誤算
「なに? 今なんと言った?」
「もう一回ですか? 対策はアイには直力出歩かないで、関わる者は意思の強い自制が出来る者を選抜して」
「違う! そこじゃぁない!」
「じゃぁ、何処ですか?」
「今、アカデミーに行くと言わなかったか?」
「言いましたよ。シアン陛下に聞いてないですか? 文官として側に置きたいと。
だから、アカデミーで試験を受けて資格を取得しないと王宮には上がれないですよ」
と、ミカエル様が説明するが、
「聞いてはいるが…………アイがアカデミーに行くのか?」
「無資格で王宮におれないでしょう。アイは外国人です、カーディナル王国の文官資格がないので、アカデミーの教育科の先生方に試験依頼をして、ケビンが書類を取りに行きました。
アイは働かないと返済額が嵩張ってしまうのですから」
「はぁ? なんの事だ?」
「シアン陛下の私財でアイのこれまでの事は賄われています」
「確かに、陛下はニックに計上させていると、仰ったが」
「ダーニーズウッド家で滞在中の物品やアイに掛かった医療費を全てシアン陛下が支払れます」
「それは、シアン陛下が祖父としてされることだろう?」
と、ロビン様はミカエル様に問うと、
「違います。シアン陛下が支払られた金額は私が返済しないといけないのです」
と、藍が答えた。
「どうしてそうなった? シアン国王陛下は政を休まず執務されて私財も贅沢はされないが、お持ちだ。
何もアイが返済しなくてもお困りにはならないぞ」
と、ロビン様は教えてくれる。
「シアン国王陛下が、生存中は掛かった費用だけで無利子の無期限です。
私が国に帰るまで返済と言う、縛りで側に要るとお約束しました」
と、藍が説明するが、
「返済という縛り? アイは国に帰るのか?」
と、ロビン様はミカエル様とわたしを交互に見る。
「アイは国に婚約者が要るから帰るそうです」
と、ミカエル様が言えば、
「婚約? あっ! そうです。婚約者と家族と私を守ってくれた人達が要るので」
と、藍は答える。
「それは、いつの予定なんだ?」
と、最もな疑問をロビン様は問うてきた。
「…………それは、いつでしょう?」
「「…………」」
「帰れる目処が……立ってないので、いつかと問われても私も分からないのです」
と、藍もセイ様がいつとも教えて貰っていないし、今帰れるとも思っていない。
「直ぐでは無いということか」
と、ロビン様は追及はされなかった。
「シアン国王陛下と私の約定みたいなものです。少しずつ返済とした方が、孫だと言えず預かり者を庇護すると設定した内容ですね」
と、藍は説明するが、ロビン様は考え込んでいる。
「陛下はアイを側に置くには、文官としてしかないとお考えなのだな…………孫と成ったら……大変なことになるな。父上は反対しなかったのか?」
と、ロビン様はミカエル様に問う。
「勿論、反対してましたよ。散々ダーニーズウッド家で預かると、王都や王宮ではアイを守れないからと……しかし陛下のお気持ちを考えると結局は、協力するしか無いと皆で判断したのです」
と、ミカエル様が答えた。
「それは、私もそう思うだろうな……が、間が悪い」
と、ロビン様が仰る。
部屋にノック音がする。ルカが迎えに来たようだ。
「ロビン様、夕食の用意が整いました。皆様食堂に御案内致します」
と、執事のルクールが呼びに来た。
ルクールさんは、わたしに視線を向けてロビン様に
「お客様のアイ様を、ご紹介なさいますか?」
と、問う。
「アイ、このまま妻のカリーナに会うと大変なことになりそうだが、まだ話の途中だ。今日は部屋で食事を取ってくれないか」
と、ロビン様が仰る。
「僕もその方が良いと思うな。アイのために対策を立ててからの方がいい」
と、ミカエル様もロビン様と同意見だと。
「分かりました。お二人の判断にお任せ致します。カリーナ様にお詫びをお伝え下さい」
と、藍が言えば
「すまん。カリーナは楽しみにしていたが、私から説明するし、ミカエルは食堂に来なさい」
と、ロビン様の判断に従う。
食堂では、藍の席以外は揃っていた。
「お父様、アイはご一緒ではなかったですか? ダニーからそう聞いておりましたが」
と、メアリー様が問う。
「先程まで、一緒であったがミカエルの判断で休んでもらっておる」
