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続・虚弱体質巫女ですが 異世界を生き抜いてみせます ~何もないと諦めないでマイナスからゼロになるまで~  作者: 緖篠 みよ


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侍従

「おねぇーさん、こっちだよ」

と、ターチちゃんが藍の手を引く。


「ターチ。あまり急がせるな! アイが倒れてしまう」

と、ルカがターチちゃんに声を掛けて注意する。


「これくらいなら、早歩きみたいで大丈夫だよ」

と、藍が答えると、


「おねぇーさん、早く歩けないの?」

と、ターチちゃんが聞いてくる。


「大丈夫よ。歩けるし走れるわよ。ただ、長く歩けなくて走れないだけ」

と、藍が説明した。


「長く?……」


「ターチちゃんのお兄さんは、今日は厩舎でお仕事なの?」

と、藍が聞けば、


「ううん。今日はお休みなんだけど、馬の世話をしてくるって言ってたから」

と、ターチちゃんが小走り気味な足取りをゆっくりな歩調に変えて答えた。




「ターチ?」

と、カロンさんとターチちゃんと同じミルクティー色の髪をした青年が、馬を拭いていた。


「ニルスだったのか。ターチの兄は」

と、ルカが呟いた。ターチちゃんに手を引かれたままアイが厩舎に近付けば、


「あれ? 御者の人だよね。昨日まで一緒だった」

と、藍も分かった。今日は御者の身形でなくて、作業しやすい服装で馬の側にいる。


「そうですね。警護第5団隊舎から馬車の手綱を持っていました。ニルスです」

と、答えてくれた。


……昨日は、帽子と御者服で誰だか分からなかったし、前日の馬車酔いで覚悟しながら乗車してたから廻りを見てなかった。


「ニルス! 誰か来たのか?」

と、ルッツさん位な深緑髪の男性とニルスさんと変わらないオレンジ髪色の青年が、厩舎の奥から出てきた。


「あぁ、ルカとアイ様でしたか」

と、男性が言えば、青年は固まっている。


「こんにちは、アイです。はじめましてですよね?」

と、藍は二人の記憶が無い。


ニルスさんには、警護第5団隊で馬車に乗車の際に声は返されなかったが、お願いしますと言ったら頷かれたから初対面ではない。後の二人は初対面のはず。


「そうですね。はじめましてナギです。侍従をしております」

と、男性は答えてくれた。もう一人の青年は固まったままなのを、


「ほら、ちゃんと挨拶をしろ!」

と、ナギさんが背中をバッシっと軽く叩く。


「あ、あの、レオン、レオンです。侍従を、侍従をしております」

と、慌てたように挨拶をしてくれた。


「ナギが、二人を指導しているのか?」

と、徐にルカがナギさんに聞く。


「あぁ、私もそんな歳になってしまったよ」

と、ルカとは馴染みがあるような言い方で返す。


「ねぇ、ルカはナギさんと親しいの? それにターチちゃんとも?」

と、藍はナギさんとは仕事上分かるが、ターチちゃんは意外過ぎて。


「ターチは、今は10歳位になったか?」

と、ルカが藍の側にいるターチに声をかける。


「11歳!」


「じゃぁ、俺と会ったのは6歳だったのか? 小さくないか?」

と、ルカはターチちゃんを上から下まで眺めて言う。そしてニルスに視線を向けると、


「ターチは11歳で間違いないよ。僕とは六つ離れているから」

と、ニルスさんは笑いながら答える。


……えっ! ニルスさんって落ち着いているし、大人びいているから、ルカの少し下位にしか見えない。17歳なんだ。


「母ちゃんが、爺ちゃんのとこに行ってた時に遊んでもらったことがある」

と、ターチが過去の事をばらす。


「えぇ~、意外だな。領土のお館では、そんなルカを見たことがないが、私が王都に来たのはケビン様のアカデミー上がりの時だから入れ違いか」

と、ナギさんがニヤつきながら言っている。


「別にカロンが泣いてるターチを背中に付けて仕事をしていたから、少しだけ相手になっただけだよ」

と、ルカが言えば


「父さんは、クルナの事を知っているからチョロチョロするターチを自分に括り付けていたんだと思う」

と、ニルスさんが答える。


……そっか、ルッツさんから聞いた話だ。クルナさんが庭師の剪定中に事故に有って声を出せなくなった事だ。


「なんだ? 兄のお前は見てやらなかったのか?」

と、ナギさんがニルスさんに問う。


「僕は……父さんの庭師の仕事以外に、厩舎の仕事を教えて貰っていたから……多分その頃の事だと思う」

と、ニルスさんは答えている。


「まぁ、ルカも意外だと思われても仕方ないな。氷の親子だもんな」

と、ナギさんが言った。


「えっ? 氷の親子?」

