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続・虚弱体質巫女ですが 異世界を生き抜いてみせます ~何もないと諦めないでマイナスからゼロになるまで~  作者: 緖篠 みよ


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研究室

「ねぇ、ルカ。生地問屋さんに行きたいのだけど」

と、藍が巫女衣装擬きを作る気で言ってみる。


「やはり藍が作る気なのかい」


「そうね、ドレスとかは手が回らないから無理だけど、これ位ならゆっくり縫えるから」

と、藍が着替えた巫女衣装を見せて答える。


「わかった。ミカエル様に相談するから待ってくれるか」

と、ルカが言ってくる。


「それから厨房は借りれないかな?」


「厨房? 何をするんだい?」


「うん~とね、ダートル様に貰った飴みたいなものを作りたいなぁって、思ったのよ。私には必要だと思うし」

と、藍がダートル先生に貰ったキャラメル擬きを取り出して見せる。


……キャラメルなら簡単には作れるから、材料だけの問題であって、それも確認したい。

個包装のキャンディは3個しかないから今日みたいなことがあれば、携帯しておきたいのよね。


「そうか、それも聞いておくよ」





王宮研究所は王城城壁内に施設として個別建物としてある。研究所としての建物と研究員舎としての建物と二棟建てとしてある。

貴族籍の研究者は王都に自宅があり通いであったり、研究員舎に部屋を設けたりしている。民間職の研究員もその点は同じでは有るが、ほぼこの研究員舎で生活している者ばかり、研究員とそこで働く職員は、独身ばかりの集団になっている。

王宮研究所としては、文官寄り化学寄りと得意性で部屋を別けている。

新しい鉱石、他国からの用いられたもの分析や安全性、文献から調べる者や薬品や検証で調べる者、広い知識で総合的に調べるもの者、新しい道具や材料を開発実践する者も、研究と言う多種類多様な物を扱っている部所である。


この前まで研究所研究室で室長をしていたダートルは、以前に使っていた机に向かって考え事をしていた。

アルコールランプの火はそれほど大きいものではないが、ビーカーの中身は泡を大きくして湯だっている。弾ける音も大きくなれば部屋中甘い匂いでむせかえそうであるが、気が付かないのか考えに耽っていた。


「ダートル! 何をしているんだ!」

と、部屋の扉を弾き飛ばす勢いで開き、ダートルの側にあるアルコールランプの火に蓋を被せて消火する。

部屋の天井近くにある換気窓の紐を引っ張り空気の入れ換えに時間は掛かりそうだが、湯気とも煙とも言えない白めいた部屋は、換気窓から外へゆっくり流れていく。


「あれ、バーストいつ来たんだ?」

と、不思議そうに同僚のバーストにダートルは聞いているが、


「いつ? 寝ていたのか? ここは私の部屋だが」

と、こげ茶の髪を後ろに束ねた壮年の男性が、ダートルの立っている側まで近付く。


「お前の部屋?」


「研究室の室長の部屋だから、私の部屋だよ」

と、バーストは当たり前のように言って、机の上の惨状に顔を歪めた。


「あぁ、そうだったな。悪かった考え事をしていたらこの部屋に戻ってしまったのか。だが鍵も掛かっていなかったし不用心だぞ」

と、ダートルが言えば、


「私だって食事を済ませたら直ぐ戻るつもりだったが、誰かさんが勝手に臨時の教師なんかを引き受けて、この忙しくない筈のこの時期を忙しくさせている本人に言われたくはない」

と、バーストが言ってくる。


バースト·ボドール辺境伯、現ボドール辺境伯閣下の異母叔父に当たる。

ダートル·ダーニーズウッド辺境伯、現ダーニーズウッド辺境伯の実兄。立場上は同じ様で有るが、前領主か現領主かの差は貴族籍では大きい。


前任者の所長は、長患いで留守にしがちだったのを仕方なくダートルとバーストがお互いの仕事を助け合いながら、研究所を回していた状態だった。

前任者の所長の指名により、ダートルがバーストより1つ年上であること、地位的に優位であること、2人の仲の関係性で名指しの上で決まったことである。


ダートルは実力的に変わらないバーストを所長にと前任者にお願いしたが、ダートルを責任者にバーストを補佐にした方が、研究所内は上手く行くと最後に決定事項と権力技で退職退所された。


