証明書
「ダートル先生の興味を引けるお話では無いですよ。覚悟して下さいね」
と、藍が顔を赤くして言ってくる。ニッコリ頷かれては言うしか無いが、
「朝、覚醒した時に手足を動かしなからその日予定を思い出します。学校に行く時間や授業の内容や種類ですね。
体調により受けれる授業と時間は日々違うので、この朝の覚醒時はとっても大事なことです。
パジャ、寝着を着替える前に体温を計りいつも通りなら朝食を取って体内を起こします。体内と頭の覚醒は時差が有りますから、朝食でこの時差を無くします。体内から出る私の身体のお知らせを確認をして、お知らせとはお小水と便のとこです。
問題がなければ出かける用意をします。忘れ物が有ると私の場合命に関わるので忘れ物は気を付けています。
学校は一駅……近くに有るのでゆっくり歩いて向かいます。遅刻しそうになっても早歩きまでは大丈夫ですが、走ってしまうと授業を受けれず養護室と言う所に言って休憩をしなくては、いけなくなるので、時間には余裕を持って事件事故に巻き込まれないように辿り着くことが肝心です。
無事に学び舎学校に着けば、後は友人達と楽しく授業を受けれたら、授業内容は身に付けることが出来ますから、そこまでが私の最大の毎日の努力ですかね」
と、藍が全うに答える。
「「「…………………………」」」
「ミカエル、タツミ アイは努力を説明してくれたんだよな」
と、ダートル様はミカエル様に聞いている。
「アイ本人が、胸を張って授業は友人と楽しく受ければ身に付くと言っているじゃないですか、努力は学校という所に着くことみたいですね」
と、ミカエル様が少し呆れ気味に返事をしている。
ミカエル様とルカにとっては何回か藍の身体が主本である話は、今回の話でなくても聞いている。しかし一回聞いたぐらいでは理解できないことも知っている。
「タツミ アイ。君の努力は学舎に辿り着くことか?」
と、ダートル先生が確認してくる。
「いいえ、学舎に辿り着く為の体調管理が私の最大の努力ですよ? そう……説明しましたよね?」
と、藍がミカエル様とルカに視線を向ける。
「した、したぞ、確かにしたな。うん」
と、ミカエル様が同意してくれたが、ルカは下を向いたまま肩が小刻みに上下しているのは何。
「本当に大事なことなんです」
と、藍が念を押す。藍が不貞腐れ気味にお茶を飲んでいると、ダートル先生の控え室ドアにノック音がした。
コン、コン、コン
「ダートル先生はいらっしゃいますか?」
ダートル先生がルカに視線を向けると、ルカはドアに向かって答える。
「ダートル先生は、いらっしゃいますが、どの様なご用件ですか?」
「ビバル先生が部屋を御用意されました。お話が有るそうなので、一緒に来て頂けませんか」
と、返事が来た。
「わかった。少し待て」
と、ダートル先生がミカエル様を手招きして
「ゾーイ先生は分からないが、ビバル先生はタツミ アイを囲い込みたいと思っているぞ」
と、ダートル先生は言ってきた。
「そうかもしれませんね。でも多分大丈夫です。兎に角資格取得の証明書をアイに渡してあげたいので、話はしないといけませんね」
と、ミカエル様がいえば、
「そうか、ミカエルに策があるならいいが」
と、立ち上がりドアに向かって
「では、行こうか」
と、わたし達に言ってドアを開ける。
呼びに来た文官職員さんに付いて廊下を歩くが、フードを被った状態では完全に方向を見失っている。ルカが後ろに付いてくれているがはぐれたら無事に帰れそうにない。
案内されたところは、事務室近くの応接室らしいが、成る程此処でも試験は出来ただろうの広さも、テーブルも椅子も有る。
わたしでも、この部屋の存在を知っていれば、試験を受けた教室の意味も分かる。
「ダートル先生、私にだけにゾーイ先生の子守りを押し付けないで下さい」
と、部屋の窓側に立っていたビバル先生が、入室後に言ってきた。
ダートル先生に誘導されてソファーに掛けていく。わたしの隣に座ったダートル先生は、
「僕は臨時教師だよ。必要以上に教育科に関わるつもりはないけど」
と、素知らぬ顔で答えている。
「確かに、元々教師職に就くつもりもなく資格をお取りになりましたからね。
では、何でゾーイ先生からの私の依頼を受けてくれたんですか?」
と、ビバル先生は向かい側に腰を下ろして言ってきた。
「僕の話より、彼女の話をするべきだろう」
と、ビバル先生の話を切って修正してくれる。
「そうですね、タツミ アイ。貴方に文官資格証明書をお渡ししますね」
と、一旦立ち上がり窓側のテーブル上の文箱から筒状になった紙を取り出し、わたしに渡してくれた。
