情報 1
「アイを囮にする気ですか?」
と、ミカエル様は言葉にしたが、
「何をバカな事を、アイを囮などをシアン陛下がお考えになるはずがないでしょう?」
と、メリアーナ様はミカエル様を嗜める。
「ミカエル、母上のいう通りでアイを危険から護りたい陛下が、御自身だけでは無理だと判断されてダーニーズウッド家を巻き込んだのだ。
実際に私は接見の場で陛下に言われたが、まだ意味が分かっておらぬからそのままお受けした……が…………それも陛下の計算の上であろう。
謝罪されて戸惑っておるところに巻き込むと宣言されたのだから……」
と、ロビン様は帰都直ぐの陛下との面会を打ち明ける。
「青い石を身に付ける。それだけで色々な憶測や勘繰りが各々に詮索すれば、アイの事より我がダーニーズウッド家の事まで広がり、アイの興味の薄らぐぎを狙っておられる」
と、カール様は事無げに言う。
「ミカエル、シアン陛下はアイを囮にするのではなくダーニーズウッド家を囮より、目眩ましになさるのよ」
と、メリアーナ様は仰った。
「えっ?」
「それを提案されたのですよね、母上から」
と、ロビン様は母親に問う。
「だが、陛下は断られた。ダーニーズウッド家を巻き込むつもりは無いと、あくまで御自身でなさるつもりのようなので、駄目押しに私から原石を提供したのだ。
此方はあばよくばの魂胆もあるのを看過されてのこと」
と、カール様は妻 メリアーナ様に視線を向けて仰った。
「はぁ~ぁ。母上、そんなにアイが欲しいのですか?」
「えっ?」
「あら! ロビンは欲しくはないの? 陛下はアイの為にダーニーズウッド家を出しに使うのよ。その過程でアイが内の子になれば陛下は何も仰りはしないわ」
「ま、ま、ま、待って下さい! お祖母様は打算有で協力するのですか? アイを手に入れるために?」
と、慌ててミカエル様は聞いてくる。
「当たり前でしょう。私の指輪の石を差し出せばカール様は困るのよ。カール様を兄の様に慕っている陛下は断るでしょう? 他の意味が有ることは陛下も御存知なのだから、看過されたのよ」
と、メリアーナ様はミカエル様の問いに答える。
「問題はアイが青い石を付けたとしても、あれだけの容姿だ目眩ましもならぬかも知れぬ」
と、カール様が付け加える。
「実は…………シアン陛下からアイと婚約をしないかと打診されましたが、その場で陛下は取り下げられました。
それはアイの意思を尊重されてのことだと思ったのですが、違うのでしょうか?」
「そうね。手っ取り早くミカエルがアイに好意を寄せられ結婚すれば話は早いのだけど……」
「アイはその気は無いですよ。残念では有りますが……」
と、ミカエル様は素直に心情を吐露される。
「私の見立では、アイの婚約者の話は作り事だと思っているのだけど」
と、メリアーナ様は答えた。
「婚約者はいないと?」
と、カール様も問う。
「いないと言うより煩わしい話に感じたかしら。
前にアイから、ここでの成人の話になったことがあってね。アイの国とここでの成人の基準が違うと悩んでいたから、恋愛や結婚を考えたことが無いのではないかしら」
と、メリアーナ様は仰る。
「尚更厄介だ。アイが真剣に誰かを想っているのなら、アイの意思に沿ってやりたいがアイに意中がおらぬのなら拒否感は薄れる」
と、ロビン様は思案される。
「アイは誰かを想ってはいますよ。自分の国に帰るというのは揺らいでいません。
祖父であるシアン陛下と取引までして帰ることを目的としているように感じます」
と、ミカエル様はこの中で一番近くにいての感想を言う。
「ロビン! 先程ある事情でアイには見せておらぬと言ったが、ここまでアイの為に加工されたペンダントを渡さない訳にはいかぬぞ」
と、カール様が仰る。
「あぁ~ぁ、それはそうですが、父上と母上の思惑を確認したかった事に違いはありませんが…………実は……アイが生死を彷徨いました!」
「…………!」
「…………何を言っておるのだ? 馬車酔いで寝込んだとは連絡があったが、まだ? 馬車酔いが治らぬのか?」
「えっ?」
「いえ、確かに馬車酔いも酷くは有りましたが、元気に回復をしたのです……しかし、倒れました。私の目の前で」
