鈴
「セイ様」
と、藍がベットの中で携帯に声をかける。
『どうした? アイのカラダにオリは、それほどたまってはおらぬぞ』
と、セイ様は言ってくる。
「私は中身の事をお聞きしているのではないです」
と、藍が答える。
『では、なんだ? アイのまわりにいろいろなキが、うずっておるがそれがさわるか?』
と、藍が気になっている事をセイ様に聞きたかったことだ。
「そうなんです。肌のうぶ毛を撫でるような今までも有りましたが、嫌悪感まではいきませんが、なま暖かいものを感じます」
と、藍が説明する。
『アイにキがむいておるものが、おおぜいおるのだろう』
「どうにかなりませんか? 学生の時はこれで体調を崩していたと思うのですが」
『ねむれぬほどか? なれるしかないが、アイのせかいよりはましだとおもうが』
「そうかも知れませんが、私はこの感覚を昔から感じていました。ただあちらの世界よりこちらの世界の方がより分かりやすいと言いますか」
『そうだの、それはアイのせかいには、めにみえぬキが、はえまくっておるからな。
ちょくアイにとどいておらなんだ』
「目に見えない? 電波や電磁波? のような? 生える? 這えまくって?」
『アイにはわかるはずだ。ここちよいキと、ふかいなキは』
「はい。それは分かるのですが……なんかわからないものが、軽く渦っているような」
『アイは、はだでわかるのか? シズはめでみえておったが、みえぬものはしんがつかれるな』
「静様は見えていたのですか? 人の気が?」
『シズはみえて、きこえて、ふれられるといっておった』
「わぁー、それは静様は大変でしたね。だったら私はまだ我慢が足りませんね」
と、藍が言えば。
『アイはシズのクをわかってやれるのだな。だが、シズはおのれのクよりまわりのクをはらうことを、せくのだが…………ほれ? なんだったか? シズがしておったことがあったが………………そうじゃ! アイ!』
「なんでしょう。セイ様」
『アイがあかごにつくっておったやつじゃ!』
「アイルくんには起き上がり小法師と、布ボール、ニギニギですよ。もらった端切れで作れたのは」
『なはわからぬが、おとがなるものじゃ』
「音が鳴るのは鈴ですよね。あっ! 神社でも鈴は色々付いてましたね」
と、藍にも心当たりがある。
『あのおとは、シズもよくつかっておったぞ』
「成る程、鈴の音に祓う作用があるのですか?」
『シズはととのえると、いっておったが。みにつけてわざとならしておった』
「前にもらった鈴は今は無いので、明日にでもルカに用意してもらうとします」
と、今はどうにもならない。
『アイ、いまキがクなら、かしわでをしたらどうだ?』
「柏手? って。あの柏手ですか?」
『シズは、あのねとおなじだと、いっておったし、たまにまちにでるとしておったが』
「わかりました。やってみます」
パァン!! パァン!!
……あぁ~! 凄い!! 一気に楽になった! 纏わりついてたのが、静かになった? 大人しくなった?
バァーーーーン
「アイ!!、何か合ったのか!」「うっ…………」
……ビックリした!! ルカ!って、わたしが音を思い切り立てたからだ。
「ごめん。虫が飛んでたと、思う」
と、言い訳をしたが、
「そうか、それなら良かった。早く寝るんだよ」
と、ルカは隣の続き部屋に帰っていく。
……ごめんなさい。夜中に急に音を立てたら驚くよね。
でも、ルカ夜着に着替えないで、休んでいるのかな?
