相談 3
「いや、どうだろうな」
と、シアン国王陛下は否定の言葉を出された。
「シアン陛下、ダーニーズウッド家の侍従者 あのルカであれば完全に危険から回避出来るとお考えですか?」
と、ダートル様が問う。
「シアン陛下がルカを評価して下さるのは有りがたいことですが、ルカでも限度はございます」
と、ロビン様も兄と同様の意見だと述べる。
「ルカには護衛を重視するように言ってある。流石にダーニーズウッド家の侍従がどの様な事情でも手を出せば問題に成るであろう。
だから、あの者には身の危険を感じればルカを盾に攻撃しても良いと言ってあるが?」
と、シアン国王陛下は答えた。
「陛下! ダーニーズウッド家の侍従は護衛のみで陛下の文官は手を出しても良いと仰るのですか?」
と、宰相殿下は驚きで声が裏返った。
「そうですね。どんな事情でも王宮内でそんな荒事が有るとは思えませんが、文官が手を出す事を許可出されるのは、大袈裟のように感じます」
と、侍従長 ガルソールが言ってくる。
ダーニーズウッド辺境伯兄弟は黙ってシアン国王陛下の反応を待つ。
「まぁなぁ、普通ならこの王宮内でそうそう荒事が有るとは私も思っておらぬが、その者が平民だと知ったならどうだ?」
と、シアン国王陛下は宰相殿下と侍従長と奥に控える他の側近達が一瞬固まった後にガヤついた。
「陛下。今それを仰いますか」
と、兄 ダートルが小さい声で呟いたのを、隣に座っているロビン様と向かいにおられるシアン国王陛下と宰相殿下にも届く。
「ダートル殿は知っておったのか?」
と、宰相殿下は聞いてくるが、
「リック。上位貴族推薦であっても、アカデミー側はそのまま受け入れると思うか? 事前に書類の提出があって平民だと知っておるから、ダートルが言っておった教師の嫌がらせがあったのであろう。
貴族籍ではないから侮られて不当な扱いに成るかも知れぬと、ダーニーズウッド辺境伯次期領主予定のミカエルが付き添いで出向いておったのだろう」
と、シアン国王陛下は説明される。
「失礼ながら、陛下の文官は外国からの平民で、ダーニーズウッド家の者が認める人間性であり、アカデミーで優秀な成績を残した者で、間違いございませんか?」
と、宰相殿下はシアン国王陛下に確認を取る。
「ロビンよ、この中で私に次いであの者を知っておるよな。
リックが私に問うた事を、あれはどう答えると思う?」
と、シアン国王陛下はロビン様に振ってきた。
「私は王都の別邸でしか、関わっておりませんが宰相殿下に同じことをその者が問われたら、そのまま頷き認めるでしょう。兄 ダートルも宰相殿下と同じ様なことを本人に聞いておりましたので」
と、ロビン様はお答えになる。
「シアン陛下は、わざわざダーニーズウッド家を捲き込み陛下の側で文官職に付けて、身を守る為に国宝と云われている青い石で庇護者と名乗り、そこまでされる真意が私には理解できません。
シアン国王陛下の真意を分からないままでは、憶測で無くても陛下がどうかされたのかと心底案じる側近や臣下が出てくると配慮しますが、私の杞憂にございますか?」
と、宰相殿下は声に変調を入れずに、静にシアン国王陛下に問う。
「リック、同じ様な事をカール·ダーニーズウッド辺境伯前領主に言われたぞ。
それこそ顔を真っ赤にして諌め怒鳴っておった。
カールは従兄弟だが、母が違えど慈しんで愛情深く関わってくれた異母兄姉と同じなんだ。幼い頃から兄替わりとなって寄り添ってくれている。
そなたら側近達には、気に食わぬかも知れぬが、成りたくて就いた王位で無いが、異母兄の恩に報いるためにカーディナル王国を護って来た。カールは最後はおれてくれたが、リックには説明しないと帰領した者達まで、呼び出しそうだな」
と、シアン国王陛下は笑みを浮かべた顔で仰る。
……シアン陛下、笑顔で答えておられるが、こちらは気が気ではないですよ。
「先ず、偏見が無くなるように言っておくが、私の文官の者はこの近辺外交諸国ではない。その者が平民だと言ったのは、平民だけしかいないからだで身分制がないのだ。
分かりやすく言えば全員貴族だと言っても良いが、上下が無いのだ。先に生まれた順番年齢制はあるが、その者が育った国に貴族はいない。職や学びに長はいるが身分は皆同じなんだが……理解できるか?」
