キャラメル
藍は作業場のテーブルでキャラメルを流し込んだ油紙より薄い裁断前の紙を出してきて、細長く折り畳むと三等分に成るように短冊型になった紙を折る。油紙を広げると折った箇所に折り線が残りナイフで切ろうとしたら、ターチちゃんが藍に聞いてくる。
「おねぇーさん、紙を切るの? ターチがしたらダメかなぁ」
と、藍はハサミかカッターナイフしか紙を切ったことがないが、こちらの11歳の女の子はナイフを使えるのかな?
「えっとね、ターチちゃんはこの大きなナイフを使えるの?」
と、藍が現代でいうなら刃体で30センチ刃渡り20センチのサバイバルナイフに近い銃刀法違反に成るようなナイフを見て聞く。
「これより大きいナイフや鉈も使ってるよ」
と、ターチちゃんは言ってくる。
「えっ! 凄いね」
と、藍がびっくりして聞けば、
「でも、父ちゃんやお兄ちゃんが居ないと使っちゃ駄目だと言われてる。だったらおねぇーさんだとダメなのかなぁ?」
と、ターチちゃんが言ってくる。
「そうね、私はナイフを使い慣れていないからルカに聞いてからにしようか」
と、藍がターチちゃんに言っていると、ルカが戻ってきた。
「ルカ、ターチちゃんが紙を切るのに側で危なくないように見ていてくれる」
と、お願いすればルカは、意味が分かったのかターチちゃんの後ろに周り手元を見ていてくれる。
藍はキャラメルを作った鍋に、バターを作って分離したバターミルクを入れて、残りのミルクとゆっくり温める。木ベラや鍋に付いたキャラメルが溶けてミルクとバターミルクがきれいに混ざればホットキャラメルラテの出来上がりだ。残りのバターは小さい瓶に入れたがここに冷蔵庫は無い。
……後で厨房の人に聞こうかな。せめて氷室があれば良いんだけど
鍋のキャラメルラテは少ないが、三等分すれば休憩補給に成るだろう。バターミルクは捨てるには勿体無い栄養分がたっぷりだからね。
型に流し込んだキャラメルは周りから固まりつつあるが、中央はプヨプヨの波打つ少し風に当てて完全に固まる前に切り分けたい。
「おねぇーさん紙が切れたよ」
と、ターチちゃんが報告してくる。
「じゃ、何枚有るか数えられる?」
と、ターチちゃんに問う。藍は二枚の油紙を重ねて四等分の三等分だから枚数は分かっている。遊びながらお手伝いをしながらの教育は日本では当たり前だが、ここではそうではない。
作業場でのキャラメル作りは、ターチちゃんに手伝ってもらいながら、日常に必要な数や段取りと甘味のお礼をするためだ。
「ターチ、数は年の数までしかわからない」
「じゃ、紙を10枚数えて纏めて置いて、次の10枚と分けてくれる?」
と、藍が指示すると、ターチちゃんは頷き取りかかる。その間に煮沸としたぬるま湯で洗い物を済ませてカップをテーブルに置けば、
「おねぇーさん、紙は10枚が2つと4枚だったよ」
「そうだね。1の次は何?」
「2」
「2の次は?」
「3」
「そうだよ、だからね10枚の次は20枚でその次は30枚。そうすると10枚が2つ有るから?」
「20枚?」
「そうだよ。残りの4枚を入れると24枚だね」
と、カップをターチちゃんとルカの前に置き進める。
「どうぞ。少し冷めたかも知れないけど休憩しましょう」
と、藍がカップに口を付ける。
……うぅ~~ん! 甘味は少し足りないけど、それなりに美味しーー!
