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別邸に到着

「ミカエル様、お帰りなさいませ」

と、カーディナル王国 王都ダーニーズウッド辺境伯別邸。

別邸を預かる執事 ルクールが、玄関前に使用人達と並び迎える。


「ルクール、今帰った。父上は?」

と、馬車のステップに足を載せて問う。


「まだ、王宮からお戻りではございません。いつもより遅うございますが」

と、ルクールがミカエル様の奥に視線を向ける。


「ルカ、気を付けて降りてくれ」

と、ミカエル様が馬車の扉に手を掛けて、声をかける。


「王都の皆さんお久しぶりです」

と、人型を毛布に繰るんでルカが降りてくる。


「あのぅ、もしかしてですがそちらが……」


「そうなんだが、本人は頑張ると言っていたが、馬車酔いをしていて強制に寝てもらった。見てられなくてな」


「はぁあぁ! では、部屋のご用意は出来ておりますので。で、ルカが連れていくのですか?」

と、ルクールはミカエル様に聞く。


「後で説明するが、ルカは護衛と侍従を兼ねる。兎に角、父上に報告してからだと思うが」

と、玄関で固まっている使用人達に告げる。


「では、ルカ私が案内をしますので、ゆっくり参りましょう」

と、侍女長 メグが前に出る。他の使用人達も荷物を出して運び入れている。




「ルカ、久しぶりですね。元気そうで何よりです」

と、2階の客室に案内をしながらメグさんは声をかける。


「三年前、クルナが結婚する時以来ですね」


「叔母から知らせがありました。私もお婆さんになれたようです。その……クルナを助けてくれたのが、今ルカが抱えているアイですか?」

と、毛布に繰るまわれて顔も見れない状態だが、視線は温かい。


「そうです。アイが居なかったら、クルナもアイルも無事ではなかったでしょう。クルナから手紙を預かっています」

と、ルカが言えば、


「ルカ、感じが変わりましたね。王都にいた時は、こんなに柔らかい当たりではなかったですよ。さぁ、お部屋はメアリー様が手伝ってくれました」

と、メグさんが客室の扉を開ける。


「メアリー様が?」


「何でも、領地では大層迷惑をお掛けになったようですね。ニックからも叔母のノアからも苦言がロビン様宛に届いてましたよ。メリアーナ様からはカリーナ様宛に届きましたし、流石のカリーナ様も考えを改めておられましたから」

