先生
「悪いですけどアイを置いては行けません」
と、ミカエル様が断った。
「えっ! ルカが居るだろう?」
と、ダートル先生は言ってきた。
「そうですね。でももしも次に誰かが、ルカを呼びに来たらどうしますか?」
と、ミカエル様が問う。
「……? ビバル先生がおられるのに、何を心配しているのだ?」
と、ダートル先生は不思議がる。
「そのうちビバル先生を呼びに事務員が来たらアイは一人」
と、ミカエル様が言いきる前に、教室の扉が開いて最初に案内をしてくれた文官職員さんが、
「ビバル先生とダートル先生、ゾーイ先生が呼んで……ます……よ」
と、声を掛けてきた。流石にタイミングが合いすぎだが、誰も返事が出来ずにいた。
「……わかった」
と、ビバル先生が言えば、
「僕は、遠慮しますよ。控え室にいますからビバル先生は行ってください」
と、ダートル先生が言うと、ハイハイとビバル先生と呼びに来て固まった文官職員は教室から出ていった。
「ミカエル様、アイが体調を崩し掛けてます。何処かで休憩を取りませんと」
と、ルカがミカエル様に訴える。
……流石、自分でもヤバイなって思い始めてた。学校は嫌いじゃないけど得意じゃない。意味が分からなかったが雑念が多い。
「タツミ アイ。一緒においでお茶にしょう」
と、ダートル先生が言ってきた。
「いえ、此処で待つように言われましたが」
と、藍が断れば、
「バカじゃなければ、此処に居ないとなれば探すでしょう。それに此処で待たせる方がどうかしていると僕は思う。試験は特別だから隔離的にするのは仕方ないと思って黙っていたけど、試験は終わって合格が決まっているのに、ちゃんとした部屋を用意しないなんて、不備にも程が有るよね」
と、ダートル先生? 伯父様? が怒っていらっしゃる?
「なんだ。伯父さんもそう思っていたなら言って下さいよ。僕は此処に案内された時から、あまりの事に頭にきていたのを我慢して押さえてましたよ」
と、ミカエル様が言えば、ルカまでもウンウンと頷いている。
「ゾーイ先生は、元々差別的な処はあったけど、酷くなってる気がする。
普段からあれでもビバル先生が押さえているんだよ」
と、ダートル様は、わたしのフードを被せて手を引いた。
「身体が冷えているな。悪いがルカ、部屋に着いたらお茶をいれてくれるかい。僕は自分で入れたものが何故か不味くなるんだ」
と、笑いながら案内をしてくれる。
教育科の先生の控え室という個室に案内されて、普段は1人で過ごす部屋に4人入れば狭く感じる。
……大学生の時によく匿ってくれた先生方が準備室という個室と似た部屋で懐かしい。あれ? まだ懐かしい程が時間がたっている訳じゃないけど。
お茶のセットは人数分合ったらしくルカが、探しながら用意をしてくれている。
「タツミ アイにはこれも必要でしょう」
と、ダートル様が隠しからさっきと同じ物を2個出してわたしの手に乗せた。
「ダートル様、ありがとうございました。あれで少し時間が保てました」
と、藍がお礼を言えば、
「保てた? お腹でも空いているのか?」
と、ダートル様が不思議そうに聞いてくる。
「ちゃんと食事は取っているのですが、そうですね。少し空腹時のような感じになりましたね」
と、低血糖気味になったことを説明しずらい。
が、そのまま1つ油紙を広げて口にほり込む。
……うぅ〰️〰️ん。あ、ま、い、けど今はわたしに必要な糖分だわ。美味しく感じる分足らなかったんだ。
「アイは、何を口に含んだ?」
と、モグモグと大きな塊を溶かしながらのわたしの顔を見た、ミカエル様が聞いてきた。
「ダートル様の蜜飴ですよね」
と、ルカがお茶を出しながら言ってくる。
「ダートル様の蜜飴? って御自分でお作りになっているのですか?」
と、砂糖の塊より吸収がいいものが、手作り?
