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続・虚弱体質巫女ですが 異世界を生き抜いてみせます ~何もないと諦めないでマイナスからゼロになるまで~  作者: 緖篠 みよ


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霧散

「アイ!!」

と、執務室でロビン様の大きな声が、藍の後ろでドアを閉める途中のルカが、藍の顔が床に当たる直前に手を入れて強打を防いだが、


「……アイ…………ルカ。どうしたのだ?」

と、ロビン様が血の気の無い顔で意識を失っている藍を抱え、側で転倒を庇いながら床に手を付いているルカに問う。


「……分かりません。ロビン様……」

と、ルカも藍の顔色を見て驚いている。


「ロビン様、ミカエル様がお……ど、ど、どうされたのですか!」

と、ルカが閉めきれていないドアからルクールさんが声を掛けてきた。


「ルクール! 今すぐミカエルを医師会館に向かわせろ! アイが倒れたと言えば分かる!」

と、ドア越しにルクールさんが執務室を見て、ロビン様に指示されてホールの方に足音が消える。


「ルカ! アイの部屋を整えろ!」

と、ロビン様は藍を抱え直しルカに指示する。






「ナギ、今日は強行長距離で悪かったな」

と、馬車から降りたミカエル様は、御者台の侍従ナギさんに言っていると、


「ミカエル様! ミカエル様、今すぐ医師会館にアイ様が!」

と、慌てたルクールさんが玄関ホールの奥から喚いて伝える。


「ナギ、代わりの馬車を今すぐ出してくれ!」


「いいえ、ミカエル様。このまま走らせます。お乗り下さい」

と、御者帽を被り直してナギさんがミカエル様を促す。


「分かった。医師会館まで走ってくれ!」






「アイ! アイ!」

と、ロビン様は抱え込んだ藍に声を掛けてみる。いくら虚弱で身体が弱いと聞いていても、顔色を悪くしてミカエルやルカに休むように促されて素直に従っている藍しか見ていない。

メアリーやケビンが過剰に藍を庇っているようにしかロビン様は見ていなかった事に、思い当たる。


……何なんだ? 肌はいつも白いがこの青さは? 2階の部屋にはルカが向かったが、医師が来るまでにどうしてやれば良いのか?


ロビン様は今まで女性を抱き抱えたことはあるし、それなりに鍛えているから女性を抱えて重さを感じる事も無いが、過去に藍の様に生気を感じない軽いのに重たく冷たい身体を抱きしめたことはある。


……アイの身体に熱を感じない。抱えている腕に重さが有るのに熱が伝わらない。何なんだ? 溶けて無くなりそうな感じは…………


「ロビン様! ミカエル様が医師会館に向かっておられます。アイ様の様子はいかがですか?」

と、藍を抱えている所にいつの間にか、ルクールが側で声を掛けている。


「アイの意識は無い。身体が冷えてきているから、ルクール、カリーナをアイの部屋に呼んでくれ」

と、ロビン様は藍を抱えて執務室から藍の部屋に向かう。






侍従 ナギの手綱捌きで、王都中央医師会館に向かって馬車は車軸と車輪の限界まで回転させ、長距離を予測して若い馬は蹄の高い音を響かせて行く。


……ここ最近は体調を崩しても倒れる事はなかった。アイも周りを信用して素直に従って体調維持してきたが、何か無理をさせたか?

心当たりがあるとすれば、アカデミーの事だが、その後はアイは館で普通に過ごしていた。

第一ルカが、アイの不調に気付かない事があるだろうか?


