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理解

「トキニル叔父さん、誰が体調を崩していたんだい?」

と、アキバが聞いてくる。


「アキバは、関係ないと言っていたじゃないか」

と、トキニルが答える。


「それは、そうだが。トキニル叔父さんが対応している間、此方はあの態度の悪い侍従に張り付かれて、いい迷惑を被ったんだ話の種位は提供してくれてもいいじゃないか」

と、アキバは言う。


「話の種にもならないことを、私は面白くも出来ないし合ったことを無かったようには話せないし、無かったことを合ったことのようにも話せない。ただ、症状を聞いてお茶で服用する物をお買い上げ頂いただけだよ」

と、トキニルは説明する。


「父さんは、症状だけで薬草茶を提供したの?」

と、スキールが聞いて来た。


「まさか、ただのお茶を買って頂いたんだよ」

と、トキニルは、自分専用の常備薬と好みの茶葉が入っている袋を広げて見せる。


「あっ!本当だ。お茶が減っている」

と、スキールが覗き込んで言う。


「じゃぁ、何であれ程警戒されないといけないんだ」

と、アキバが勘ぐる。


「私も始めは緊張したけど、お貴族様の為さることが、庶民の私に分かるわけ無いだろう」

と、トキニルは答える。


「大袈裟にして何が楽しいのかね。お茶の代金はもらったのか?」

と、アキバが話を変えてきた。


「私は差し上げると言ったんだけどね。ミカエル様が、ロッティナ姉さんに言付けると仰ったので、それで退いてきた」

と、トキニルが代金は貰うが後払いでノーマン医院に入ると説明する。


「この前も義父さんと、王都の帰りに寄ったけど、ロッティナ叔母さんには会えなかったよ」

と、アキバが街道を逸れてノーマン医院に寄ったことを話す。


「そうか、今時分は医院も暇になると思っていたけど、義兄さんには悪いことをしたな」

と、トキニルが息子 スキールの手続きを頼んだことを悔やむ。


「いや、サッチの従姉妹 ルナーの話では、医院はそれ程忙がしくしている訳じゃないみたいなことを言ってたが……」

と、アキバが医院で看護見習いをしている姪 ルナーとの話をしてくる。


「アキバ兄は、ルナーと話をしたのか?僕も聞きたいことがあるから話がしたかったな」

と、スキールが聞いてくる。


「義父さんと話しているところを、側にいたから聞こえてきただけだよ。一様、サッチの夫だと紹介されたけどな」

と、アキバが説明する。


「トキニル叔父さん、いつも義父さんはノーマン医院にあんな上質の薬草を卸しているのか?」

と、アキバが聞いてくる。


「アキバは知らないのか?ノーマン医院の先代 グロー先生は、ジャスパード国では手に入らない薬草を栽培されていることを」

と、トキニルが答える。


「えっ?」


「おまけに薬剤師顔負けの精製技術の持ち主なんだよ、グロー先生は。

栽培も薬草の精製もご自身でなさるし、勉強熱心な方だから、変わった物を提供してくださるよ」

と、トキニルがグロー先生の説明をする。


「じゃぁ、義父さんは薬草を卸して仕入れしていると」


「勿論、収穫して直ぐに精製出来ない物も有るけど、それは姉さんの縁でお互い様みたいな感じだな」

と、トキニルが答える。


「なんだ、遊びに寄っているのかと思っていた」


「兄さんも、若い時からノーマン医院に親父に連れられて行っていたから、その事は知っているよ」


「義父さんは、そんな話はしないから」


「サッチは知らなくても、ギルは知っているはずだがな」

と、トキニルは言う。




数刻前…………


「これから、シアン国王陛下は王都に帰都されるのですか? あのお嬢さんを連れて」

と、トキニルがミカエル様に問う。


「いや、あの娘は王都に向かうが、違う場所に行く予定だ。何か気になるのか?」

と、ミカエル様が探る。


「失礼致しました。貧血を自覚されていたので、精がつく物を食されないと薬だけではどうにもならないと思ったもので」

と、トキニルが答える。


「ア…………あぁ~ぁ、そうか! 何やら、ロッティナに相談していたらしいから、その事かも知れないな」

と、ミカエル様が言う。


「姉 ロッティナはあのお嬢さんを気に入ってはおりませんでしたか?」

と、急にロッティナの話にトキニルが変えてきた。


「そうだな、可愛がってくれていたと思うが」


「姉は、男女問わず聡明な人を好ましく思う質なんです。舅というより医師としてグロー先生を尊敬していました。義兄は、姉が一緒になっても良いと思わせた男性なのでしょう。