「中を確かめて下さい」
と、ビバル先生に言われて広げる。
今日の試験結果が明記されている。一般試験結果 80問中80問正解、文官試験結果 50問中45問正解と、立ち会い人として先生の名前が二人分署名されている。
「この先生の署名は、ゾーイ先生とビバル先生ですか? ダートル先生は?」
と、隣のダートル先生に視線を向けると、
「僕は臨時だから」
「良いですよ。私の目の前で署名されれば、偽造では有りませんから、後から署名される方が問題になりますし」
と、ビバル先生は文箱からペンを取り出して、ダートル先生に渡す。
二人の先生の署名の下に、ダートル·ダーニーズウッドと署名された。
“この者は、王立アカデミー学院 教育科文官試験において高い知識と結果を残した者と証明する”
と、書かれた証明書を眺めミカエル様とルカにも見てもらう。
……まさか異世界でも、何かを証明してもらえるなんて、凄く嬉しい。これって持って帰れるのかなぁ? 課程を終了したから貰える証明でなくて自分の中の物を出して証明されることが、こんなに嬉しいことなんだ。
友人にもいたな、資格取得マニアの心境?だな。
貰った資格証明書を見ながら、ニコニコと眺めていると、何やら視線を感じる。
顔を上げた藍の目の前からの視線が痛い。
「ビバル先生? 何か? この後は手続きでも有るのですか?」
と、藍はルカの方を見てビバル先生に聞く。
「タツミ アイ、少し良いか?」
と、ビバル先生に問われた。
「えっと、少しなら良いのかなぁ?」
と、藍は今度はミカエル様に視線を向けて聞く。
「君は、解答用紙に何やら右上に書いていただろう。あれは何だ?」
と、ビバル先生が聞いてきた事に興味が有るのか、ダートル先生まで此方に視線を持ってくる。
「あれは私の名前です。試験だというのに無記名では怖いので、私の名前を書きました」
と、藍が説明した。
「あれが君の名前? では此方に記入した名前は?」
と、ビバル先生の追及は最もだと思うが、説明しても良いのかなぁ?
「此方で御用意された書類に私が記入した内容は、カーディナル語に変換して書いています。私の母国語で表記しても何方も読めないですし、理解されるとも思いません。現にビバル先生は、私が書いた記名をお分かりになっていないでしょう」
と、藍が答えた。
「どういうことだ?」
と、ダートル先生も参加してきた。
「ダートル先生とビバル先生は、私の事をタツミ アイと先程から呼んで下さいます。確かに私はタツミ アイですが、タツミは家名でアイは名前です。
ミカエル様やルカには、アイが名前だと説明しましたので、普段から私の事をアイと呼んでくれます。
ダートル先生は、初対面の時にダートル·ダーニーズウッド辺境伯だと紹介して下さったと同じで、私はタツミ アイだと名乗りました」
と、藍は説明をする。
「では、何故? 指示されていない名前を記入することにしたのだ」
と、ビバル先生が聞いてくる。
「1つは習慣ですね。試験という場は、今回私一人が受けされて頂きましたが、一斉に大勢でするものです。自分に与えられた番号か、記名は誰の解答用紙か分かるように試験を受ける前にすることです。
もう1つ理由が有ります。今回私は先生方と初対面での対応になります。私を貶めるつもりがなくても不当に扱われる可能は有りました。
誤魔化しが出来ないように、私にしか分からない方法で解答用紙に記名しました。敢えて証拠となるように」
と、藍が説明すれば、ビバル先生だけでなくダーニーズウッド家の三人も驚いた顔をされた。
「だが、タ、アイしか分からなくては意味が無いではないか?」
と、ダートル先生が聞いてくる。
「勿論そうですが、私は自分の名前を書いただけですよ。問題も何も始まっていない段階で、それが不正だとは言われないでしょう。私の解答用紙だと明記しただけです。
万が一他の人と取り違って採点されても、紛失しても偽造されても、私は自分の解答用紙は分かりますから、保険にしただけです」
と、藍はニッコリ笑って答えた。
「アイ、私の文官にならないか?」
既得な読者の皆さんへ
いつも拙い文章にお付き合いして頂きまして、ありがとうございます。
2024年に成りました。この物語がいつまで続くか分かりませんが、龍(辰)年です。世の中の辰巳さんにとっては今年と来年は辰巳さんの年になりますね。
何も此処まで続くとは思ってもいなかった緒篠ですが、偶々を嬉しく勝手に喜んでおります。
これからも、虚弱故お話の出番は少な目ですが、藍の頑張りを見守って頂けると嬉しいです。




