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続・虚弱体質巫女ですが 異世界を生き抜いてみせます ~何もないと諦めないでマイナスからゼロになるまで~  作者: 緖篠 みよ


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残香

「カリーナ様、メアリー様。もう大丈夫ですから泣かないで……欲しいな…………」

と、藍の側でダーニーズウッド辺境伯夫人と令嬢はベットの脇で藍に抱き付いて泣いているのだ。


藍の意識が戻ったのは、倒れた日から4日後の事だった。ティベリ医師が側にいた時にハッキリと意識が戻った。それまでは日に何回かの覚醒擬きはあるが、うわ言を言っては意識が無いので、周りに付いている者は(あつい)(寒い)(痛い)の外国語にほんごが分かるようになった。


「もう、アイは……やっと…………ちゃんと話せる様になった……」

「アイが居なくなったら、キャラメルはどうなるのか心配したわよ」

と、思い思い言ってくる。


「メアリー様? ちゃんと話せるとは?」

と、まだ起き上がれない藍が、顔をメアリー様に向けて聞く。


「だって、アイはうなされて何か言って来るけど分からなくて……ルカが(寒い)は知っていたから……多分熱が上がった時の(あつい)は、熱いのだろうと思って……」

と、17歳のメアリー様は目の周りの肌が荒れている。

涙で荒れたのか、手巾で荒れたのか人が生死を彷徨う様を見たことが無いであろう令嬢が、言葉の意味が分からなかった説明をしてくる。


「良かったわ。ディービスはもう意識が戻れば元気になると言っていたし、皆心配したのよ!」

と、右側で藍の手を持っているカリーナ様の手は指先まで冷たく小刻みに震えている。その感触は羽で触れる様な柔らかい。


「ご心配をお掛けしました。ティベリ先生が教えてくれました。私のお世話をしてくれたのでしょう。慣れないことをさせてご免なさい」

と、藍は申し訳なく謝罪の言葉が出る。


……ダーニーズウッド家では、看護師のロッティナさんが意識の無い時は付きっきりで看護介護をしてくれていたけど、まさかカリーナ様とメアリー様が交代で付いてくれるとは思わなかった。


「それにしても看護婦のロッティナやディービスが、往診してくれる有り難さが分かったわ」

と、カリーナ様が言ってくる。


「カリーナ様、メアリー様もお休み下さい。後は自分で出来ますから……出来ないことはルカに頼みますから……」

と、藍はルカを探すがいない。


「ルカなら何か料理長に頼みに行ったわよ」

と、メアリー様が教えてくれる。


「アイ、ルカに頼むのはどこまでさせるの?」

と、カリーナ様が聞いてくる。


「どこまで?」


「そうよ、身動きひとつ出来なかったのよ。直ぐに動けないわよ」

と、メアリー様も言ってくる。


「そうですね。他の方なら直ぐに動けないでしょうが、私は慣れていますから動けないなりに出来るのですよ」

と、藍は昨日完全に覚醒した時の状態を思い出す。

両足首をクロスして力を入れてみる。筋力は落ちているが力は入る。両ひじをマットに押し付けて肩が上がるか、上がるなら背中を浮かせるか。全身が硬く軋みは残っているが意識の持ちようで動かせる。


……動かせるようになると困ることがあるのよね……アウターマッスルよりインナーマッスルがどうだろう? 前は直ぐに動き出したけど……これだけいい匂いがするのに動く気配なしだね……


「そろそろ診察をしてもいいかい」

と、アルバン医師が声を掛けてきた。


……昨日は女医のティベリ医師が診てくれたが、説明どおりにもう一人の医師アルバン先生と、ディービス先生が交代で診てくれていたようだ。別邸には夜はディービス先生がルカと付いてくれる。日中はティベリ医師とアルバン医師が交代で付いてくれていたようだ。

