試験
ビバル先生が言った言葉に、ダートル先生が疑問に思ったことを問うた。
「まぁ、試験は不正が有ること事態可笑しいが、先生方だけで採点するのは可笑しいでしょう。試験を受けた本人と過去に試験を受けたルカもいるし、ミカエルだって教育科ではないが経済や法律の選択をしたんだ。
皆で採点すれば、不正や正当であるか一目瞭然じゃないか」
と、ダートル先生が提案した。
「確かにそうですね。何が足りていて足らなかったのかを、本人が見ることはいいことです。タツミ アイそれでいいですか?」
と、藍にビバル先生が確認してきた。
「はい。私は此方で受けさせて頂く試験自体が、どの様な形式なのか分かりません。
試験は対面口頭試験ですか? 問題筆記試験ですか?」
「ふむぅ?口頭試験? 統一筆記試験だが」
と、顎に手をやりながらゾーイ先生が答えた。
「では、問題は先生が読み上げ式ですか? 問題文と解答欄が有るのですか?」
「問題はビバルが読み上げて解答用紙に記入していく。無回答の場合は答え無しと記入する。解答の順番が変わらぬように、全部理解できなくても記入は必須だ」
と、ゾーイ先生は言ってくる。
……成る程、答えられないとは思ってないんだ。ただ、わたしが問題文を理解して答えれるかと言う、リスリング試験だと言うことだ。
外国人のわたしには、難題である筈だ。だから正解処か試験を受けさせてやっていると思われていると言うことだ。
「では、始めるとしようか。ミカエル様と侍従は離れて此方に」
と、ゾーイ先生は長椅子の真ん中に腰を下ろした。ダートル先生とミカエル様が指示された椅子に腰を下ろす。
「タツミ アイ。そちらの机で試験を行いますので、座ってください。
筆記道具は用意していますから机の上には何も出さないで下さいね」
と、ビバル先生が藍が座った机の前に立ったまま指示を出す。
解答用紙と出された紙には氏名の記入欄もなかった。試験慣れをしている日本人としては無記名で試験をする怖さがある。
渡されたペンで用紙の右上に、漢字で名前を記入する。
と、不思議そうにビバル先生が覗き見されたが、駄目だとは言われなかった。
「では、基礎的な問題からです。この王立アカデミー学院の一般応募からの問題です。途中で止めたくなったら言ってください。対応はさせて頂きます」
と、ビバル先生は問題文をゆっくり読み上げ出した。
……わぁーー! 本当に基礎からだ……でも、一般平民からの受験なんだし、何処まで出来るかの段階なんだろうね。
ビバル先生がゆっくり呼んでくれるから、ゆっくり書くしかないよ。
なんかクイズをやっているみたい。日本の試験もそうだったら楽しいのに……
「どうですか? 続けますか?」
と、ビバル先生は解答用紙を覗きに横並びに来た。
「えっ!」
「今のところ分からない問題は出てきてないですね。どうぞ続きをお願いします」
と、藍はそのまま継続をお願いをする。
「いえ、此処までが、一般試験でしたから、続けるとしたら、文官試験になります。文官試験は此方に持って来ていないので、一般試験の回答率で判断します。今年の正解率は6割で合格でした」
と、わたしの用紙をゾーイ先生達が座っている長机に持っていくと、ダートル先生がわたしを手招きをする。
……そうでした。わたしも採点に参加するんですよね。意図して不正に誤採点されないように。
「では、採点するが一見無回答な無いな」
と、ゾーイ先生が仰ってダートル先生に渡す。
ダートル先生がペンを持ちチェックを付けていく。ビバル先生が正解を読み上げていけば、全問チェックの印がついた。
……文官になるなら此処でギリギリ通過なんて有り得ないでしょう
と、藍は思っていたけどゾーイ先生が目付けてくる。
……ゾーイ先生怖いよ。中高位のレベルなら教育戦争の日本人なら出来て当然だと思うけど。
後は、専門問題が未知だよね。ダニー様は受けて無いから知らないといっていたけど、ルカがわたしなら大丈夫だよと、復習を見て貰ったときに言われたが……
「全問正解ですか」
と、ビバル先生が解答用紙を見ながら言ってくる。
