閑話 出会 1
「ダートル、たまには付き合え!」
と、教育科で同期の級友に囲まれた。
後一年間はゆっくり教育科で色々な勉強に手を広げたダートル·ダーニーズウッド辺境伯は、知識欲に溢れていた。
ダートルのように教科や知識に貪欲な者達は飛び級をするでなく落第迄はしない程度に、広げた教科や研究に勤しんでいるものが多い。
貴族籍の子息令嬢は10歳から14歳まで貴族科卒業試験に合格すれば、貴族と認められ社交界にお披露目となる。
跡取り子息に成るためには、領地経営や法律を学ばなくてはいけない。周りに優秀な側近や使用人達に任せるやり方も有るが、地位が高い程自身で取り組む貴族が多い。
王立アカデミー学院では、貴族籍である共通学の後に選択科として四年間の学びの期間が設けて有る。医療科のみ追加二年間が有るが他の選択間は四年を限度として設定されている。
選択科にも試験があり、飛び級に落第も有る。選択科を1つに真面目に取り組めば、二年間で卒業試験に合格するとこも可能だ。
ダートルは教育科を四年間ゆっくり広く深く学び探求欲に従って過ごしている。そんな兄 ダートルを見てきた弟のロビンは辺境伯領主である父 カールに言われずとも経済科に進み本人が好む騎士科ではなく領地経営を学びにアカデミーに通っている。
兄が領地経営に興味も関心も持たなければ、弟は何も問いと不服も訴えずに好きでもない科目に取り組んでいる。
身体を動かすことが好きなロビンは、領地や王都で父上や侍従のアートムが相手をして、剣術や体術は取得していると聞いた。優しい弟はアカデミーでは、体格の良い父似のおおらかさで周りから人気者である。
ダートルが運動が苦手と言うことではない。運動は人より得意ではあるが、じっと同じ体勢で集中するのが好きなのだ。小さい時には二つ年下のロビンと一緒に鍛練をしてきたせいで、集中力と身体の使い方が上手だと滞在中のシアン王弟陛下にも褒められた。
当時のシアン王弟陛下は、異母兄ヘンリー国王陛下と異母兄サイニー宰相陛下の元、隣国を回り珍しいものをお土産に領地に逗留されていた。新しいものを見るのも学ぶのも好きに成ったのは現シアン国王陛下の影響が多い。
「何に?付き合えと言っているんだ?」
と、ダートルは囲まれて級友達に問う。
王立アカデミー学院 選択科では、貴族籍以外に民間からも編入してきている。騎士科に次ぐ教育科と医療科は一般人が多い。教師職に就いている者や学徒も身分や出身を問わない。
建前では、身分や年齢を問わないとしているが、規律や礼儀に幼い頃から身に付いた習慣は変えようがないし、変えるつもりもない。
同じ級友であっても自ずとグループ分けは出来てしまう。
ダートルはダーニーズウッド家の教えや特性で、差別的認識がない。地位や生まれた順番も気にしない。弟 ロビンとは違う感性で周りに人が集まる。
同じ辺境伯子息 バースト·ボドール辺境伯は、1つ年下ではあるが一年飛び級してダートルと同じ級友になった。成績優秀者のダートルが飛び級をしない理由を聞き同じ様に学業を深める道を選んだ。
二人は地位の高い貴族籍であるが、研究熱心な下位貴族籍や一般人とも気安く打ち解け合いながら過ごしている。
「ダートルは、許嫁や婚約者はいないだろう?」
と、バーストが言ってくる。
「あぁ、父上からは特に何も言われていないが?」
と、ダートルも答える。
「だったら、妹の練習相手を成ってくれないか?」
と、バーストが言う。
「はぁ? バーストは妹が居るのか? 異母兄が居るのは聞いていたが、妹の話は知らなかったよ」
と、ダートルは心外だと答えた。
「そうだな、私もダートルも仲良くしている級友達は地位的に低いし一般人が多い。
流石に辺境伯令嬢の妹の淑女科の練習相手を頼めたりしないよ。アカデミー外では、身分差を弁えないといけないから態度が変わるところも見せたくはないな」
と、バーストは苦笑いをして答えた。
「そうか、淑女科にはそんな練習が必要な科目があるのか?」
と、ダートルは女姉妹がいないから知らなかった。
「まぁ、ダートルは姉妹がいてても知らなそうだが、女性の貴族は女主人として接待やお茶会をすることが多いし、しないといけなくなる。