昨日はティベリ医師にあれこれ聞かれたけど、口腔内は渇いて上手く喋れないし、まだ頭が回っていなかったみたい。

朝イチにディービス先生とルカの安心した顔が見れたのが良かったよ。


「アイの意識が定着したようだね。ディービスと交代した時より顔色も良くなったし、診察をするから場所を開けて貰えるかい」

と、メアリー様にアルバン医師は言ってくる。


……アルバン先生って……声とフォルムが…………順一先生に、そっくりなんだ……でも……違うよね。

順一先生はわたしの事は藍ちゃんと呼ぶからここではそれは無い。


「お願いします」

と、メアリー様が場所を開ける。

アルバン医師は聴診器を掛布の下から差し込み胸の音を聞いてくる。


……やっぱり違うと……思ってしまうなぁ。髪色や瞳の色も違うのに雰囲気が似ていて凝視してしまうよ。掌で肌に当たる面を温める仕草が一緒なのに……


「アイ、痛いところは? お腹を触るよ」

と、腹部に手を置いて圧を感じる。


……まだ、ちゃんと動いていない。食べ者は駄目だろうな……


「今日はまだ、食べるのは無理のようだね。アイも分かっているんだろう?」

と、アルバン医師は藍に聞いてくる。


「はい。糖分は取ってもよろしいですか?」


「ふ~~ん、少しの量をゆっくりなら、いけるかな。それより味覚は分かるかい?」


「いいえ、試しにキャラメルの欠片を口にいれましたが、甘味は感じませんでした」

と、藍は答えた。

意識が戻ってルカにキャラメルの欠片を口に入れて貰ったが、苦いだけだった。


……高熱のせいで味覚障害になっているみたいだが、久しく無かった事だ。薬でなる味覚障害よりは元に戻るのが早いと思うが、何を食べても味がしないか苦くなるのは久々に落ち込むぞ。


「それはディービスに伝えたのかい?」


「いいえ、ディービス先生はまだ御存知ではないですね」

と、藍は答えた。


「身体で気になるところは?」


「頭痛がします。酷く痛いものでは無いですが……脱水の時に似ています」


「それはいけないな。直ぐに補給しようか」

と、アルバン医師が言うと、カリーナ様とメアリー様が落ち着かない。


「カリーナ様、メアリー様大丈夫ですよ。それよりルカがいませんね」

と、アルバン医師も辺りを見回して探す。


「ルカがいないけど、アイは大丈夫? 僕が補給しても」

と、アルバン医師が言って藍の背中に腕を入れて上半身を起こしてくれた。


……問題は無い筈なのに何故? 確認を取られたのだろう

と、マジマジにアルバン先生を見ていると、


「私がしますわ、アルバン先生はそのままアイを支えて下さい」

と、アルバン医師の反対にいたカリーナ様が片手に持っていた吸い口を受け取り飲ましてくれた。


……辺境伯夫人に何をさせているのやら、申し訳なく思いながらゆっくり嚥下していく。

全く味が無いと言うか、苦い味しかしないが脱水状態だったのだろう。勢いよく飲みたいが我慢してゆっくり時間をかける。


「それぐらいにしとこうか。カリーナ様よろしいですか」

と、アルバン医師の止めが入る。カリーナ様も心得たもので、天蓋のカーテンを引きメアリー様と色々してくれるが、出尽くしているのに申し訳無いが、藍の意識がある分体位の移動は女性二人の力でなくて済む。歩いて済ましたいが今は動けない。





「当初の予定どおり一巡りで済みそうですね。良かったよ」

と、診察の記録を書きながらアルバン医師は言ってくる。


「カリーナ様、メアリー様も予定を変えてもらってありがとうございます。ロビン様は大丈夫なのでしょうか?」


「ロビン様とミカエルは今領土に帰っているわ。お義父様やお義母様に報告も有りますし、お仕事よ気にすることはないのよ。

でも、良かった。アイが元気になって本当に!」

と、カリーナ様が藍の手に力を込めて握る。


……えっ? 何か有ったんだ。これ以上は聞くな?


「カリーナ様、後でディービスとこれからの事を話し合いたいのですが、お部屋をお借りしても宜しいですか?」

と、アルバン医師は診察記録を抱えてカリーナ様に聞いてくる。


「分かりました。ルクールに用意させます。アイは休んだ方がいいわね」

と、言ってカリーナ様はメアリー様に目配せをするのが藍からでも見える。


「アイ、ルカを呼んでくるわね」

と、メアリー様が先に部屋から出て行き。カリーナ様はそのままベット側の椅子に腰かける。


「アイのお腹は鳴らないわね?」


「はぁいぃ?」


「だってメアリーもケビンもアイのお腹の音は楽しいわよって言うのだもの聞きたいと思って側にいるのに、全く鳴らないのよ」

と、カリーナ様は藍のお腹の音がすると目が覚めると聞いていたらしい。


……それは本当の事ではあるが……おかしい? カリーナ様の様子や話し方はいつもと同じなんだけど……何だろう?


「カリーナ様、お呼びですか?」

と、ルカが部屋に入ってくる。


「ルカ、アイの側にいてね。私は少し休みます」

と、カリーナ様はルカにアイを任せて部屋を出ていく。


「ねぇ、ルカ。この部屋で料理でもしたの? いい匂いが残っているけど」

と、窓側のカーテンを寄せて空気の入れ換えをしているルカに問う。


「…………いい匂い?」

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