事情
“(お祖父様へ
キャラメルという、お菓子を作りました。 食べてみてね。 藍より)
カーディナル王国シアン国王陛下
粗末な物を献上には廉恥心で御座いますが、一興とお試し下さいませ タツミ アイ“
……ロビンより手渡された巾着は、深い暗めの青色で男性の掌の窪みに収まる大きさだった。手が込んでいるのは裏地と成っている赤色の生地だ。
和巾着の作りは表生地を裏返しにしても可笑しくない作りに成っている。絞り口も高く紐を引き絞れば裏生地の赤色が映える。
義母 芙巳さんの持っていた丸巾着は、更紗生地で上品できれいだった。藍が中身のキャラメルが主だったのか? 巾着も手紙も嬉しい。
日本語で書かれた内容は見られても誰も分かるまい。カーディナル語では誰に読まれても支障の無い文に成っている。
良く考えたものだな…………
ダーニーズウッド辺境伯兄弟が、談話室から退室すれば、私の廻りは騒がしい。侍従長自ら送り出すとは珍しい行動に、事情を知らぬ奥に控えていた侍従や侍女が指示待ちに出入りが、大きいな。
何時もなら私の考えも行動も把握していると、自負していたのであろうなリックもガルソールも私の顔色を伺う行動が奇妙で笑いたいが、下腹に気を入れて今は耐えている。
ガルソールは第5王子の時から侍従として側に仕えていた。カールとも側近とし付き合いは長い。
カール共々信用しているが、何分王宮職執務と領地統治とでは思考が違う。カーディナル王国とダーニーズウッド辺境伯領地とを上に立つ者が脇で参謀付きでおるのとは見ておる景色が違うのだが、此はその立場に成らぬと理解できまい。
ガルソールとリックとは同じ様な役回りであるが、視野が広いのはリックの方であろうな。
諸外国交流として近隣と、異母姉に異母兄の娘達への情報共有と偵察を兼ねた役割で行動すれば、異母姉や姪達との思惑から外れる事もある。表向きは外れ王子が諸外国を遊びで廻っていると思われがちだが、虎視眈々と人質をちらつかせた交渉をされてきた。
ガルソールが側に付き出したのは、主に裏で動いてくれていた側近の代替わりに倣っての事で、カールと違い裏を知らずに私に仕えている。
リックは異母兄 サンエーの後継者だ。国内の裏を異母兄 ヘンリー国王陛下と宰相職サンエー兄とで治めてきた。
国内の膿で癌である実弟 アースとリオンを罠を掛けて陥れた一人で間違い無い。
諸外国に出る前に、異母兄二人には告げられていた。同じ異母兄弟だとしても愚か過ぎる者を庇う気は無いと、異母姉達には知らせないから惚けておけと注意されたな。
リックはその異母兄達の側で鍛えられ学んで来たことを、今度は実の孫に導いて行けるのか見物だな。
「陛下! 陛下の此度の行動は私共を蔑ろにされておりませんか?」
と、宰相職 リックが言ってくる。
「珍しいな、リックが不服を言ってくるとは」
と、シアン国王陛下はからかい気味に答える。
「陛下は無駄な事はなさりません。簡単に答えを出されているようで緻密な思考の上で有ることは理解しているつもりです。
重鎮扱いをされている者の中には、陛下を欺いて理解を示しながら画策しておる者もおります。その者を認識されながら上手く泳がせておられる手腕は前ヘンリー国王陛下とも、引けを取りませぬ」
「異母兄ヘンリーと比べられるとは大層だな。異母兄の様には良君ではないよ。リックの方が知っているだろう」
「ヘンリー陛下とサイニー殿下は異母兄弟抜きにシアン陛下を買っておられました。内政に重きを置き整えられるのも、シアン陛下が外回りを抑えておられるからだと、浅はかにお二人に忠言を申し上げた時に、視野の狭さを忠告されました」
と、宰相リックは告白してくる。
「確かに、遊んでいるように見せかけてはいたがな。異母兄上達は御存知であったし嫁がれた異母姉や姪姫の命に関わることは、側近であっても欺いてみせたがな」
と、シアン陛下は事無かれに仰る。
「では、此度の事は陛下にとって大事な事なのですね」
「だから、リックを遠ざけてはおらぬであろう。そなたはダニエルの事を一番に考えろ。私は私の事情で動くが、呆けてはおらぬし先を見て動いておる」
と、シアン国王陛下は答えた。
