見解 2
「ロビン様、突然の訪問失礼致します」
と、ディービス医師が部屋に案内されて入ってきた。
ベットの藍を見て親友二人の医師に目をやるとワナワナとアルバン医師に近付き、
「もしかして、あの薬を投与したのか……しないといけない状態だと?……」
「もう、分かるのか?」
「あぁ、部屋にずっといるアルバンは分からないだろうけど、臭いは出てきている」
「ディービス、一年ぶりね。今落ち着いたところよ、良いところに来た。説明して」
と、アルバン医師の胸ぐらを掴んで、問いただしている側にティベリ医師が両脇に手を添えて来た。
「説明して欲しいのは、私だ! 何故強心剤を使っている! 患者のアイは毒には耐性がない!」
と、珍しく声を荒げるディービスに周りは驚いているが、
「毒だと……」
「先生方、毒とはどういう事ですか……」
と、ロビン様とルクールさんが声を出してきた。
「あっ! 毒と言っても強い毒と弱い毒と色々ありまして」
と、アルバン医師が言い掛けると、
「無害な薬は無いのです。強いか弱いか配合や色々有るのですが、薬学知識の無い方に説明のしようは有りません」
と、ティベリ医師は言ってくる。
「それはそうなんだけど、今回の薬はディービスが怒っても仕方ないよ」
「命に関わるのにそんなこと言ってられないでしょう」
と、アルバン医師とティベリ医師は揉める。
「分かった。二人の腕は知っているけど、何で?」
と、ディービス医師は聞くと、
「ディービス、僕の方が君に聞きたいよ。これから反動で熱が出てくる。この患者は熱には強いみたいだけど、無理に圧をあげたのに下げることは、薬より身体に負担になる」
と、ディービス医師にアルバン医師が説明した。
「ディービス、私はどうすればいいのか知りたい。このまま側におれば良いのか? 何か手配することが有るのか? グローからの紹介された医師は不在だったのを、そちらの二人の医師が往診に来てくれた。
その医師がアイが危なかったというのだ。私はアイの庇護地の責任者だ。ダーニーズウッド辺境伯家の主治医としてすべき事を指示して欲しい」
と、ロビン様は3人の医師に問う。
「分かりました、少しお待ち下さい。二人の医師の処置を聞いてからになります」
と、ディービス医師は二人の医師の手を取り、アイが横たわっているベットに行き天蓋のカーテンを引く。
「ディービスは王都にまだいたのか……」
と、ミカエル様が呟けば、
「そう言えばノーマン家より紹介依頼が合った件か?」
「はい。予定より長い滞在に王都に居るとは思いませんでした。ディービスの義甥の話はしましたよね。アカデミーの看護科に編入手続きは終わっている筈なので……」
と、ミカエル様は答える。
「ロビンがアイを虚弱だと言ったが、私はどうやら信じていなかったようだ」
と、ダートル様は言ってくる。
「それは……兄上だけの事では有りません。私も同様のようです。
ミカエルや子供達から聞いていた事が、本当には理解していなかった」
と、ロビン様がベットの方に視線を向けて答えた。
「ルカ」
と、ミカエル様が1人離れて立っているルカを呼ぶ。
「はい……」
と、ルカがミカエル様の側に移動すれば、
「ルカの責ではない」
と、ミカエル様に言われ、驚いて顔をあげれば、
「前にアイに教えて貰った。何故メアリーがアイの顔色の変化に敏感になれたのかと……僕が分かる前に気付くから不思議に思って……
アイの答えは女性と男性では観ているところ違うからだと……意味はよく分からなかったが、アイの憶測ではルカは顔色よりアイの身体の使い方や仕草で不調を読まれていると言っていた。
それが本当ならアイが誤魔化せばルカは、気付けまい」
と、ミカエル様は言ってくる。
「私はアイの侍従です。アイが誤魔化しても気が付かなければいけない立場です」
と、苦しげな声でルカは答える。
「確かに理想はそうです」
と、ルクールさんは言ってくる。
「長年、ダーニーズウッド家別邸でお仕えしておりますが、私は本邸執事のニックに足元にも及びません。
先代カール様とロビン様にミカエル様が別邸でお過ごしされた時間は、私がお仕えした時間ではロビン様が一番長いのです。