と、食堂に向かいながら息子に言われた通り伝える。
「そうですか。食事の後でもお話が出来るかと思っておりましたが、明日に致します」
と、メアリー様が引いた。
「その時は僕も一緒でも良いですか? まだアカデミーの事を話してないので」
と、ダニー様も明日にすると言う。
「どうしたの? 二人ともさっきまで私にアイを紹介すると楽しみにしていたのに」
と、ロビン様の隣でカリーナ様が首を傾げる。
「母上、アイは身体が弱いのです。今日は疲れているでしょうから、仕方がないのです」
と、ケビン様が言うとミカエル様とメアリー様ダニー様がビックリしている。
「どうした? ケビンがアイと食事が出来ると喜んでいただろう?」
と、ダニー様が聞いてくる。
「僕だって領土で見てきたんだ。アイが直ぐに体調を崩すところを、当分はこの館に居るんだしアカデミーでも側に居るようにするつもりだよ」
と、ケビン様が答えた。
食事が終わりそれぞれの好みのお茶を飲んでいると、ケビン様が
「あっ! そうだった。異母兄さんダートル伯父さんに会ったよ」
と、ミカエル様に言ってくる。
「ふむ、何処でだ? ケビンに使いに行ってもらったのはアカデミーだよ」
と、ミカエル様も聞いてくる。
「そのアカデミーの事務室にダートル伯父さんが居てたから驚いたよ。良く似ている人がいるなぁって思っていたら、ダートル伯父さんだったから」
と、ケビン様は報告する。
「兄は元気にしていたか? 手紙は寄越しても本人は研究室に入ったままだからな、王宮にいてても会うことが無い」
と、ロビン様がケビン様に問う。
「元気そうだったよ。僕と、ダニー兄さんはこれからよく会う事になると思うよ。アカデミーの教育科の臨時教師になったらしいから」
「「えっ!」」 「…………」
「「まぁ!」」
と、反応が返ってくる。
食堂を後にしたロビン様とミカエル様は、そのまま執務室へと向かう。
「ミカエル、兄の事はこちらからの手配か?」
と、ロビン様がミカエル様に聞く。
「いいえ、初めて知りました。ダートル伯父さんが教師免許をお持ちなのも、知りませんでしたし」
と、ミカエル様は答える。
「あぁ、兄は友人達の悪戯を真に受けて、王宮の研究室には教師免許が無いと採用されないと言われてな」
と、ロビン様は昔の話をする。
「それでダートル伯父さんは、教師免許を取得したのですか?」
「慌てて勉強してたよ。騙した友人達は研究室の採用に落ちたらしいけどな」
と、ロビン様は答える。
「父上、何か有るのですか? 先程も何か間が悪いと」
「こちらの手配で無いなら、偶然だろうか?」
と、ロビン様は思案顔をする。
ミカエル様は、ロビン様が口を開くまで待つつもりで、ケビン様が持ち帰った書類に目を通す。
ゾーイ先生が用意してくれた書類は、必要がないことまで記入する内容となっている。
ミカエル様は、こちらで記入出来ることはしておく。
……四方辺境伯の1人。ダーニーズウッド家に対して、やや失礼な質問内容となっているが、ケビンが何も話さなかった事が原因と成っているなら、ケビンはダーニーズウッド家の子息として、成長しているのか?
まだ判断に欠けるが、ゾーイ先生とダートル伯父さんがいたとなると、ケビンなりに何かを察したのかも知れない。
「ミカエル、アイの護衛としてルカが側に付くのだな」
「何か心配事ですか?」
「ミカエル、アイと婚約をしないか?」
「はぁいぃ?!」
「このままでは、アイを守れないぞ」
「アイには、婚約者がいるんですよ」
「いや、亭主と子供がいた方が安全なんだが」
「どういう意味ですか?」
「隣国ジャスパード国の次期国王予定のセントール王子が王太子ダニエル殿下との友好交流に来賓される予定なんだ」
と、ロビン様が言えば、
「アイが目をつけられる?」
「分からぬが、定例会議でもダニエル王太子殿下の妃候補の話が出ていた。四大側近殿下達は、娘や孫娘の登城を控えたいと仰っていた。
それは、危惧しての判断であろう。
ダニエル殿下だけでも、問題だと考えていたが、隣国の王子までとなるとアイは王宮に近づかない方が良くはないか?」
「これは……シアン陛下はご存知なのですか?」
「いや、今認知されているのではないだろうか?」




