお窶れになっておられるか、患者に対して変えることはありません」
と、ダミアン医師は答えた。
「そうですか。失礼な事をお聞きて申し訳ございませんでした。安心して診察に来てもらえそうで良かったです」
と、ルカは何故か不敵な顔で答える。
「…………あーーぁ! ダミアン君。君は! 不能薬使ったことある?」
「はぁ~ぁ!!!!っ!」
奇特な読者の皆さんへ
いつも見捨てず覗き見を(読み)をして頂き、ありがとうございます。
虚弱体質巫女ですが~は、まだまだ続ける予定ですが、思考中に違うお話も思い浮かぶ事があり、忘れない内にお話として上げていきたいた思います。
お時間の合間に、覗き見をしてもらえば嬉しいです。
何事も初心者ですので、試行錯誤しておりますが、緒篠のお話に“いいね”付けて頂き、密かに喜んでおります。( *´艸`)