と、シアン国王陛下が周りを見回して問う。
「ウチで言うなれば、全員ダーニーズウッドで生まれた順番で親や子があり、子の中に兄弟があるようなものですか? ダーニーズウッド家がその者の国として仮定したらの話ですが」
と、兄 ダートルが返事をする。
「そうだな。本人は身分が無いから平民だと答える。それが身分の有るものからすれば、下に見られると言う経験が無いのだ。
その者は平民の年上の者に対して敬い礼儀正しくしようとするが、年下の王太子なら軽く子供扱いにするだろうな」
と、シアン国王陛下は答えた。
……確かにアイは、礼儀正しい中に年齢制を感じることは有る。
「なんと!」
「はぁあ!」
と、宰相殿下と侍従長は驚きに平静な表情を貫けていない。
「シアン陛下、それは凄く分かりやすいです。確かに本人が平民だと言っておりましたが、容姿や学力や才能は貴族の上位と言っても良いでしょう」
と、兄 ダートルが答えると、シアン国王陛下は、そうだろうと言いたげな表情で頷かれた。
「だが、それではここで馴染めぬから、身分制は教えたし理解しておる。身分で態度を変えることを由としないから、誰に対しても礼儀を取るらしい」
……成る程な、アイらしい判断だと思う。ダーニーズウッド家では実際そうしておるな。
「シアン陛下の文官と私達の常識が違うと仰るのですね、理解しました。
ダーニーズウッド家の皆さんは陛下の文官が平民だと言っているだけで、そうではない扱いをしているということでしょうか?」
と、ロビン様に宰相殿下は問われた。
「宰相殿下が理解された通りです」
と、ロビン様は返事とした。
……アイはあくまで平民だというだろうけど……生まれを言えないが高貴で有ることに代わり無い。
「では、参考までに仮に貴族籍だとしたら、どの当り位の才能と学力なのでしょうか?」
と、侍従長 ガルソールが聞いてくる。
「ふむ、貴族籍にな。若輩者だから良く言えば侯爵位か、但し体力は準貴族位だな。少しは体力が付いたようだが、持続が出来ないからな」
と、シアン国王陛下は真剣にお答えになった。
「体力の事は分かりませんが、シアン陛下がそのように判断されるのであれば、私共は陛下の文官をその様に見えると思います」
と、侍従長は答える。
「それは良かった。この時間が無ければ理解されるまでに労を費やした事だろう」
と、シアン国王陛下は仰るが、
「シアン国王陛下、その者を側に置かれるのはいつ頃に成りますでしょうか?
私は領土に帰らなくてはなりません。王都のダーニーズウッド別邸には、次期領主予定のミカエルとアカデミーに通う子供達がおりますが、その者をその間遊ばせておくのも、大人しくしておりませんよ」
た、ロビン·ダーニーズウッド辺境伯が問う。
「王宮の部屋の用意がまだ整っておらぬし、今呼ぶのも躊躇っておる」
と、シアン国王陛下は答える。
「シアン国王陛下。陛下がお呼びに成るまでダーニーズウッド家で預かるのであれば、私に付けて文官見習いをさせても宜しいですか?」
「兄上! それは無いと申し上げました」
「文官職を直ぐにしろと言われても、慣れぬと体力が無いのに倒れてしまうぞ。私なら無理させぬ程度に付けれるが、今は臨時だしな」
と、兄 ダートルが宣言していた通りに、提案する。
「ダートル、そなたルカの指示に従う事は出来るか?」
「あっ! それはミカエルにも言われたことですが、ルカの指示従えば宜しいのですか?」
と、兄 ダートルが確認を取る。
「ふむ、確かに慣らしは必要では有るな。ダートルがルカの指示を軽く受け流すようなら直ぐに止めると約束するか?」
と、シアン国王陛下は再度聞けば、兄は頷いて返事にした。
……そうだ! アイから陛下に渡すものが有るが、今渡しても大丈夫だろうか?
「シアン国王陛下。お暇する前にお渡ししたいものが有るのですが、今宜しいですか?」
と、ロビン様は控えめにお聞きすると、
「ロビンがか? 受け取ろう。この青い石はあれに渡して身に付けるように説明は頼むな」
と、青い石で出来たペンダント入りの木箱を、ロビン様に手渡し受け取る体勢に成ると侍従長が、
「ダーニーズウッド辺境伯からでも、直には困ります」
と、割って入られる。