嫁ぎたくなくて家に閉じ籠っりたくとも、家柄ではそうもいかないだろう。淑女科はある意味花嫁修業の場や相手を見つける場でもあるんだよ」
と、バーストはダートルに説明してくる。
「えっ? 相手を見つけるの? アカデミーで?」
と、ダートルは驚いて聞いてくる。
「地位の高い貴族の子息令嬢は、簡単には婚姻は決められないし、親同士の話し合いがあるが、地位の低い者からすれば、男性は地位が上がる婿入りの相手が見つかるかも知れないし、女性は政略結婚より恋愛結婚に憧れや玉の輿狙いで淑女科にいるらしいよ」
と、説明してくれる。
「なら、私は必要ないのでは? バーストの妹なら結婚相手は辺境伯閣下がお決めに成るだろう? 練習相手ならバーストの友人達がしてくれるだろう?」
と、ダートルが言う。
「そうだよ。だから頼んでいるじゃないか? ダートルは許嫁も婚約者もいないんだろう? 決まった相手がいる子息に頼めば、お相手の令嬢に失礼になるし。誤解されても困る」
と、バーストは尤もな事を言ってきた。
「私でもなくても、練習は出来るだろう?」
と、ダートルが断れば、
「同じ子息と令嬢では、話が同じで面白くないらしい。手強い相手を探してきてと頼まれた」
と、バーストはしれっと顔で言ってきた。
「わかった、わかった。手強い相手ね後で文句は言うなよ。研究の話しかしないぞ」
と、ダートルが了承すれば、
「よし、時間は調整するから頼んだよ。研究の話から違う話題に持っていける様に妹には練習だ」
と、バーストが喜んだ。
級友達の淑女科の訪問は、バーストが調整して各々のお相手に向かって行く。
……バーストは世話好きで調整上手だなぁ。
と、ダートルは感心しながら淑女科の談話室に向かう。
談話室には各々お茶会用のテーブルと椅子が設置されており、早いところでは会話に盛り上りが出来ている。反対に男性が話題を一生懸命振ってはいるが、令嬢の反応が薄い所もちらほら。
バーストに案内されたテーブルには、二人の令嬢が先に席に着いていた。金髪で青い瞳のティベリ嬢とバーストと似た感じのごげ茶髪の茶目のクリネ嬢だ。二人の令嬢は地位が高い故にお相手に苦労していると教えられたが、バーストには悪いが面白く令嬢達に話をしてあげれる自信はないぞ。
「やぁ、待たせかなぁ、ティベリ嬢。それに可愛い妹 クリネ」
と、バーストが挨拶をする。
「バーストの友人で、ダートル·ダーニーズウッド辺境伯です」
と、二人の令嬢に挨拶をする。
「私は、クリネ·ボドール辺境伯です。こちらはティベリ·ベルーナルト伯爵です。私達は幼馴染みで、長いお付き合いになります」
と、クリネ嬢は自己紹介してきた。
「ダートル様はこの兄と仲良く出来るのですか?」
と、自己紹介が終わるとクリネ嬢がダートルに聞いてきた。隣でティベリ嬢まで身を乗り出してくる。
「えぇ、研究熱心なバーストとは気が合う方だと思いますよ。友人も大勢おりますし、私はその内の1人だと思いますが」
と、ダートルは答えた。その答えが意外だったのか二人の令嬢は顔を見合わせて、クスと笑い合っている。
「失礼しました。私は兄の事が大好きですが、領地内では変わり者で通っております。ですからそんな兄にも友人がいるのが嬉しく思います」
と、クリネ嬢が答える。
「私の兄も教育科におりますが、一族の中でも風変わりな扱いで成績は優秀ですのに、周りに人が寄り付かないと言いますか、バースト様とダートル様のような仲の良い友人が居てくれると良いのですが」
と、ティベリ嬢は言ってくる。
「ティベリ嬢の兄上も教育科に?」
と、ダートルが問うと、
「私と同じ歳で、1つ下に居るよ。私は一年飛び級をしたから、学び場は違うけど」
と、バーストが説明をする。
「確かに私が言うのも何ですが、教師方も変わった方が多いですし学徒も興味が片寄っている者が多いと思います」
と、ダートルが答えた。
「それをご本人が仰るのですね……クスクス」
と、クリネ嬢とティベリ嬢はまた顔を見合わせて笑い合っている。
二人の令嬢は気取った処もなく自然な会話にダートルも極普通に楽しい時間を過ごせた。