と、藍が聞き返す。


「アイ! 紹介は済んだから部屋に戻るよ」

と、ルカがターチちゃんと繋いだ手を取る。


「えっ? 厩舎の人は?」

と、急な態度でルカが遮るのに戸惑うと、


「ルカ兄ちゃん! おねぇーさんを急がせたらダメ!!」

と、ターチちゃんが繋いだ手を離さない。


「オイ! ルカ。別に悪い意味で言ってないぞ」

と、ナギさんが言ってくる。


……どういう意味? ルカは気を悪くしているのが伝わってくる。


「どういう意味ですか? ルカは気を悪くしていますが、ナギさんは悪い意味では言ってないと」

と、藍はルカとターチちゃんが自分の手を離さないままで、ナギさんに聞く。


「ルカがどう取ったかは知らないが、アートムさんは私の師匠だ。周りからは銀髪で青瞳と紫の瞳の親子は氷の親子と言われて、遠巻きにされていた。

それは別に嫌われているわけではなくて、凛とした態度で仕えている二人に、敬意を込めた表現だ。

まぁ、一部は動じない笑わない事を揶揄する意味で言ってた事もありますが、どんな揺さぶりにも態度が変わらないと言う意味です」

と、ナギさんが説明する。


「ナギさんは、アートムさんが笑ったところを見たことがないのですか?」

と、藍が不思議そうに問う。


「な、無いですよ! アートムさんを笑かしたら賞金を出すなんて昔やったことがあるぐらいですよ。第1団隊で」

と、ナギさんが言ってくる。


「おねぇーさんはあるの?」

と、ターチちゃんが聞いてきた。手を繋いでいるからか、反応したのが伝わったのかルカまで驚いた顔で見てくる。


「有りますね。本当の笑顔は一回だけですが、後は恐い笑顔は何回か……見かけたことはあるけど。

でも、アートムさんが笑顔を振り撒いたら支障が出る威力ですよ。とても綺麗でしたから」

と、藍が言えば、ナギさんとルカが驚愕している。


「それなら、ルカ兄ちゃんも綺麗だったよ」

と、ターチちゃんが暴露すれば、


「そうよね。私もそう思うわ。アートムさんと似てるからね」

と、藍がターチちゃんと分かり合えた喜びで笑顔で答えた。


「うっ!……」

と、端でレオンさんが踞る。


「えっ? どうかされましたか?」

と、藍が足をレオンに向けて1歩出せば、ナギさんに止められた。


「大丈夫です。修行が足らないだけですから」

と、ルカに目配せをしてくる。


「そろそろ部屋に戻ろうか、アイ。紹介出来なかった者達は休日なんだろうし、後日でも良いと思うよ」

と、ルカが促す。


「ニルスさんの手綱は、王宮の御者さんより上手でしたよ。なるべく揺らさないようにしてくれてましたよね。私が今日元気に外に出られるのは、ニルスさんのお陰です。

ありがとうございました。それではターチちゃんはどうする? お父さんの所に帰る。ここに残る?」

と、藍がニルスさんにお礼を伝えれば、ターチちゃんは、


「お兄ちゃんとここにいるよ」

と、ニッコリ笑顔で答える。



ルカに誘導されながら、厩舎からお館へと歩んで行けばルカに聞かれた。


「アイは、父の笑ったところを本当に見たのか?」


「えっ? 見たけど? そんなに驚くことじゃ無いでしょう。この前のミカエル様じゃないけど大笑いで無くてもクスッって位はあるんじゃない」

と、藍が不思議そうに答える。


「いや、クスッってのも無いと思う。機嫌が良いか悪いかの表情も一定の者しか分からないだろうし」

と、ルカが言ってくる。


……イヤイヤ、無表情であるようで違うよ。

ルカは側にいるから分からないだけで、初対面のアートムさんと親しくなったアートムさんは全く表情が違ってきた。わたしはその過程を見てきたし。

アートムさんが、ルカを見る目は違うの気づいてないのかなぁ?

シアン国王陛下と同じ眼差しなのに、次にニックさんかな。

カール様やメリアーナ様に対しては信頼だし、ミカエル様やメアリー様……ダニー様とケビン様では心配そうだもの。

きっと、亡くなった奥さんにも同じ眼差しで見ていたはずだよね。


「ねぇ、ターチちゃん可愛いね。普段からカロンさんの仕事を手伝っているのかなぁ?

ここにいる間は、遊んでも迷惑じゃないかしら」

と、藍はルカに訊ねてみる。


「まだ、11歳なら本格的に仕事を教えているとは思えないけど。ターチは体が小さいな、庭師になるなら大変そうだ」

と、ルカが答えた。


「ターチちゃんは、庭師になるの? 女性の庭師か、格好いいね」

と、藍が言ったら、


「えっ?…………」


「何か小物をあげても良いのかなぁ。お父さんのカロンさんに許可がいるなぁ?」


「…………大丈夫だろうけど……後で……聞いとくよ」

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