「バースト、忙しいって言っていたが、この時期は忙しくないだろう。新年度採用者の指導を1の1月と長くても1の2月迄に終わらせる位の筈だが。

流石に忙しくなる頃には戻る予定にしているけど」

と、ダートル新所長は、バースト新室長に問う。


「前年度はふ、た、り、で、していた事をひ、と、り、で、すれば忙しいに決まっている」

と、バーストは1つ年上の親友に言って聞かせた。


「そうか? バーストなら問題ないと思っていたけど?」

と、ダートルは机の上でインクより黒く粘度の塊を見て苦笑いをした。


「ちゃんと片付けてくれよ。当分匂いも取れないだろうし」

と、バーストが言ってくる。


「あぁ、悪かった。ここまで失敗するのは久しぶりだな」

と、配置が同じ道具をなおす。長く一緒に仕事をしていれば物の位置や配置が似てくる。ダートルが自分の部屋と間違えた要因でもある。

違和感なく無意識にしてきた事は、ダートルとバーストがそれ程長く関わってきた証拠でもある。


「何をそんなに耽っていた? 臨時教師は、大変なのか。研究所ではそこまで深く考え事しないよな」

と、心配しているのか貶しているのか、分からない問いをバーストがしてくる。


「まぁ、色々思い出したことや驚いたことが有ったよ」


「思い出した事?」


「あぁ、依頼書にはゾーイ先生の署名があった」


「相変わらずだったか? 私は卒業してからはアカデミーには、行ったことがないからお会いしていないが」


「急に教師資格を取ることにした私に、手続きや補習をしてくれたのはゾーイ先生だったから、今回は臨時教師の件を受けたけど、本当の依頼主はビバルだった」

と、学生時代に恩を感じたゾーイ先生の依頼だから受けた内容が、ビバル先生の指名だった事に驚いたこと。


「ビバル?」


「そう、ビバル·ベルーナルト伯爵。バーストとは同郷だったよな」


「あぁ、ボドール辺境伯領土内の伯爵家の1人で、私より1つ年下だよ。だからロビンと貴族科では同じ筈だよ」

と、バーストは答えながら考える。


「ゾーイ先生は、私の学生の頃からあまりお変わりないが、今のアカデミーには老害にしかならないな」

と、今日の教育科での対応や考え方を見てダートルは正直に思ったことを答えた。


「ダートル、老害って……」

と、慌てて親友を諌めるが、ダートルがそう感じたのならそうなんだろうと口を閉ざした。


「ビバルがゾーイ先生を押さえているが、侯爵と伯爵では強くも上からも本当には押さえられないだろうな」

と、ダートルが教師職に地位は関係ないという常識が常識でないと言っている。


「教育課程も少し変わってきているし、臨時だから気が楽ではあるけれど、本職でされている先生方は各々大変だろうね」

と、正直すぎることを言ってくる。


「それだけ? ダートルが自分の蜜飴を作るのに失敗したのは? ゾーイ先生とビバルのことなら、この前の打ち合わせをしていた時に分かりそうなものだけど」

と、付き合いの長い親友には腑に落ちない。


「それなりに気落ちする出来事ではあるさ。先生の捻れかたが酷くなっていたし、文官職員は知らない人に入れ替わっているし、可愛い甥っ子はいつの間にか立派になっているし」

と、ダートルが言えば、


「ダートル、ダートルの可愛い甥っ子は私の甥っ子か? それとも違う甥っ子か?」

と、バーストは聞いてくる。


「ダーニーズウッド家の甥っ子達だよ」


「そうかい、良かったじゃないか。伯父からすれば身贔屓してしまうだろうが、ダートルはそれはないからな」

と、ビバルと同じで事を言われた。


「バーストと同じで事を言われたよ、ビバル先生に」

と、今日明かされた内容を言う。


「ビバルが、ダートルに?」


「教育科で文官資格試験が有ったんだよ」


「文官資格試験なら、4の3月始めに有っただろう?」


「だから、ダーニーズウッド家の依頼で今日教育科で文官資格試験があった」

と、ダートルは答える。


「それで?」


「試験場にゾーイ先生、ビバル先生と私が居たらミカエルが試験の立会人が、ダーニーズウッド家の人間が居たら忖度だと疑われないかと、ヒバル先生に確認をしてきた。

その時に、ビバルが忖度をしない人を選んだだけだと答えたんだよ」

と、ダートルは経緯を教える。


「なんで? 今頃ミカエルが、文官資格試験を受ける必要があるんだ?」


「いや、ミカエルが試験を受けた訳じゃない。付き添いで側に居ただけだよ。

今日文官資格試験を受験合格した、女性の側に」


「えっ?」

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