カーディナル王国王宮と王立アカデミー学院の間に医師会館の建物が有る。
医師資格持ちは、資格証明書をこの会館で登録保管されている。登録保管は医師だけだが、薬剤師と看護師の登録は別の部所でされて証明書は個人保管に成っている。
王立アカデミー学院の中でも特殊枠な学業であるから、看護棟と薬学棟に医師学生は医師棟以外でも授業を一緒に受ける。
専門知識と実習は6年間の時間があっても難しいく、取得出ないものは薬学や看護に変更していく者や研究の変更も合ったりするのだ。
「ティベリ! 待ってくれよ」
と、同期の医師をしているアルバンが声を掛けてきた。
「どうしたの? 今日の私の相棒はアルバンではないでしょう?」
と、教材を抱えた白衣の女医は聞いてきた。
「そうだよ。僕ではないけどハッスンは、ご贔屓の侯爵夫人の往診に行くことに成ったから、僕が代わりにティベリの相棒をすることに成った」
と、白衣がこの体型にいつまでも持つかと言う程きつく見える。実際はきついのだろう。
「そう、私はどちらでも良いわ。この年度始めの邪魔くさい授業は何時も私に回って来るのだし、気候替わりで体調を崩すのはもう少し後だから、街も比較的暇だから」
と、気の置けない友人で優しいアルバン医師は聞いてくれるだけだ。
「ティベリは優秀だから、一番肝心な年始めの授業を任せられるんだよ。他の先生が教えた時は半年は遅れを取った学生は可哀相だったし」
と、隣を歩きながら王立アカデミー学院の医療科に向かっている。
「意欲的に学びに来ている学徒はかわいいし、教え概はあるけど、親の為とか高給取りだとか名誉職だからとか、かわいく無いのが多いのよ。それを始めに潰しておくのが私の楽しみでもあるけど」
と、女医は答える。
「僕はそれで良いと思うよ。王宮医師は貴族しか診ないけど、医師会館で待機している者は、誰でも診ないといけないし、ティベリは都内を率先して当番に付くよね」
と、アルバン医師は聞いてくる。
「本当は、地元に帰りたいけど後継教育も大事だと分かっているから、会館に要るのよ」
「嫌、女医は王都から出さないよ。圧倒的に数が少ないからな、僕の奥さんも娘も僕も医師なのにティベリが良いと言うし、何時も無理を言って悪いね」
と、アルバン医師は謝りながら本当の事を言ってくる。
「そう言えば、シアン陛下はお戻りに成ったのでしょう? 今回は長い逗留期間を取られてたわよね。体調でも崩されたのかしら?」
と、女医は気に掛ける。
「出発前とご帰還時に王宮医師が診察をしているはずだよ。全く騒がしくなかったから、お元気に帰都されたんだよ。
それにシアン陛下が王都を離れて逗留される場所はダーニーズウッド辺境伯領土だよ。
ノーマン医師が居るから体調を崩されても心配する必要な無いさ」
と、アルバン医師は素直に答える。
「確かに、グロー先生は引退なされたけど調剤はされているらしいし、ディービスが気の抜けた診療をするとも思えない。でも何時もなら連絡が疾うに合っても良いのに無かった? アルバンにはディービスから連絡は合った?」
「嫌、今年は無かったな。新年度の準備に忙しくしていると手伝ったりしてくれたりが、今年は無かった」
と、アルバン医師は答えた。
「ディービスには娘しか居ないのよね」
「確か奥さんと娘も看護師だから、生きの良い医師でも探しているんじゃないか。
ダーニーズウッド辺境伯領土に他の医師も研修に行かせて貰っているから、あそこは軍医外科を得意とするものが大勢いるが、ディービスの内科を得意とする者を今年度は考えて斡旋指示を出してやれば」
と、アルバン医師は言ってくる。
「私が指示依頼書を出したとしても、内科を希望している者は地方に行きたがらないのよ」
「内科も外科も技術的に全部理解するのは難しい。外科は思い切りが必要だし内科は細かい正反対だもんな」
と、分析が得意なアルバン医師は言ってくる。
「そうね。それは人の向き不向きは確かに有るわね」
「だから、ティベリの様な内科も外科も得意とする医師は重宝がられるし、女医なら尚更だ」
と、医療科の玄関口まで来たところでアルバン医師に言われる。