そのロビン様の心情を全部理解して慮れば良いのですが、全部晒された事は有りません」
と、ルクールさんは言ってくる。
「ルクール、ルクールの事は信用しておるぞ!」
と、ロビン様は慌てて仰るが、
「はい。承知しております。ただお隠しになるにはカール様、ミカエル様にダートル様を入れてもロビン様は少々下手ですので、刻苦されていること察しております」
と、笑ってルクールさんは答えた。
「私はそんなに分かりやすいのか?」
と、ロビン様が衝撃を受けておられると、
「大丈夫さ。分かるのは身内位だ。それに心底仕えているものだけだ」
と、ダートル様が仰る。
……兄上、天下の大嘘付きなら今日お会いしましたよ。
「ルカ、察する事は出来ても晒して貰えなければ全部理解するのは無理だと言っているのです。
これは私の私見で参考になるかなら無いか、比較的嘘が上手なのは女性です。見抜くのも女性の方が長けていると思います。
先程、ミカエル様がアイ様に言われた男性と女性では観ているところが違うと仰った事と近いかも知れませんね」
と、ルクールさんはルカに告げている。
「普段から身体を気遣い管理していたアイが、自分で制御しきれずに命の危険までなったのは本人のせいだろう。
虚弱なのは気の毒だけれど誰のせいでもない」
と、ダートル様は周りを気にせず言ってくる。
「伯父上はアイが努力しているところを御存知無いから簡単に仰いますが、アイはいつも謝るのですよ。ちゃんと管理出来なくて気がつくのが遅れて御免なさいと。
だから自分には関わってくれるなと言ってくる。したいことも出来ずに我慢して、自分で出来ることは人に頼らずしようと周りを気にしているのです。
自分の為に時間を使わないで欲しい。自分を優先にしないで欲しい。
して貰った事に対して自分は何も返せないから、心苦しいと言ってくるアイに、私達は何度も迷惑ではないから甘えろと言い続けて、最近は遠慮がちでも甘えるようになってきたけど……」
と、ミカエル様は経緯を答える。
「ミカエル、それはアイが自己否定をしているのか?」
と、ダートル様が聞き返す。
「始めは私もその傾向はあるのだと認識していたのですが……自己否定より自己評価が……低く見ているなと感じました」
と、ミカエル様は答えた。
「…………そうか」
と、一言仰って黙られた。
「ルカ、ミカエルの話がそうであるなら、私から見てアイが遠慮なく接しているのはルカだけだと思うが……」
と、ロビン様は告げた。
「お待たせ致しました」
と、ディービスと二人の医師が天蓋のカーテンを開けて出てきた。
「うっぐぅ…………」
「……………………つぅ」
「何だ?……」
と、部屋で待っていたロビン様達は、悪臭に驚きと戸惑いにどう聞いていいか分からない。
カーテンを開けた事により臭いが漏れてきたのであれば、悪臭はそちらから来たことになる。
「皆さん、この悪臭は薬が効いていることの証みたいなものです。何日か耐えてください」
と、ティベリ医師が言ってくる。
「ロビン様にはお願いしたいことが有ります。これからの診療に関わることです」
と、ディービス医師は口を開く。
「今日は、私をお館に泊めて頂きたい。それはアイの介護と経過の観察になりますが、私一人では困りますのでティベリ医師もお願いしております。
ロビン様には、医師会館宛に指名予約診療依頼を毎日出して欲しいのです。ティベリ医師とアルバン医師以外の医師が往診をしない処置だと思って下さい」
「それは必要な事なら致すが、ディービスと二人の医師は大丈夫なのか?」
と、ロビン様が問う。
「大丈夫ではありませんが、被害が少ない選択でディービスとティベリが、一巡り位だと言うので……ただ指名と予約の依頼と言うのが診療報酬外の話です。医師会館の独自の決まり事で書類を出せば事務職員は手続き通り請求します。
往診に来る医師は当番制で、新人が来ることは有りませんが、診察投薬観察と往診の必要性が無しとなるまで続きます」
と、アルバン医師は説明をした。
「分かった。指名予約診療依頼は出す……してこの臭いはアイには大丈夫なのか?」
と、ロビン様が問うと、
「はい、平気そうです。無意識に笑っておりますから……」
と、ティベリ医師が答えた。