驚いたアイが聞けば、
「誰も作ってくれないからね。慣れたものだよ学生の時からだから。これしか作れないけどね」
と、ダートル様は仰る。
「あぁ、あの伯父さんの甘ったるいの」
と、ミカエル様にも心当たりが有るようだ。
「タツミ アイには必要だったようだぞ」
と、ダートル様はわたしが三つ目をどうしようかと悩んで見つめているを冷やかす。
「アイ、お茶を甘くしましたよ」
と、ルカが目の前にカップを出してくれた。三つ目のキャラメル擬きは帯に挟むと潰れそうだ。袖に入れておく。
「で、ミカエルこのタツミ アイは何者だ?」
と、出されたお茶を飲みかけたミカエル様が、含んだお茶を吹き出した。
「ゲッボ、ゲッホ、グッグッ。ダ、ダートル伯父さんはケビンが使いで出した依頼書を見てないのですか?」
と、口元を拭いながらミカエル様はダートル様に聞く。
「いや、その場にいたからゾーイ先生から見せてもらったよ。ゾーイ先生からしたらダーニーズウッド家が要らぬ要望を出して来たぞと、僕に見せたかったからだと思うけど」
と、ダートル様はその場の事を分析して教えてくれた。
「だったらそのままの要望だよ。アイの此方での職に必要な資格だから依頼を、お祖父様と僕との連名で出したんだけど?」
と、ミカエル様は説明をされる。
「今回のゾーイ先生の対応は酷いよね。色々ひねくれているけど、いつもより酷いのは何故かなぁ?」
と、ダートル様はわたし達三人に聞いてくる。
……何? 酷い扱いは何かあるの?
「要望書は、領土でお祖父様やシアン陛下にも確認して貰ったものですよ。ケビンが貰ってきた書類は、殆ど僕が仕上げて、父上に見てもらい署名をしてもったものです。何も不備はなかった筈です」
と、ミカエル様は答えた。
「ふ~~ん、何も不備が無かったことか気に入らないことなのかなぁ」
と、飛んでもないことをダートル様は言ってくる。
「不備無くすることは、褒められていいことですのに、不備が無いことを褒めるでなく臍を曲げるのですか?」
と、思わす藍は言ってしまったが、
「多分ね。ケビンから情報が出なかったし、要望書の内容は父上と陛下なら慣れた完璧な書類だったし、ミカエルの対応は抜け目無しで、やり込め感が無いのが面白くないだろう」
と、ダートル様が言ってきた。
「ダートル様の仰ることは、何となくですが分かります」
と、ルカが言ってくる。
「それってもしかして、少しは突っ込む処や、嫌みを堪えた感じを出さないと、拗ねると言うことですか?」
と、藍が核心を突いたようだ。
「そうそう、それにタツミ アイが完璧に近い結果を出したからね。尚更だよね」
と、ダートル様は言ってくる。
「えっ! あんなに頑張った事が裏目になるのですか?」
と、藍が項垂れてしまった。
「そうだよね。外国人であるタツミ アイが今年の最高得点を出したのなら、ゾーイ先生でなくても面白くないかもな」
と、ダートル様が仰る。
「最高……得点?」
と、藍が聞けば、
「皆も気付いたと思うけど、一般でも資格取得試験でも、基準は6割の正解率で合格になっている。今年の最高得点をは8割弱、39問の正解だったらしいよ。だけど……タツミ アイが45問の9割だし、不正解のうち3問は無回答だから仕方ないけど、後の2問は惜しい不正解だったよ」
と、ダートル様が教えてくれた。
「アイは学習慣れをしていると、自分で言っていたが、あの短時間でよく此方の知識を取り入れたものだな」
と、ミカエル様が言ってくる。
「私の国では、学歴が人生を左右することが多いのです。何処でも一緒かも知れませんが、本人の資質と環境や金銭で人は優劣を付けたがりますから、価値観は自由ですが柵が無いわけではありません。
此方と違い身分制はないので、生まれた時は平等です。ですから、私も出来る努力をしただけです」
と、藍が説明をした。
「出来る努力ね。例えば何?」
と、ダートル様が聞いてきた。
「私のことを、ご説明しても参考にならないと思いますが……」
と、藍が言うと、
「それは聞かないと判断できない」
と、ダートル様が仰る。
「私の学生だった時の事でよろしいですか?」
と、藍が聞けば、
「勿論、タツミ アイはどんな事をしてきたか気になるんだ」
と、ダートル様が仰る。