と、ロビン様は答えた。
「ロビンとミカエルが帰領したのは、ジャスパード国の王子の件でなら、アイは大丈夫なんだな?」
と、カール様が確認を取る。
「今までは高熱を出したり、貧血や疲れなどで発熱だと報告を受けていましたが、今回は発熱処か体温を感じられなくなるほど冷たくなっていくアイを抱えて、カリーナと二人で医師が来るのを待っていました。
あれは2度と体験したく有りません」
と、ロビン様は告げた。
「で、大丈夫なんだな?」
「はい、医師会館から二人の医師に往診してもらい何とか持ちこたえたそうです。
後から王都に滞在中のディービスも駆けつけてくれたので」
と、ミカエル様も説明すると、
「グローからの紹介があったのでは?」
と、メリアーナ様は藍が頼んでいたことを思い出す。
「グローからの紹介の医師は不在でした。ディービスが信頼している医師でしたので、任せています」
と、ロビン様は答えた。
「アイ様には、ルカが付いておりましたのに」
と、思わずニックが言葉に出す。
「ニック、ルカも自分を責めておったが、アイが意図して誤魔化せば分からぬこともある。治療後が大変であってな、医師の一人が女医であったのでカリーナとメアリーがアイの看護を教えを乞いながらしてくれておる」
と、ロビン様は仰る。
「メアリーがですが? 一口に看護といってもあの娘が出来ているのかしら?」
「初めはメアリーも引いていましたが、ティベリ女史に鍛えられて率先してアイに付き添っております。安心して下さい」
と、ロビン様は娘の成長を伝える。
「ティベリ女史? ティベリ?……」
と、カール様が考えながら呟くと、
「ベルーナルト伯爵令嬢様ではないですか? 確か……御結婚されるからもう、此方には来れないと仰って御挨拶なさいましたが?」
と、執事 ニックは答える。
「ティベリ · ベルーナルト伯爵令嬢か!……ぬぅ、だが何故だ?」
と、カール様とメリアーナ様は首を傾げる。
「ディービスの同期で信頼出来る医師と紹介された一人です」
と、ミカエル様が答える。
カール様とメリアーナ様はロビン様へ視線を向ける。
「ミカエルには話しましたよ。私は殆ど面識は有りませんでしたが、兄上の方が交流はあるみたいですから」
と、ロビン様は答えた。
「ではベルーナルト伯爵令嬢が……ティベリ医師がアイを診てくれているのだな」
と、カール様は確認を取ると、ロビン様とミカエル様は頷きで返事にされた。
「ところでアートムが動いているのは斥候の動きのせいだと仰いましたが、青い石の事ですか?」
「いや、ジャスパード国の王子の件らしい。
青い石の探りは尻尾を出さないが、隣国からの潜入は王子に関してだと推測される。
それが内政に関することなのか? カーディナル王国の事なのかは定かでは無い」
と、カール様は仰る。
「アートムに情報が寄せられたのはアギルの弟からです」
と、ニックが付け加える。
「ミカエルからの報告書にブーゲンビート辺境伯領のロカ商会を入領禁止と詳細が記されていたが、その中にアギルをアートムの管理にしたとあったが?」
と、ロビン様はニックに問う。
「はい、ミカエル様の報告書と重ねた事ですが、アギルを陥れた者達を良しとしないアギルの弟が、その者達を監理し宿屋を営んでいる義家族を使い街の情報などをアギルにあげているのです。
アギルの両親も協力的にアートムに情報をあげているようです」
と、アートムの上司であるニックは答える。
「成る程、街の情報がいち速く届くことは助かるが、無理のないように止めてくれ」
と、ロビン様はダーニーズウッド家の執事に伝える。
「それで、王宮からの情報は?」
「はい、宰相殿下からの情報では現王のカルート様と王妃のモネ様の間に問題が有るそうです。モネ様の3人のお子様と、カルート様の愛妾とのお子様がお一人の内政問題が勃発していると情報を得られました。
今回のセントール王子の来賓はカーディナル王国の助力もしくは妃候補の選抜が目的ではないかと、四大側近殿下達の推測です」
と、ロビン様は前領主で隣国ジャスパード国をよく知る父 カールに告げる。
「確か、王族には入っていない男子がお一人いたな…………」