……6割なら何の問題はない筈だよね。何をそんなに見ているのだろう。
「ルカ! 教育科の事務室を覚えていますか?」
「はい、先生方の控え室になっていたところですよね」
「そうです。そこにサイがいますので、今年の文官試験問題が入った文箱を貰って来て下さい」
と、ビバル先生がルカを使いに出そうとしている。
「ビバル先生。ルカは今はここの在徒ではありません。ダーニーズウッド家の侍従です。勝手に使いに出さないで下さい」
と、ミカエル様が文句を言ってきた。
……確かに、ルカは侍従でもあり、護衛でもあるから勝手に使わないで欲しいなぁ。
「そうだったね。でも私達を走らせるのかい?」
と、ビバル先生がゾーイ先生とダートル先生に目を向けるとニッコリ笑顔で、
「なぁ!」
と、仰った。
「そもそも、ダーニーズウッド家の依頼はアイの文官試験をお願いした筈です。それを用意されてないのが可笑しくないですか」
と、珍しくミカエル様が言葉に棘がある。
「用意してなくもないぞ。持って来なかっただけじゃな」
と、ゾーイ先生が言えば、
「ゾーイ先生、ただの怠慢と屁理屈をうちの甥に言うのは、悪手ですよ。
ルカ、悪いが取りに行ってくれるか。お嬢さんが寒そうだし、時間を掛けてしまうから」
と、ダートル先生がゾーイ先生に忠告をしてルカに指示を出す。
「分かりました。少し離れます」
と、藍にフードを掛けてルカは部屋を退出した。
……やはり少し寒かったようだ。フード1枚あると体温が違う。
「アイ大丈夫か?」
と、ミカエル様が心配気に聞いてくる。
「今のところ大丈夫です」
と、ミカエル様に答えたら、
「今のところ?」
と、三人の先生方に不思議そうに問われたが、説明するのは邪魔くさい。ミカエル様が素知らぬ顔で無視をしている。
……ミカエル様が怒ってくれているのは、わたしの為なのが分かった。普段ミカエル様は受け流す方なのにな。
どうやら、ミカエル様からすれば対応の悪さが鼻に付くようだ。言いたいことあるんだろうな、此処まで不貞腐れているミカエル様を見るのは始めてかもしれない。
「ビバル先生! 何の用意もされてないじゃないですか! サイは何も聞いてないと言っていましたよ」
と、ルカは脇に抱えた文箱を差し出す。
「おや? 私はちゃんと今年の文官試験問題を出しとくように言いましたよ」
と、ビバル先生はゾーイ先生を見ながら言う。
「さて、次は私が問題を出すかの」
と、ゾーイ先生が仰った。
「いいえ、私がこのまま続けます。流石に此方の対応の悪さをお二人に見せるのは良くないでしょう」
と、ビバル先生がゾーイ先生を押さえる。
「タツミ アイ。今から文官試験を行います。席についてください。筆記用具は大丈夫ですか?」
と、ビバル先生は試験の準備をされるらしい。
「はい。どの様な形式なのか教えて頂けますか?」
と、藍は席に着きフードが擦れないように袷のボタンを付ける。
「試験は先程の形式と同じです。時間制限が有りますが、今回は此方の不備が多々ありました。貴方の終わりの言葉で終了とします。
それでよろしいですか?」
と、ビバル先生は一様藍に問う。
「はい、分かりました。よろしくお願いします」
と、藍が頭を下げる。
流石に文官問題になると、スラスラと書けずに思案する時間が必要になった。
解けなかった問題は、端に大まかな問題筋を書いて飛ばし、次に進んでもらいながら解いていく。50問の問題を言い終えたビバル先生が、
「ここまでが、文官試験問題です。タツミ アイが終わりを言うまで待ちますよ」
と、問題文を持ったまま藍の席に近付いて覗き見る。
「先程の試験と同じ6割の正解」
「いや、8割じゃ。合格は正解率が8割じゃ」
と、ゾーイ先生がビバル先生の言葉に被せた。
「何で!」
と、ダートル先生がゾーイ先生に詰め寄る。
「本当なら9割と言いたいところだが、此方の不備を認めて8割にしとくとしょうかの」
と、ゾーイ先生が言う。
……ひぇーー! 9割って。5問しか間違えられないじゃないの。自信が無いのが5問。全く分からないのが3問。凡ミスがなければいけると思うけど……
「…………終わりとします」