「セイ様、ありがとうございます。気にならなくまりました。神社の鈴も柏手も意味が合ったんですね」
『アイのクが、おさまったのならやすめ』
朝、目覚めれば朝日はまだ出ていないのだろう。部屋のカーテンからは光の筋は入っていない。昨晩は遅くまで纏わりつく気にセイ様に相談すれば、白彦神社の静様がされていた事を教えてもらえた。馬車での睡眠が眠気を邪魔をすれば、朝の目覚めは遅くなると思っていたが、気持ちよく覚醒出来たようだ。
今までは続き部屋で着替えをしていたが、ルカの控えに成っているために、今日着る予定のドレスはベットの傍にチェストを配置したところからは取り出す。
新しくわたし用に誂えたドレスは、後ろボタンや絞りリボンでなく、前ボタンのタック隠しにしてもらっている。
1人で脱ぎ着しやすく、横になりやすい。自分の体調次第で休み安いとお願いをした。いつも診察しやすい前開きの物を選ぶ習慣だといえる。
軽く体を動かすには適さないが、この服で日常を過ごすなら着たまま動ける範囲が分かる方がいい。ストレッチな動きで体を慣らすのがわたしの朝の動き。
体調は起きた時と、動かした時とでほぼ分かる。初めての場所でも睡眠の質は悪くなかったし、気に成っていたことが解決して気分はいい。
「アイ! もう起きたのか」
と、ルカが声をかけてきた。
「おはよう、1人で部屋の外に出てはいけないのでしょう?」
「ここでも、散歩をしたいのか? 少しなら付き合えるよ」
と、ルカが部屋のカーテンを開けながら言ってくる。
「出来ればね」
と、藍が言ってベットを整えた。ルカが開けた窓からは朝日という光よりも、光線のような筋で辺りを明るくする。ルカと廊下に出ればまだ人が動いていない。二人で静かに一階に降り館の外に案内される。
ダーニーズウッド家の別邸でも、中央に広い庭園がありそのまわりには林が整備されている。木々の間から差し込む光がとてもキレイだ。
ルカに誘導されて歩く館のまわりでも鳥が囀ずる。湿った空気が冷たくはないが頬を冷やしている。
「ねぇルカ。前に馬用の鈴をくれたけど、あれしかないのかな?」
と、隣でわたしの歩調に合わせて歩くルカに聞く。
「いや、アイが何に使うのか分からなかったから大きめの物を用意したが、他にも有るよ」
「それは陶器? 金属?」
「えっと、私が知っているのは金属だけど、陶器も有るのか?」
「多分、私が知ってるのは両方有るし、大きさも色々有ったから小粒な鈴が数個欲しいと思っているの。用意してもらえる?」
「わかった、アイ今日はロビン様とミカエル様と打ち合わせがあるから、ほど程して館のみんなも動き始める時間だから」
と、ルカが館と林の小路を歩きながら説明する。
「ダーニーズウッド領地の空気とまた違う匂いね」
と、藍がルカの誘導で歩いていると、前から人が歩いて近付く。背は高いが横にも育っている男性だ。梯子らしいものを担いで木桶を手にしている。
「やぁ、ルカじゃないか。久しぶりだな」
と、ルカに声をかけてきた。
「カロン、おはよう。又こちらでお世話に成るよ」
と、ルカが挨拶をしたが、カロンと呼ばれた男性は固まっていた。ルカはそのまま横を通りすぎて、わたしを連れて館に入れば、出てきた時と違い人の動いている気配があちらこちらでする。
「みんな結構早いな」
と、ルカが呟いているが、わたしはさっきのカロンさんに挨拶もしてない。
「ルカ、さっきのカロンさんって、ここの庭師の人?」
「あぁ、前は痩せていたから声を聞くまで、誰だが分からなかった」
と、ルカが答えながら藍の部屋へと誘導している。
「アイ、部屋に居て。多分ケビン様やメアリー様が来ると思うけど、私はルクールに会ってくるから」
と、部屋の前でルカが離れる。
ルカは侍従として、動く前提だし、ロビン様やミカエル様との予定の確認は必要だよね。朝一からわたしに付き合ってくれたけど、本当は忙しいはずだ。
部屋の窓から外を見れば、林の側で木に梯子をかけて何やら作業している、カロンさんが見えた。
……えっ! あの体で木に登るの? 梯子も危ないけど、木も折れない?
と、思って見ていると、梯子に子供の足が見えて軽やかに降りている。
次の木にカロンさんが、梯子をかけると男の子に指示を出して登らせている。
……何をしているの? 凄く気になる! 勝手に出歩く訳にもいかないし、見に行きたい!!
窓から身を乗り出して、指笛でピーピーピーと気を引いてみる。
梯子を支えているカロンさんが、キョロキョロと廻りを見回す行動で、声をかけてみた。
「カロンさ~~ん、な、に、を、し、て、い、る、ん、で、す、か~~?」
と、少し? よく通る声で話しかけて、今が早朝だと思い出したのは、廊下をバタバタと音がしだしてからだ。