「おねぇーさん、ターチも飲んで良いの?」
と、カップを持ったままターチとルカは固まっている。
「勿論、私のお手伝いをしてくれたし副産物なんだから遠慮しないで飲んでね。私だけでは飲みきれないから助けると思って」
と、藍が飲み終えたカップを二人に見せる。
完全に固まる前に型からキャラメルを外すと、ルカがナイフを持って近付いてきた。
「切り分けたら良いのか?」
と、聞かれたのでナイフを頂戴と手を出した。驚きながらルカは柄の方を向けて渡してくれた。
藍は竈の弱火に刃の方を炙り消毒と切り安くするためにした。
板状のキャラメルを紐の様にして、適当に小分けしていく型にした油紙に入れて軽く小麦粉を降り馴染ませる。今回は包み紙がある分配って廻るつもりだ。残りはわたしの低血糖の為の非常食にする。
作業場の竈と調理器具の片付けをターチちゃんとルカにお願いをして、包み紙分キャラメルをリボン型にしていく。
「ルカ、ダートル様はロビン様とお話し中なのよね」
と、聞けば、
「ミカエル様と三人で談話室に行かれた筈だよ」
と、厨房に借りた調理器具を抱えたルカが教えてくれた。一旦部屋に帰ろうとターチちゃんを探す。竈の火を処理してくれているターチちゃんのエプロンのポケットにキャラメルを3個入れる。横目でルカが見ていたが、
「お手伝いありがとう、ターチちゃん。少ないけどお礼に食べてね」
と、言ってルカと館に向かって作業場を後にした。
館に戻るとルカは厨房に調理器具を返しに行くというので、残りのバターを出来るだけ涼しい所に保管をお願いした。
藍は2階の部屋に戻りキャラメルを端切れで作った小さい巾着に入れていく。3個入りが二つ2個入りが四つと、小さい平皿に6個を籠に入れて、机には残り1個と油紙に纏めて入っている形の悪いキャラメルが数個を置いて部屋を出る。
藍が談話室の前に着くと中から、
「なっ! そんな! わけがないでしょう!!」
と、ロビン様の大きな声が漏れ聞こえて来た。
ノックをするつもりで右手をドア前にかざしていたが、少し躊躇ったがノックをしてみる。
コン!コン!コン!
部屋からはミカエル様が応答してくれた。
「アイです。少しよろしいですか?」
と、声を掛ければ、何故か少し間が開く。
「アイ、良いよ入っておいで」
と、ダートル様が入室許可をくださったので、藍は談話室に入った。ロビン様とミカエル様は並んでソファーに腰を掛けて、向かいにダートル様が座っておられた。
「ダートル様、こんにちは。少しお時間を頂きますね」
と、藍がダートル様が腰かけているソファーまで近く。
「どうしたんだ?」
と、心配そうにロビン様が藍に問いかける。
「試食して頂けないかと、持ってきたものが有るのです」
と、藍は小さな平皿に薄い油紙でリボン型に包んで6個並んでいるものをテーブルに静かに置いた。
「これは?」
と、ミカエル様が藍に問うてきた。
……本当は綺麗に四角立方体にしたかったけど、たたみ折りにするには手間がかかりすぎるから、キャンディ包みです。
「これはミルクキャラメルというお菓子です。毒味が必要なら指定されたものを、私が口に入れますが」
と、藍は毒味役をかってでる。
「いや、必要ないよ」
と、ミカエル様が1つ摘まんで取りリボンの両端を引き緩めた。仄かに甘い匂いが広がった。
「お口に合うと良いのですが、男性の方には今回のキャラメルは甘い過ぎるかも知れません」
と、藍はミカエル様がキャラメルを口に入れるのを見守る。
……切り分けた時の端を少し口に入れたが、記憶の市販のキャラメルとほぼ同じに出来ていたから大丈夫だと思うけど、少し後味が違うのは砂糖の種類と水牛の違い?
「……………………うまい」
と、ミカエル様が仰ると、ロビン様とダートル様も1つづつ取りリボンの端を引き解き、口に入れていく。
「……………………」
「……………………」
何故か? ロビン様とダートル様は口に含んだキャラメルを味わう事無く固まった。
「何処で……手に入れた?」
と、ダートル様に藍は突然腕を捕まれた。
……えっ? 何処で?
「あの~ぅ、ダートル様? これは私の記憶を辿り作った物です。先日ダートル様に頂いた蜜飴で倒れずにすみました。
それで私も非常食として持っておきたいと、試みたのですが。
ダートル様は御自分で作っていると仰ってましたよね」
と、藍が驚きながら答えた。
「伯父さん! アイの腕を離して下さい。驚いているじゃないですか」
と、ミカエル様がダートル様に注意してくれる。
「あっ、すまないな。急に掴んで悪かった」
と、ダートル様は手を離して謝罪してくれる。
ロビン様も何か言いたげにされたが、そのまま黙された。ダートル様も藍の腕を掴んだ右手を見てそのまま黙ってしまわれたので、わたしはミカエル様にお声をかけた。
「ミカエル様、ロビン様とダートル様には不評でしたので、良かったら」
と、藍が残りのキャラメルをミカエル様に食してもらえればと、テーブルの平皿に手を出しかけると、ロビン様がサット取り上げてしまった。