それよりもグロー医師の紹介者 マギルバ医師はいらっしゃるのだろうか。下手にアイを晒したくは無い。

誰でも良いと言えないが、迂闊だった。もっと早くアイに関わる事になる医師に付いて対策をすれば良かったのにと後悔の念が先立つ。





『……………………ァィ……ァィ……』

……セイ…………さ……ま……

『ァィ……アイ……ワレのコエはとどくか?』

……セ……イ……さま……

『アイ、このせかいをこばむでない。アイのカゴが……』

……こ……ば……む……

『……ァィ……ァイ……ワレのコエはきこえるか?』

……セイ……さま……

『アイ……こば……めば……ワレはま……て……や……ぬ……』

……な……に……



「何故?……こんなに冷たくなるのだ?…………」


「ロビン様! どうされたのですか?」

と、ルクールさんに連れられたカリーナ様が、アイを抱えて毛布越しに身体を擦っている側に来る。


「アイが急に顔色を悪くして、目の前で倒れたのだ。だがいくら抱き抱えても身体が冷えてくる。私では体裁が悪いとそなたを呼んだが」


「そんな体裁など考えなくても、アイ……なんて冷たいの?」

と、毛布から出ている藍の顔に手を添えれば、冷たくて驚いている。


この季節は、肌寒い事はあっても暖炉や暖房を必要としない。日中であれば窓を開けて気持ちの良い日でもある。

ロビン様が藍の部屋でベットに寝かし付けようと一旦は藍を横たえた。

だがその直後ルカが、益々冷えていく藍を見て暖房を取りに行く許可を求めて来た。

掛布越しには藍の体温が分からぬと、片付ける予定だった毛布を出してきて藍を繰るんでロビン様は毛布越しに擦っていたのだ。


「私もアイを暖めます」

と、藍を繰るんでいる毛布を外し、アイに直接抱きつけば全身の体温が低く、呼吸の頻度が少ないことに気付く。


「ロビン様! ロビン様もアイに直接体温を当てて下さい。このままではアイは凍えてしまいます」

と、直接という妻の言葉に戸惑ってはみるものの藍が倒れた直後から抱えているロビン様は、今にも溶けて崩れそうな藍をカリーナ様ごと抱き抱え直す。

カリーナ様の体温は抱えた掌、腕脚から伝わるのに間にいる筈の藍からは熱は届かない。


……何が! 何が! 有ったのだ!! アイ!





「すみません! ミカエル·ダーニーズウッド辺境伯です。マギルバ医師は? 急患です!」

と、医師会館の玄関口でミカエル様は貴族らしくなく大きな声で喚いた。


玄関口では受付口に事務職をしている職員が、閉まっているカーテンを開けて顔を見せた。


「あの、マギルバ先生はお留守です。お戻りは1の2月になりますが」

と、言ってくる。


「では、マギルバ先生のお弟子さんか、後継者の方は?」


「マギルバ先生と同行されていますので、お留守です」


「今、診てくれそうな先生は何処に要るんだ?」


「夜勤当番の先生なら、会館で仮眠を取っておりますから、起こせば診てもらえますが、私はあまりお薦めいたしません」

と、職員は言ってくる。

……身内の者に、お薦めしたく無いと言われるとは、出来たら藍に関わって欲しくは無いが……


「後は、街の診療所に数人の先生が派遣されておりますよ」

と、職員は教えてくれる。


「その医師はマギルバ先生の教え子では無いのだな」

と、ミカエル様は思案顔で聞く。


……出来れば、グローかディービスとの関係者が良いのだが……


「残念ながら違います、平民ですが腕は良いですよ。一番近い診療所に今日はおります。

後少しお待ちになれば、アカデミーに教鞭を受持っておられる先生がお帰りになると思いますが、学徒達に熱心で時間通りにお帰りではないのです」

と、職員は言ってくる。


「嫌、診療所に行ってみる。騒がせてすまなかったな。その医師の名前は教えてもらえるか?」


「あっ、はい。ダミアン医師です」





「ロビン様、これをアイのお腹に当てて下さい」

と、ルカが重みのある巾着袋を手渡してきた。


「ルカ、それは何?」

と、カリーナ様が聞いてくる。


「えっと……ですね……アイが障りの時にカルマに頼んで石を温めてお腹に抱えていたのです。お腹から全身が温かくなると言って……」

と、ルカは説明をする。


「では、お腹に当ててみよう」

と、ロビン様はルカから受け取った巾着を藍のお腹に当てて、ルカには医師が来たときの用意を頼んだ。ルクールには藍の部屋を暖めるよう指示する。


藍の身体が熱を持たず冷えていくのを、ロビン様とカリーナ様が身体を衣装越しだが当てて体温は移している。

ロビン様はご自分の熱が藍に届いている感じはするのだが、霧散しているように体温が下がりつつある。

このままではカリーナ様まで体調を崩しかねない。どうすべきかと思考していれば、


「ロビン様! アイの身体に熱を感じます」

と、カリーナ様が言ってくる。


「ふむ、少し温かみが出てきたか。そなたはもう離れておれ。唇の色が変わり始めておる。私より身体が冷えておるではないか」

と、ロビン様が言えば、


「いえ、もう少しなら大丈夫です」

と、カリーナ様が答える。


「そなたが、体調を崩せばアイは気に病む、自分のせいだと。身体は離しても手を握っておれば良いだろう。

ほら、手はまだ冷たいままだ」

と、妥協案を告げてカリーナ様が側に居れる様に答える。

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