と、クスっと笑ってベットの掛布を上げてくれる。


「ルカがアイの身の回りの事をするのですか?」

と、メグさんが聞いてきた。


「アイが気にしないと言うので……基本アイは自分で何でもしてくれます。ただこう……運ぶ事が多いので」

と、ルカは言う。


……そういえば、初めてあった日もお手洗い場から、部屋まで運んだなぁ。結構な回数になっているから慣れてきたが……


毛布ごとアイをベットに横たえれば、天蓋のカーテンは閉まっていないから光がアイの顔に差す。


「えっ?」

と、メグさんの声が漏れる。


……馬車酔いであまり顔色は良くはない。アイが自覚していることで、なお血色が悪いなら改善すべきだが、トキニルも言っていたが薬ではどうにもならないと。


「ルカ、その……とても……顔色が……それに……」


……言いたいことは分かる。領地内で起こったことは、この別邸でも起こることだ。


「メグが何を言いたいのか分かります。色々聞きたいでしょうが、ミカエル様と私はアイを守るとシアン国王陛下にお約束しました。シアン国王陛下の知己から託された者です。

後でロビン様か、ミカエル様の説明がございますので」

と、言えば、


「いえ、ルカ。私はダーニーズウッド家に仕える者です。ロビン様、ミカエル様に背くことはありません。

ましてや、その方は娘と孫の命の恩人。指示がなくても守る対象でしかないでしょう」

と、メグさんが言えば部屋の扉をノック音がする。


藍の荷物を入れる許可を問うものだ。すかさず天蓋のカーテンを閉めて許可を出せば、侍従と侍女が藍の荷物を運び込む。


「ルカ、アイは馬車酔いが酷いと聞いたわ。アイは大丈夫なの?」

と、メアリー様が部屋に入って声を掛けてきた。


「そうですね。アイは薬を使わず頑張ると言い張ってはいましたが、ミカエル様の懇願で眠剤と言うものをお茶にして服用しています。そろそろ覚醒する頃でしょうか?」

と、ルカが説明する。


そのやり取りをメグさんが見て驚いているが、メアリー様も一月近くアイと居れば、身体を気遣う言葉も出るようになる。


「別邸での事は私も協力するわ。問題は……あら? 愚弟は迎えに行かなかったかしら?」

と、メアリー様は、藍用に整えた部屋を見回す。


「それならば、ミカエル様に御使いに出されてましたよ。元々ロビン様のお手紙にも使いに出すと記されていたらしく、第5団隊関所から別に走っておられます」

と、ルカが説明すれば、


メアリー様と側にいるメグさんがミカエル様の為さりように驚いている。


「ケビンの事は分かったわ。ルカはアイに付くのね。別邸の事はともかく、アカデミーの事はダニーが協力すると言ってたし、アイは知識的にはどうなの? 地頭は良いように思うけど」

と、メアリー様が根本的な事を聞いてくる。


「メアリー様、アイは言語が馴染みがないだけで優秀ですよ。言葉の意味を間違わない限り何の問題もない筈です」

と、ルカが説明すれば、


「その言葉が、問題なんでしょう。二月でカーディナル語を覚えたといっても、こちらが不馴れと知っているからアイの言語を理解してあげれるけど、そうじゃない人に当たれば、違う評価になるでしょうが」

と、メアリー様が心配して言うが、素直ではない。


「ふたつきで、覚える?」

と、メグさんが聞き返す。


「メアリー様がそんなに心配なら、アイに付いてやって下さればいいのでは? ミカエル様は駄目だと仰いませんよ」

と、ルカが答える。


侍女長 メグと他の使用人達は、メアリー様とルカのやり取りを、片目片耳に意識して手を動かしているが、能率は下がる。


ドア越しにルクールさんが、見かねて声をかける。


「とっくに、片付けが終わっていると思って見に来てみれば、まだなのですか?

そう言えば、ルカの荷物は何処ですか? 前に使っていた部屋を用意しておりますよ」

と、ルカに問う。


「私の荷物は、アイと一緒に荷造りました。たいして量は有りませんから、自分で致します」

と、ルカがアイの荷物の中に有ると答えた。


「ル、ル、ルカ?! 何を言っているの?」

と、メアリー様が聞いてくる。


「私は護衛を兼ねているので、続き部屋で過ごします。アイにもミカエル様にも、許可は出てますが?」

と、問題ないとルカが答えた。


「でも、それは…………」

と、侍女長 メグが言葉を濁す。


「アイが意識が無い時には、私もミカエル様も側に付き添っておりましたよ。メアリー様もご存知でしょうに」

と、ルカがメアリー様に視線を向ける。


「あれは、異母兄様とルカだけじゃ無かったでしょう。私もダニーもケビンもいたじゃない。アイが2日間意識が無かった時の事でしょう」

と、メアリー様が言えば、ルクールさんとメグさんに周りが固まる。


「アイが倒れた時は、夜通し側にいないと、急変しては手遅れになりますから」

と、ルカが答えた。


天蓋のカーテンが揺れて、

「あの~~~~ぅ、目が覚めたので御挨拶をしても良いですか?」

と、ベットから声がする。


「アイ! 大丈夫なの?」

と、メアリー様がカーテンを覗く。


「あっ! メアリー様! お騒がせしてすみません。服用したお薬で楽になりました」

と、カーテン越しに聞こえる。


「アイが大丈夫なら、館を案内したり紹介しないといけない者もいるから、今顔を出す?」

と、メアリー様がアイに聞いている。


「これからもみっともない格好をお見せするでしょうから、慣れていただきましょうか? メアリー様」

と、藍が言う。


「別にアイはみっともなくないけど、アイが構わないなら、そうね!」

と、天蓋のカーテンが開く。


「あら! ルカも居たなら覗いてくれば良いのに、メアリー様が手伝ってくれたのよ」

と、藍がベットの縁から立ち上がる。


ルクールさん、メグさん侍従侍女が固まる。


「本日からこちらでお世話になる、タツミ アイといいます。宜しくお願いします」

と、固まっている人達に向かって挨拶すれば、部屋の扉前に侍従が、ルクールさんを呼びに来た。


「ルクールさん、ロビン様がお……も……ど……り」

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