少しの会話ですが、あのお嬢さんの聡明さは分かります。姉が好ましく思ってもおかしくないのです」

と、トキニルは藍がロッティナと親しくしていると確信している。


トキニルが自分のカバンを開けて、何やらゴソゴソしだす。


「トキニル? 何をしているんだ?」

と、ミカエル様が聞いて来た。


「いえ、私共の馬車に戻った時のために、少し小細工をしといた方が良いかと思いまして」

と、袋を開けて詰め替えている。


「小細工?」


「はい。私の息子は薬識学を終えています。対象者を見ないで薬を渡したと言ったら疑われます。あくまでも私は薬草茶と薬を処方した事には致しませんので。

ただの私のお茶を差し上げたとした方が、自然かと思案したのですが、浅はかでしたか?」

と、トキニルが確認してくる。


「いや、良く考えてくれていると思っただけだ。それならちゃんと支払うとした方が良いだろう」

と、ミカエル様が助言する。


「そうですね。口実を与えない方が良いですね。ノーマン医院に支払われると致しますね」

と、トキニルが従う。


「トキニル。僕とは初対面だし、あの娘は何も関係が無いだろう?

何故? 身内を騙すような事を率先してくれているんだい? それの方が…………」

と、ミカエル様の言葉に被せるように、


「ミカエル様。姉はあのお嬢さんのために、はちみつを用意しませんでしたか?」


「…………ロッティナが、確かにうちの料理長にレシピと一緒にはちみつを……」


「そのはちみつを用意したのは、私です」


「えっ?」


「珍しく姉から手紙が来たと思ったら、季節外れのこの時期にはちみつを、催促されました。

はちみつは、これから採集するものです。それなのに私の持っているはちみつを催促するなんて、姉らしくないのです。

と、いうことは姉はそこまでしても、手にいれたくて私を頼った事に成ります。

姉は、自分の為には私に頼ったりしません。自分以外の為に私に頼ったなら応えるのは当然の成り行きです」

と、トキニルが説明する。


「ロッティナがそこまで、親身にしてくれているとは知らなかった」

と、ミカエル様が呟く。


「ダーニーズウッド辺境伯現領主様にはお会いしたことは有りませんが、父はお爺様とグロー先生の伝で今の交流の許可を申請する際にお会いしたと申しておりました」


「先代の時だろうか?」


「いえ、代替りされる直前で、先代 カール様の前の領主様だと聞いております。私共の父も兄に家督を譲っておりますから、結構な時が経っておりますが、私共がジャスパード国でも特異性を持って商売が出来るのも、懇意にしている長年のお付き合いのお陰に成ります」

と、トキニルが説明するが、


「それは、トキニルの祖父と父親が誠意ある態度でいたからであらう。領内で問題を起こす商会は、他国のみならず同じカーディナル王国の商会でも出入りは制限されるからな」

と、ミカエル様が答える。


「そうなんですが、私共が今同行しておりますのは、姪の亭主の商会です。兄も行商に伴っておりますが、娘婿を査定している途中のようで、今までの信用を崩す行動をされてはたまりません。私個人の考えで用心するだけです」

と、トキニルは説明する。


「そうか、トキニルの用心に理解はしたが、先程の会った娘の事は念を押すが、口外はするな」

と、ミカエル様が言えば、


「口外、詮索は致しません。義兄と姉には、情報を共有しておかないと、私を出しに情報を得ようとするかもしれません。会っていないことに致しますので、ご理解下さい」


「頼んだ」


「それにしても、表に出たら危険だと思うのですが?」


「分かっている。理解しているが、あの娘……以外はな…………はぁーーっ」

と、ミカエル様が長く息を吐く。

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